さわやかサバイバー

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OFF(フリーゲーム)

フリーゲーム「OFF」をプレイしました。

いやー、噂通り凄かった。飲み込まれました。

日本語版が出た時から話題になっていてずっと気にはなっていたのですが、

幸いなことに今まで大きなネタバレに触れることなく

詳細を自分の目で初めて知ることができて本当に良かったと思います。

なので興味を持っているけどまだやってない方は

この先の内容に触れる記事を読まずに、

乾いていて、不気味で、可愛らしくて、悲しくて、徐々にあなたを侵食していくOFFの世界を

まずはご自身で体験していただきたいと思います。

 

 

続きからネタバレ感想

 

 

ここから先はもう知ってる方が読んでるものとして書きますよ、OK?

 

主人公=プレイヤーでない設定のゲームは何作か知っていますが

この作品の設定が与えるプレイヤーへの影響はエグいですよね!

 

亡霊がはびこり、人々の在りようが歪んでいるように見える世界を

「浄化しなければいけない」という使命を持ち突き進む主人公バッター。

間違っているものを正そうという行動と揺るぎない意志は

開始当初プレイヤーに頼もしさを感じさせます。

しかし徐々に世界の成り立ちが見えてくるにつれ、

「浄化」することだけが正しいのか、プレイヤーは疑念を持たざるを得なくなって行きます。

しかしバッターの意志は決して揺らがない。

それでもプレイヤーはバッターを操作することでしか世界や物語の行く末を知ることができず、

バッターはプレイヤーに操作されなければ目的を果たすことができない。

最初、同じ目的を持って同じ方向へ向かっていたように見えたプレイヤーとバッターの関係が

バッターに疑念を持ちつつも、目的のために離れることができない共犯者のような関係へ

変化していく様子が実にスリリングでした。

 

そして最後に突きつけられる大きな決断。

プレイヤーがプレイヤーであったこと自体が問われることになります。

強制的であったとしても「そうしたのはプレイヤー自身」である事実が

大きく胸をえぐってきます。衝撃でした。

後から思えば、この世界のためにこれ以上ゲームをプレイしない、どこかでプレイを止める、

という選択をプレイヤーはすることもできたのだと思います。

結果、バッターは目的を果たせず、世界はゆるやかに死んでいくことになるのでしょうが、

あの最後をプレイヤーの手で迎えることにはならなかったはずです。

本来最後まで遊んでもらうことが目的であるはずのゲームで

プレイを途中で止めることが一つの結末になりうるという

物語のひねらせ方と世界観の強さに痺れました。

しかし謎解きに詰まったとか、飽きたというならともかく、

この作品に魅力を感じていながら途中でプレイを止めるということは普通難しいでしょう。

「そういう風にしかプレイできないからそのまま進める」

「この先が知りたいから最後まで進める」という

プレイヤーにとっての当たり前を最後の最後でガッと掴んでガンガン揺さぶってくる。

そうしたのはお前なんだから、その結果の決断も受け入れなければいけないと言ってくる。

そこまで魅力的なキャラクターや音楽や謎や世界観でガッチリ引きつけておいてこの仕打ち!

ひどい!鬼!悪魔!

しかしだからこそ衝撃的で深く心に残る作品となっているんですね。

 

 

<キャラクター雑感>

 

バッター:

彼の迷いの無さを「信念」と取るか「狂気」と取るかで印象が異なってくると思いますが、

プレイヤー同様に「そうするしかないように作られている」存在ではあるけれども

その結果どうなるかを分かっていながら、

それでもそれが救済なのだと信じ最後まで行ったのだから

あれは彼なりの優しさだったのではなかったのだろうかと私は思います。

当初は続編の可能性もあったようですが、

どのような結果になろうともバッターが覚悟を持ってあの行動を行ったのなら、

彼の物語はあそこで終わったのだと思っているので、続編なしには個人的には賛成です。

 

クイーン:

歪んでいるものを正さなければならない、というバッターの行動が

父性的、男性的であると感じさせられるのに対し、

歪んでいてもそれでいいと受け容れているクイーンは母性的、女性的に感じます。

しかし完全に受け容れられている感じがどうもしませんでした。

そばに来て抱きしめてくれるのではなく、遠くで美しいまま世界に君臨するクイーン。

顔を含めその姿は黒く表情が見えません。

彼女の元に辿りつくまでに見聞きした情報と合わせて考えると

クイーンがあのような姿であることの理由がとても悲しく切ないです。

 

ジャッジ:

多くのゾーンを渡り歩いてきた、他のゾーンとは様々な点で異質なゾーン「0」のガーディアン、

あのED後もいる、等々どう考えても特別感が満載です。

そしてあの長ったらしく洒落た話し方、只者ではない所をしょっぱなから見せつけつつ

「バリバリモグモグバリバリ」とかいきなり猫丸出しすんのズルイっすよぉー!

(膝から崩れ落ちる)

そういえば最初から「人間って猫にスリスリされたいんじゃろ?(意訳)」って言ってた。

自分の魅力を十分に分かっててやってやがる…この賢いお年寄り猫め!

様々な場面で情の深さを見せてくれますが、

そんな彼があの超越者のような立場であることは辛くはないのだろうかと考えてしまいます。

 

ザッカリー:

全編に渡って翻訳者の方のセンスは素晴らしいのですが、

それがひときわ輝いて感じられたのがこのアイテム商人ザッカリーの台詞でした。

余裕があって、ユーモアたっぷりで、チャーミング。

「…あら」とか、「ほーら、早く」といった、ちょっとした所にも手抜かりなく

そのキャラクターらしい言葉にしてくださるのが本当に素晴らしい。

やたらいい声のボイス、ちょいちょいプレイヤーに向かって語りかけてくる所なんかも含め

そりゃ人気出るよねえええ!と実感しました私も好きだーーー!!

ただのアイテム商人としてなら不必要なくらいのキャラクター付け、

プレイヤーを認識している所、彼についても考えようと思えば深そうです。

バッターの協力者という立場なら彼もまた完全にあの世界の住人という訳には

いかなかったからなのでしょうか。

 

 

追記 プレイ後にツイッターでつぶやいたもの。猛烈にネタバレです。

(OFFネタバレ回避用アカウントさんを利用させてもらいました)