GIANT KILLING単行本第30巻感想

第29巻の予告での達海現役復帰展開を読んだ時は

「え、どうなるの?どこ行こうとしてるの?」と戸惑いばかりが大きく、

この第30巻はどうなることかと思いましたが、

まさか、こんな展開になるとは。

 

達海がどんなにフットボールを愛しているか、

いつものあの飄々とした態度の底にある深い愛情や、

それと同時に残酷でもある現実の姿を見せてまで伝えたかった事、

言葉とその姿勢で見せてくれました。

良かったです。こちらの予想を超えて、すごく良かった。

 

続きからネタバレ感想

 

 

もおおお#296の達海の台詞がね!!

 

笠野さんを迎えに行って現役を退いた時の話をしていた時でさえ

淡々と事実や感情を語っていただけに、

「ゲームももっと出たかったし ゴールももっと決めたかった」

「ワールドカップにだって出てみたかった」

と激しさは無いものの、ストレートな言葉での

もう叶える事の出来ない夢が胸に突き刺さります。

 

現実的に考えて復帰の可能性は無いにしても、

あれほど楽しそうに、子供みたいな笑顔でサッカーする人が

「引退する」と口に出す事は、そして何より自分でその身を持って確認することは

身を切られるような思いがする事なんじゃないだろうか。

それでも、ETUのため、選手のため、それを見せる事を選んだ。

プロ選手としてサッカーができる事がどんなに幸せであるのか、

そしてそれが限られた時間であることを伝えるために。

 

達海監督としてではなく、一選手・達海猛としての言葉だったように私は思います。

 

 

プロとしてサッカーができる、

その幸運の中に居る選手が目指すものとは、覚悟するものとは。

第29巻で表面に現れたETUに漂う不穏の正体は、選手の意識のばらつきによるものでした。

万年降格ギリギリだったETUの選手たちは好調の時は波に乗れても

一度つまづくと一気に崩れてしまう。

「自分達は降格ギリギリレベル」という意識が抜けなくて、

好調の時の良さを本当の自信に出来てない、という事でした。

 

選手でないから本当の所は分かりませんが、難しいだろうなとは思うんです。

クラブの目指すサッカーを努力してやり続けて、

タイトルが取れたり、何年か連続でいい順位が取れたりすれば

「自分達のしている事は正しい、自分達にはこれだけの力がある」と

分かりやすく実感ができるのでしょう。

しかしETUは万年降格ギリギリ。

よく「勝者のメンタリティ」という言葉を聞きますが、それが長年持てない状況でした。

実績がないから自信が持てないのか、自信がないから実績につながらないのか、

卵が先かニワトリが先か、みたいな問題なんでしょうね。

 

単行本第13巻でヴィクトリーが不調から脱する事ができたのは

持田が出場した影響もあるでしょうが、まさにここが違っていたからなんでしょう。

彼らには王者の自負があった。

それにふさわしいサッカーをしなければならないという意識があった。

ETUは「まだそこに到達していない」という自覚をした段階です。

まだここから、そこを目指さなければいけない。

 

でもETUはきっとそれができるでしょう。

達海があれだけのものを見せて伝えようとしてくれたのだから。

 

 

達海が指導する下で力を付け、自信を持つようになった椿と

以前からETUに所属している選手の意識の違いに気がついたのは杉江でした。

ほとんどのETUの選手の意識が万年降格ギリギリのままで

変わってない事を嫌われるのを覚悟で指摘します。

(椿ほど目立ってはないですが、降格ネタを自虐する選手を注意したのもまた

若手の宮野でしたね。

小さい描写だけど彼にも弱いETUの意識が刷り込まれてないっていうことかな)

ドリさんに相談し、それに気付いた杉江ですが、

ドリさんが居ない状況でも、普通ならコシさんに任せて

自分がああいう風に前に出て話すような事はなかったかも、とも思います。

彼はもともと前に出るような性格ではないし、

クロと同じくらいコシさんを尊敬しています。

それでも、ここで行動を起こさなければETUは変われないと考え、指摘した。

監督がどんなに伝えてくれても、自分自身を含む選手が変わらなければならないと。

 

ジャイキリはフィクションですが、杉江のこの成長は

まるで現実の選手が成長し、たくましくなっていくのを見ているような

感動がありました。

時にその速さが予想以上なのも現実と重なります。

 

それを受けてコシさんはキャプテンを降りる事を決心。

これもまた、私の予想より速い事でした。

コシさんはもうこれ以降キャプテンマークを巻かない覚悟なんでしょうか。

これまで様々な事を抱え過ぎるぐらい抱えてきたコシさんなので

一選手に戻った後、身軽な心でもう一度キャプテンに復帰するという

道もあるんじゃないかと思うのですが…

第30巻でも他の強豪チームのキャプテンと自分の差に悩む描写が出てきただけに

退くにしても、思いっきりキャプテン同士のぶつかり合いをして

退くのではないかと勝手にイメージしていました。

達海はどう返すのかな。

 

 

それはそれとしてね、やっぱり次巻予告のキャプテン杉江の姿はね、

たまらん訳でしてね…!!

「おおお…」とか言いながら両手で顔を覆い天を仰ぎましたからね。

この!この選手なの!私ずっとこの選手好きだったの!

すごいよね!すごいよね!!

感無量………

 

あとジーノはずるいですよね。

ここぞとばかりにその人物観察眼発揮しやがって。

ツボを押さえた発言しやがって。

カッコいいったらちくしょう。

 

有里ちゃんの発言は今回ばかりはもう全面的に肯定できました(笑)

いつもの仕事の鬼モードはちょっと引く時もあるんだけど。

今回はヒーロー達海猛を応援してきた一人の乙女だったもんね。

あそこでとっさに「でも達海さんには もう監督っていうすごい仕事があるじゃん!」

って言ってくれる人がいてよかった。

言ってくれるのが有里ちゃんでよかった。

 

 

この展開で次名古屋と当たるのか…!うわこりゃまた盛り上がりそう。