さわやかサバイバー

好きな作品の感想を書いています。カテゴリー一覧は50音順で並んでいます。

マインドハンター シーズン1

ネットフリックスで配信中のドラマ「マインドハンター」シーズン1の感想ツイートをまとめたものです。

 

Netflixオリジナルドラマ「マインドハンター」一気見しました。1970年代、当時確立されていなかった犯罪心理分析の分野に挑んでいくFBI捜査官たちの物語。世間の評価や捜査方法だけでなく捜査官たち自身にも及んでいく影響がスリリングで目が離せませんでした。

 

扱う事件そのものは凄惨ですが、行動や心理の分析がメインなので映像的なグロさはほとんどありません。抑えた描写なのに止めどきが見つからない緊張感がずっと続きます。

単純な恨みや憎しみではない、サイコパスによる犯罪が顕著化してきた時代。理解できない思考の人間が隣にいる不気味さが描かれていますが、たぶんこれは犯罪者によるものだけではなかったと思います。それらが同僚、恋人、自分自身にも及んでいたのが緊張感の理由かなと。

分析することで理解し左右できると思うのは傲慢で、境界はあいまい、分析できたと思った相手に呑まれていることもある。この手の作品はよくある結論でチープになることもありますが、このドラマは表現の塩梅が絶妙でした。

 

評判には聞いていましたがエド・ケンパー役の方がすごかった。巨体の連続殺人犯という脅威の塊のような人物なのに、ごく自然に隣にいておかしくない存在感。かえってそれが一番恐ろしい。なんていうか、ぬるっとした存在感。

猛烈な玉子サンド推しの場面の紹介を以前見ていたので、実際見た時はここか!と笑ったんですが、後日、ピザの差し入れの場面でぞっとしました。初対面の相手に自分が勧めたものを一緒に食べさせるけど、相手の差し入れを口にする場面は出てこなかったですよね?食べたかもしれないけど、実際に食べる場面は画面には映らなかったと思います。ピザか、いいねと言葉では喜んでみせてるのに。

食事は誰もが油断しやすい場面でもあり、共有すれば仲間意識が芽生える場面でもあります。相手を取り込みつつ自分は決して相手に取り込まれない。親しみやすく話しながら油断ならないことがさりげなく仕込まれてました。

実際魅力的なんですよね。話が上手く、独特な言葉選びで聴く相手を自分の世界に引きこむ。外界から隔離された塀の中ではリアルタイムの事件の捜査のように周囲の判断を聞けず、捜査官の思考の方が檻に入れられていってしまうような感じがしました。

それを象徴するかのように犯罪者への聞き込みのたびに入り口で銃を預け書類に記入する場面が映ってました。捜査官は外界で身を守り相手を倒すこともできる武器を放棄し、相手の領域に入っていかなければならない訳です。

パッと思いつくだけでも他にもたくさんの暗喩が仕込まれてました。同じ車内から通路を挟んだ飛行機の席になるフォードとテンチの位置、何度も映るエレベーター、見えない子猫、いくらでも掘り下げて考えられそうで深いよこの沼…

 

 

エージェント・ウルトラ

エージェント・ウルトラの感想ツイートをまとめたものです。

 

私立探偵ダーク・ジェントリーのマックス・ランディス氏が同じく脚本を手掛けたエージェント・ウルトラをネットフリックスで見ました。マヌケで憎めないキャラ造形とか、ふいに滑り込む心情吐露とか、これがマックス氏の味わいなのかなという所が感じられて満足。

冴えないコンビニ店員の青年が襲ってきた暴漢をスプーン1本で撃退。自分でもなんでこんなことができるか分からなくて混乱しているうちに次々と襲撃者がやって来る。どうやら封印されていたCIAのエージェントとしての能力を覚醒させられたらしい、というストーリー。

 

全体的にはB級アクション!って感じでした。ノリは軽いのにポンポン人が死ぬよね!雑貨店で戦う場面は「バタバタしたイコライザーだな!」って思ってしまった。身近なもので殴られるの見るのは銃で撃たれるとかよりもイテテテってなる。イコライザーの「売り物を使ってスマートに敵を撃退したのち綺麗に拭いて売り場に戻す」というのもどうかと思ったけど。買いたくない。

 

ハチャメチャな登場人物ばかりなのに、フッとしんみりさせるのが上手くて。襲撃者の一人が「自分でもどうしようもなく、こうするように作りかえられてしまった」と話す一瞬で主人公の共通点を作り哀しさ漂わす場面とか、よかったです。

マックス・ランディス氏の作品見るの2作目なんですが、2作とも主人公の家が死んでた。主人公の家に厳しいマックスたん。これはひょっとしなくても象徴なんでしょうね。両方とも今までの自分を壊されて、痛みは伴うけどそれが自由や新たな出発に繋がっているので。

エージェント・ウルトラでもダークジェントリーでも主人公は一度大切にしていたものを壊され、隠していた自分を暴かれ、最低最悪な事態に落ち込みながらも自分を受け入れそこからもう一度歩きだす。スラップスティックにやっててもこういう青春物語っぽい所が根底にあるのが好き。そして出発の時にはパートナーや相棒ができているのがいいんですよ…

エージェント・ウルトラでの結構指輪やダークジェントリーでのロトくじのように、場違いのようで主人公のミクロな物語を感じさせるアイテムを視聴者に常に意識させてるので心情吐露の場面にスッと入り込めるのだろうなあ。

 

ダークジェントリーのファンとしては、リギンズとダーク、ラセターとマイクの関係の相似とかニヤニヤしました。あとイェーツにフリードキンを感じてしょうがなかった。キャラ造形もなんですが吹替えの台詞のニュアンスとか。敵ポジションなんだけど腹立つ!っていうよりア、アホだー!ってなるあのニュアンス。翻訳同じ方なのかな。ダークジェントリーは小尾恵理さんだったけどエージェント・ウルトラは表記がなかったので。