さわやかサバイバー

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コンクリート・レボルティオ~超人幻想~ THE LAST SONG 第15話感想

「宇宙を臨むもの」

 

帝都広告の元、スパイまがいのことまでしたり、

「お給料も大切」とあっけらかんと現実的な発言をしたり、

かと思えば体制に刃向う若者の側に立ったりする。

華やかな存在感を放ちながら、立場を次々と変える心情が描かれず

掴めなかったエンジェルスターズの胸の内の一端を知ってみれば

そこにはそうであるがゆえの苦しみがありました。

 

続きからネタバレ感想

 

 

前話、第14話の柴刑事のエピソードが

彼の強すぎるくらいの正義への想いを実現しようとするほど

超人であるという事実が足元に絡まり動けなくしてしまう話だとすれば、

今回はアキが望むと望まざるとにかかわらず

超人というだけで求められる正義の理想像に押しつぶされるという、

対となっているようなイメージを持ちました。

そしてどちらもが苦しみから抜け出すために自分の外にある唯一絶対の正義を求め

取り込もうとするということが、どのようなスタンスで正義に向かい合っていても

何が正しいのか分からない、指針が無く生き辛い時代の空気を表していたように思います。

 

爾朗を古いと笑いつつも、正義などどうでもいいと思っている訳ではなくて、

親世代の正義や、それが引っくり返ったことを語ったり、

子供時代に天弓ナイトに憧れた思い出などから

アキには本来素朴な正義への想いがあったのではないかなと感じました。

仕事だからと言ってはいましたが、自分ができる範囲で超人としての務めを果たそうとした

真面目さが台詞からもうかがえました。

しかしその中で体制側に付いたりそれに反発する側に付いたり、

それぞれの立場に居たことで身勝手さなどをより身近に感じ

信じられずに「白け」ていってしまったのかもしれません。

アイドルという、人に求められる割合の多い、

時と場合によっては全く違う姿にならねばならない職業だったことも

拍車をかけていたのではないでしょうか。

そしてその中で見つけた愛という、ありのままの自分が求める光を潰されてなお、

正義を求められ自由になれない超人であるということで苦しみが深まっていってしまった。

 

(脇道にそれますが、第3話で機械であるメガッシンの愛を輝子は正義だと言っていますが

プログラムされたものであっても、人も同じでそのように作られているから正義という

それがどのように発生したかという問いについての答えで

上で触れたアキが求めた愛は正義とは全く違う方面から自分を認めてくれるものであり、

だからこそ救いだったと思っています。上手く言えないですが。)

 

 

絶対と言える指針や指導者が失われ、しかし可能性の発芽があり、

どのように変化していくか分からない中を自分の足で歩いていかねばならないという共通項で

アキから爾朗と課長のエピソード、天弓ナイトの真実に繋がり、

人類と超人の、この星全体の現在と未来に繋がっていく流れはゾクゾクしました。

 

縛られるばかりだった世界を飛び出し、自由になりたいという

願いを叶えるために必要だったフューマーはもはや居ないということは

アキにとって残酷な事実でしょう。

しかしそれでも迷いながらでも進む道があるのだと、

いまだ迷い続けている自分をさらけ出して語った爾朗の言葉は

そうやって生きていくしかないアキのこれからを肯定しているように思えました。

 

世界の混乱を知り、その只中に居ながら、それでも前を向いて歩く道を見つけ

その姿や言葉で同じ様な状況にいる人の背中を押せるようになったんだなと

爾朗の頼もしい成長を実感できる場面でした。

本当にいい主人公になったなあ…

 

その時に餞別として渡すのが天弓ナイトのヘルメットというのも、とてもよかった。

これを水汲みに利用してたというのがね(笑)

爾朗にとっての天弓ナイトは神のごとく手の届かないものとして崇めるのではなく、

自分の身近に、生きていくために必要なものとして側にあるという存在になっているのだと

感じました。

それは演技とはいえ、第8話でマスクとコスチュームを身に付け、一体化しようとしていた頃より

ずっと健全な関係のように思えます。

そして象徴と言えるマスクを人に手渡しても大丈夫な程に

彼の中にその存在が根付いているということなのでしょう。

 

そしてマスクを餞別にするということは天弓ナイトに憧れたけどなれなかった幼い頃のアキ、

つまり超人として押しつぶされる前の

ありのままのアキの願いを叶え、肯定することでもあるように見えました。

課長が告げた天弓ナイトの真実も合わせて考えると、最後にマスクを被るアキの姿には

これからまだ可能性が広がっていることも含んであるのかもしれません。

根付いたのかも分からないほどですが、希望のきざしがするラストカットだったと思います。

 

 

ここ2回で描かれた、相手がどのような正義を持っていようと救おうと奔走する爾朗の姿勢は

とても好ましいし、素直に応援したくなります。

しかしこんな草の根運動みたいなことを繰り返して皆がまとまってくれるような

ぬるい世界ではないでしょう。

何が立ち塞がってくるか恐ろしい所もありますが、

爾朗自身の成長も確かに感じさせてくれてるので、

恐れつつも楽しみに、今後を待ちたいと思います。

 

 

以下、箇条書きで色々

 

・憶えてないくせに「友達」とか言っちゃうのかよー!とも思いましたが

本当に友達だったのかどうかなど、はっきりしていない過去の事実がどうであれ、

第1期終盤で関わり合い、共に人間と超人が幸せになれる未来を思いながら

戦わざるを得なかったあの時期だけでもクロード/神は爾朗にとって友達と言える

存在になったのだろうと思いました。第14話の柴への友達発言とも合わせると。

クロードのやり方で上手く行ったとは決して思わないけど、

そんな辛い戦いを経てなお、お互いが望んだものとは正反対の、

超人が虐げられる方向へ世界が向かったことに

爾朗は苦い想いを抱いているのだろうと想像します。

倒してしまった自分だからこそ、問いに答えられなかった自分だからこそ、

彼とは違う世界を変える道を見つけなければと、もがいているんでしょうね。

 

・課長たちは意識があるまま爾朗の腕に取りついてるんだと思ってました。

お互いの利益のためにそうしてるけど、

いざって時は内側から爾朗を操ろうとか企んでるのかなと。

爾朗に話した内容は嘘で、実はそうである可能性もなくはないけど、

見守る内に人類自身に可能性を託したくなったという言葉は信じたいです。

第12話でクロードの前に飛び出したあの行動は

本当に自分がしたことを悔いて報いを受けるつもりだったからだと思うんですよね。

制御棒が落ちて行くシーンは絵としてもすごくよかったし、

爾朗の力の可能性の広がりと共に、後戻りができなくなったことも感じさせられて

ぞわっとしました。

 

・ジュダスは第1期ではナイーブな面が大きく印象に残ったのですが

彼も変わってましたね。

爾朗と対等に話している様子までは、それだけの年月を経たからだろうなーと

思ったのですが、本人に黙って例の血液製剤で人体実験してるとか!

っていうか爾朗はまた知らないうちに自分の血使われてるのかよ!(頭抱え)

ジュダスが何の目的でそんなことをしているのか、動機は何なのか、気になりますね。

あと義手化は超人登録の時のブレスレットを無理矢理外そうとしてなのかな。

だってあれもゴニョゴニョ。

 

・「しかも呼び捨て!」って文句を言ってるようで

声が明らかに嬉しそうな輝子がチョロかわいい(笑)

しょうがないな君も。

 

・ジャッキーが見た目はロックな感じになってるのに

完全に里見の手下というのが皮肉だなあ。ロックじゃないよ…

目の様子もおかしいし、洗脳でもされてるんですかね?完璧な商品か、うう…

今回、他の元エンジェルスターズのメンバーが互いを思いあっていただけに

そんな彼女の様子も辛いものがあります。

 

・爾朗がはんごうすいさん(米のみ)してましたが、世界各地の秘境を旅してきた

人吉博士が昔教えてあげたという、心温まるんだかなんだかなエピソードがあるのかな

とか思ったり。

身の回りのことはさっぱりだけどサバイバル力はある人吉博士。

 

・今回の挿入歌はアレンジも好きな感じで、

「どうにでもなれ」から使ってくるのがアキの心情とガッチリはまっててウォーってなりました。

店のラジオから聞こえてくる風だったり群衆が歌ってたり、

歌の演出にも様々な工夫がされててホント面白い。

 

・さらっとマスターウルティマの出自も明かされましたが、あれも謎ですよね。

「死んだ人間に寄生するフューマーという生命体」と人間の間に生まれたって。

同じくフューマーである課長たちも人間体の時は特別な力があったようではないし、

親の体が人間である以上、ただの人間しか生まれないのでは。

フューマーがガス状生命体なのにマスターウルティマがあの見た目が

あんな宇宙人チックなのも謎。被りものとかなのかな。

このあたりにも闇がまだありそうですね。

今のところ国のために動いている様子しかなかったですが、

彼自身自分の生まれやその過程に恨みを持ったりしてないんだろうか。