さわやかサバイバー

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GIANT KILLING単行本第33巻感想

対グランパレス名古屋戦決着!

第1巻の頃から描かれてきた問題、

未来の象徴となる選手の成長、

怪我から復帰したり、夏のキャンプで加わった新しい選手達の活躍、

達海が体を張って伝え、それを受けて変わることを決意したETUメンバーが

見せる結果…と

これまでの道のりが集約されているような第33巻でした。

それだけに留まらず、彼らが目指すその先は

こちらの予想を超えていて、嬉しい驚きをもたらしてくれました。

つまりは超面白かったってことですよ!興奮したっつうの!

 

続きからネタバレ感想

 

 

毎年降格ギリギリのETUをキャプテンという立場以上に支えてきたコシさんの事は

それこそ第1巻で達海がほぼ最初に手を付けた問題であり、

ここまで何度も繰り返して描かれてきました。

恥ずかしながら、今になって何故こんなに繰り返し描かれなくてはいけなかったのかが

ようやく分かったような気がします。

コシさんの意識が変わるということだけでなく、

同時にETU全体が成長し、コシさん一人に頼ることなく進んでいけるようになって初めて

クリアされていく問題だったからなんですね。

それはかつて達海というエース一人に全てを背負わせ、

達海もETUも壊れてしまう結果となった過去を越えていくということでもある。

 

今期、達海が監督となって一番成長した椿の姿を見て杉江が気付き、

絶対的なキャプテンであったコシさんとは違う意見を導き出し、皆に伝え、

メンバー全体で意見のすり合わせを行い、変わっていくことを決意する。

きっかけとなったのは達海の行動ですが、

誰かが引っぱって、皆がそれに付いていくのではなく、

メンバー全体が変わろうとする段階に来たことで、

コシさんもキャプテンという肩書を譲る決意ができた。

 

プレシーズンマッチのヴィクトリー戦、夏のキャンプ、

思い出せばその都度、変化の兆しや変わりつつあることを

コシさんは実感してきたんですよね。

そしてその節目にはいつもヴィクトリー戦があったことを考えれば、

3度目の対戦を、どのように成長したETUが迎えるのかも楽しみになってきます。

 

そのコシさんは第32巻の巻末予告時点から

いち選手として躍動してくれることを期待してましたが

まさか代表復帰まで狙ってるとは!

いつもチームのためという立場からの言葉が多かったコシさんから

一人の選手としての野望が聞けるようになったのは嬉しいです。

でもそれってやっぱり達海の発言に影響受けたの?ねえ、ねえねえ?

 

 

キャプテンという肩書から離れ、歩みを進める選手もいれば、

キャプテンマークを巻くことで力を得る選手もいる。

名古屋の川瀬もまた、コシさんと同じように

長年チームの象徴としてチームのために働いてきた選手ですが

そればかりのプレーをしてきたことを後悔するようなモノローグがあります。

それでもサッカーへの情熱を失わず、手を抜くことなくプレーしてきた彼の姿勢が

名古屋の選手や不破監督までにも影響を与えたのは、

やはり川瀬がチームの為に働いてきた選手だからこそではないでしょうか。

自分の為ばかりのプレーをしてきた選手であれば

人の心を動かせなかったのではないかな。

コシさんがキャプテンを離れた試合で川瀬のような選手を出すということは

コシさんのそれまでも決して否定する訳ではないことを表しているのかもしれない。

 

ベテランと言われる年齢に達した二人が後悔を抱えながらも

リスクを覚悟の上でピッチ上で己を出したプレーをし、

前に進もうとする姿は人に何かを与えるんだと描く、ジャイキリのこういうとこ好きです。

 

 

そしてそんな2人の「キャプテン」から「思うままプレーしろ」と背中を押されちゃあ

椿もやらない訳にはいかねえってな訳で。

 

「王子遅いっ!!」

 

「なんだって?」

 

オイイイッヒ!?

予告見た時もビックリしたけど、本当に椿がジーノに指図してる…!

あ、でもジーノのプライド持ち上げるような言い方したんだ。

椿にしては上手いことやったな(笑)

しかも達海のやり方なぞるとは憎いじゃないの。

ここも初期を思い出させるやりとりだなあ。名古屋戦はそういう場面多い。

 

 

名古屋戦は連敗を止め、重なる不利な状況を跳ね返したことで

ETUがたくましくなったことを見せてくれた試合でした。

試合前の皆の意識の変革は必要なことだったとはいえ、

その為に名古屋戦の準備が十分にできず、試合中のピンチを招いたのも事実です。

そのピンチを達海の采配ではなく、選手達の頑張りが跳ね返した描写が印象的でした。

達海に与えられてばかりでなく、恩返しが多少なりともできた試合だった。

勝負の面でのたくましさだけでなく、精神面も含めたたくましさが感じられた、

チームの成熟度が進んだことを実感できる試合でした。

 

だからこそ、最後のページの達海の台詞に繋がるんですかね!

正直そこまで狙うとは思ってなかったよ!声出ちゃったよ!

毎年降格争いのチームがタイトル目指すなら、総合力ではなく、

一発勝負で決まる可能性があるカップ戦の方が現実的かなとか思ってた。

ああでもそうか、最初から飛び抜けた何かを持つチームではないETUが

クラブ全体が一つとなり再生し成長していくことを描いて来たなら

まさに「総合力」が問われるリーグ戦の方でタイトル狙うのも納得です。

そしてそこで当たるのが大阪とか!

前回の名勝負思い出しても楽しみすぎる!

またあの濃いキャラ達に会えるのも楽しみすぎる!

クボタンと椿がバチバチにやり合うらしいし!

ハウアーまた変な髪型になってるし!(笑)