さわやかサバイバー

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デラシネマ 第8巻

星野泰視さんの「デラシネマ」第8巻(講談社)を読みました。

非常に残念ながら今巻が最終巻です。あああ面白かったのに…!

 

以前書いた1巻~7巻、というか全体の感想はこちら

最終回後の事にも触れてますのでご注意ください。

 

もっともっと戦後日本映画に携わった彼ら彼女らの活躍が見たかった。

私は映画は詳しくはないですが、

それでも漫画の中で示された登場人物達の進んだ道を思うと、

彼らに影響を与えたであろうあれこれが思い浮かび、

その中で何を選択していったのか、すごく見たかったです。

 

まだ読まれてない方、これから読まれる方はカバー下のおまけは

中を全部読み終わってから見てください、と

星野先生がツイッターでお願いされてました。

ああ、確かにこれは…

 

以下ネタバレになりますので読まれる方は続きからどうぞ。

 

 

連載時カラーだったページはカラーで載せて欲しかったなー!

あそこでバン!とカラーが来るとインパクトがだいぶ違ったろうに…

お金がかかるんだろうな。ええやんか最終巻やしサービスしてえな講談社はん。

 

 

前半は初の自身監督作品を撮る事になった俊一郎にスポットが当たってます。

会社からの様々な妨害を受け制限のある中で自分の求める作品を

作り続けようとする頭の回転の良さは前から見られていた事ではありますが、

撮りたい場面の為に出演者を精神的に追い込んでいく、なんてのは

監督になったからこそ見られた場面でした。

このあたりの事は森島監督についた時に学んだ事なのかな、と思ってみたり。

しかし初監督作品でこれっておっそろしいような(笑)

 

その後京都に戻った後、武ちゃんにも大きな出来事が。御大…!

これも元々この時期の予定だったのかなあ…

この後武ちゃんもまた先の見えない暗闇に入って行く事となるのか、

それともあの気性のまま、周りを魅了しながらまっすぐ進んでいったのか、

見たかった…

 

俊一郎の申し出にああいう答えを出したのも、

自分が受け継がなければいけない、という思いもあったのかな。

 

高羽監督が示したように、この後テレビが台頭してきたはずです。

映画界が一時の勢いをなくして行き、大手映画会社が苦しくなっていき、

独立系の会社が増えていくきっかけにもなったという事らしいのですが、

俊一郎と武ちゃんは、その時どういう姿勢で自分の仕事を全うしようとしたのだろう。

ちょっと想像しても面白そうなのに…!

 

最後、十数年が過ぎ、その時俊一郎が撮ろうとしている作品が

「裸の島」をモデルとしたもので、広島県人としては俊一郎のモデルに

ゆかりある新藤監督が入ってたと知って嬉しかったです。

この作品を撮るまで、撮ってから、俊一郎と武ちゃんは

どんな関係で、どんな距離でいたんだろう。

本当に、見たかった場面の話はつきませんが、

ひとまずは星野先生、お疲れさまでした。

 

 

おまけ

 

デラシネマとは関係ないんですが、実際の「裸の島」撮影の際、

出費を抑えるために島の港近くの倉庫を改造してロケ隊の食堂としたそうです。

そこにいきさつを知らない船客が「カレーをやってつかあー」と

入って来てしまった事があったそうで。

中国新聞12月21日 緑地帯 「ありがとう新藤監督」より)

もしこの場に俊一郎や武ちゃんが居合わせたらどんな顔したろうと

記事を読んだ時思いました。

面白がってカレーをごちそうしたかもしれない。