さわやかサバイバー

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もう折り返しも過ぎたけど少年ハリウッド見ようぜって記事

ツイッターでちょちょいと「この作品好きです」って書こうと思ったら

140字程度の枠を何度も何度も越えて来たので

こりゃだめだとブログで書く事にしました。そんなに好きだったか。

 

 

そんな訳でアニメ「少年ハリウッド」が面白いです。

アイドルを目指す少年達の話ですが、題材から受けるキラキラした感じはあまりなく、

「アイドルとはどういう存在か」「アイドルになるという事はどういうことか」

をメンバーの成長をからめて、様々な角度から真面目にしっかりと描く

派手さは無いけど、しみじみ良い作品、という印象です。

 

原作がある訳でもなく(アニメの15年前を書いた小説はあるのですが)

ただ「アイドルもの」というだけなら普段は見ようとしないジャンルなので

この作品について全くノーチェックだったのですが、

たまたま見かけた第1話の感想の中で引用された登場人物の言葉が引っかかりました。

 

「キャーキャー言われて手を振られるのって、

裏返せばバイバイってことなんじゃないの?

アンタ達こっちの人間じゃないからね、って」

 

あれ、このアニメ、がんばってテッペン目指そうぜ!一辺倒じゃない?

むしろ目指すべき「アイドル」に対して考え込んでる。

と、着眼点が気になって見てみる事にしました。

 

 

でもまあ最初は「う、うおう…」ってなりました(笑)

リアル寄りで濃い目のキャラデザ!

わざと狙ってるのか本気でときめかそうとしてやってんのか

悩むラインの数々の懐かしめアイドルソング

う、うおう…

 

でもその辺はご心配なく。

慣れればリアル寄りの顔は地に足の付いたドラマにふさわしいと思えてくるし、

「こいつぁなかなか居たたまれないぜ」と思っていたはずのOPを

口ずさんでたりするから!すっかりハローハロー世界じゃよ。

(作曲者の方の名前、「なんだか見かけた事あるなあ」と思って調べたら

そりゃ覚えがあるはずだよ!数々のヒット作作ってきた方だよ!

懐かしめのメロディであることと、口ずさんでしまう魅力に納得)

 

 

そう、この作品、最初が一番ハードルが高いと思います。

しかし話数を重ねるにつれ、登場人物の内面や事情が開示されるにつれ、

やたらポエムチックに思えたあの台詞の意味が、

唐突に感じた会話の話題の理由が、

あの時のあれはこの事を指していたのかと分かってくる作り方をされていて、

話数が進めば進むほど深みが増していきます。

そして最初の頃の録画を残しておかなかった事を後悔する私。

 

ドラマを深めるのは登場人物だけではありません。

この作品、背景がとてもきれいなんですが、

一瞬映る背景、その他小物にも比喩が隠されてるので油断ができません。

例えば「今この一瞬」を語る背景の、残り1秒で止めてあるキッチンタイマー

例えば「人が普段なら見向きもしないような」なんでもない路地、

例えば父親が何気なく持っている「収まる場所を探している」パズルのピース、

さりげなく映されている様々なものに状況や心境が反映されているのです。

よく考えられて、丁寧に作られている作品だと感じます。

好きだとか書いてる割に私ぼーっと見てるのでなかなか気付かず、

ニコニコ動画のコメント見て初めて気付かされる事がほとんどなのですが。

上に書いたのもそこから使わせてもらいました。

 

 

あとこの作品に感じる「地に足のついたドラマ」感は

主人公の少年達だけでなく、学校の友人や家族、アイドルの先輩といった周囲の人達が

しっかりと話に絡んでくるからではないかなと思います。

 

少年少女が主人公のアニメの場合、

登場人物が同世代ばかりになることも結構ありますよね。

(学園ものとかスポーツものとかそんなイメージ)

少年ハリウッドはアイドルものではありますが、

主人公たちは7話現在テレビに出た訳でもなく、一度舞台をしただけ、

あとはレッスンばかりの地味な活動です。

そんな彼らのドラマは芸能界の中でなく

家族や、既にアイドルを辞めた初代「少年ハリウッド」のメンバー達

様々な世代との交流の中で展開されます。

家族や学校の友人との描写が入る事で、「外から見たアイドル」という視点が入ったり、

主人公が「彼らとは異なるアイドルという存在」になるとはどういうことかと考えたり、

どっぷりその世界、ではないことが「地に足のついたドラマ」と感じられる要因かなと思います。

 

それともうひとつ、この作品の珍しい所は上に書いたように

既にアイドルを辞めた初代の「少年ハリウッド」メンバー達が出てくる所です。

今の「少年ハリウッド」の彼達は、それが初代メンバーだと知っていたり、

あるいは知らずに出会い、様々な言葉を貰います。

この時のやりとりがどれもいいんですよねえ。

人生のある一定の期間でしかなれない「アイドル」という存在になること、

その時間には限りがあって、夢は全て叶う訳ではないこと、

それでも「アイドル」という存在になり、芸能界で自分を表現していくこと、

それらを既に経験してきた初代メンバーが、

今からそこを目指す今のメンバーにかける言葉は短くても指針になってくれます。

 

トミーが託し、ミィが受け継ぐ事を決意する場面もよかったし、

子役上がりのキラが自分の言葉は親からの借り物であることを吐露し、

(すでに自覚してるのがまたいいと思う)

それに対し「借りた言葉なら利子を付けて返せ」と言ってもらえる場面もよかった。

ここら辺、台詞が素敵なので引用したいんですが録画残してないのが悔やまれる…!

 

 

目指すのはランキング1位!この障害を乗り越えたら次はこのステージだ!っていうような

ゴールやステップがはっきりしてるような作品ではないので、

「なにこの、ふんわり始まってふんわり終わる番組は」と感じる人もいると思います。

しかし丁寧に作られていて、

ドラマを形作る様々なものが画面のあちこちに散りばめられていて、

解釈や心情を読み解いていくのが好きな人にはすごく面白い作品だと思うのです。

台詞のさじ加減やセンスを感じてもらうためにも、

興味が沸いたらぜひ実際に見てみてほしいです。

 

ということで、遅れたけど管理人はこれから8話の追いかけ再生に向かいます!

本当は8話前に書き上げるはずだったのに!

 

(8話見てきて追記):

大切な事忘れてた!

これ、ミミズクヒロインにハァハァする作品でもあるよね!