さわやかサバイバー

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コンクリート・レボルティオ~超人幻想~ THE LAST SONG 第21話感想

「鋼鉄の鬼」

 

様々な人や超人が持つ正義のぶつかり合いが描かれてきたこの作品で

常に裏から世間を操り己の利としていた里見の目的がようやく明かされてきました。

彼の言葉は爾朗を、そして神化の世界を揺るがしていきます。

 

続きからネタバレ感想

 

 

自分の信じるもののため、あるいはそれを探し迷う登場人物の中で

利益になるものなら信念でも流行りでも利用し捨ててきた里見は異質な存在でした。

青くて甘いまま、揺れながらもずっと

正義の味方としての在り様を探し続けている爾朗とは

交わらない軸に立っているような気がして、

いずれ直接対決することにはなるだろうとは思っていましたが

何をもって立ち向かうことになるのか掴めず不気味に感じていました。

 

今回、まずギョッとしたのが冒頭のナナのバイク事故の場面で、

里見がいつも持っている蛇の杖が変形し、事故を引き起こしたように見えたことでした。

まだ明言されてないので違うかもしれませんが、あの杖が金属製だとしたら

彼もまた金属を自在に操る能力を持っているということなのでしょうか。

クロードや弓彦、ここまで爾朗と対になっている側面が大きいキャラクターたちが

持っているあの能力です。

 

それと最後の「昭和」の原爆投下を知っているかのような発言。

自分のことをジジイと言いながら少しも老いてない外見は

元超人という能力によるものだと思っていましたが

時間や次元に影響を受けない存在であることを象徴したものだったのでしょうか。

視聴者の私たちが知っている歴史を「正しい」と言い、

爾朗の存在を「間違い」と言う。

東﨑さんに「超人のいない世界が目的」と話したことと合わせて

こういう風に立ち塞がってくるのかと。自分と重なる能力を持ち、

他人の幻想を自分の利益とする「大人」の代表格のような存在が

世界ごと自分を否定してくる。

爾朗はどう抗うのか、いよいよ大詰めになってきたんだなと感じました。

里見の動機などが明らかになっていないし憶測の部分も多いので

どう転ぶか全く分かりませんが、

今までの展開やキービジュアルなどからすると

子供の幻想を否定はしない結末になってくれるのではないかと思います。

というか、私はそうなってほしいんですね。

 

 

その爾朗はといえば、クロードのヘルメット普及版により事実を知り始めた所で、

抗うにも足場が定まらず各方面から吊るし上げ食らってる最中の不安定な状況です。

第2期の間ずっと「お前何がしたいんだ」と言われ続けて

実際ここまで決められてないのは事実なんですが

今回は特に厳しかったですなあ…

前回のマスターウルティマの言葉や今回ジャガーさんが解説していたように

爾朗の持つ原子力という力は破壊をもたらすと同時に

大きなエネルギーを生み出すものでもあります。それ程の力の持ち手である爾朗が

「何も成せていない」と責められている状況なのがちょっと面白いとも思ったのですが

逆に、こうと決めて力をふるえば

それこそ世界を変えることになるんだろうという予感があります。

 

その時何を選ぶのか。第18話では「子供のために戦うのが超人」と言い、

今後超人病で苦しむ人が出続けてることになっても

超人であり続けたいという若村さんを守ることを選択しました。

また、自分が超人に抱いている理想を他の人も持っているはずだと

思いがちな所があって、それを笑われたり否定されたりする場面もありました。

彼の理想は純粋ではあっても、倫理的でも公平でもない危うさがあります。

関連小説「超人幻想 神化三六年」を読んだ印象としては

多くの人が苦しむ結果となるにしても

自分の幻想を守りたいという想いを抱いてしまうことを業と認めながら

肯定しているように感じました。

BDのオーディオコメンタリーで少し触れられていたように

彼らの意志は必ずしも共感する必要はないものとして描かれているようです。

ひょっとしたら何らかの意図を持ってこの危うさも描写されているのかもしれません。

しかし、これまで見てきて私は爾朗が好きになっているし、

これからも好きでいさせてほしいと願ってしまうんです。

だから数々の正義が並び立つ混迷の中で

そう願うのは酷かもしれないけど、彼の理想も、他の人の幸せも

できるだけ多くすくい取ってくれる選択をしてほしいと思ってしまいます。

 

 

以下、箇条書きで色々

 

・あのね私クロード/神好きなんすけどね!

いやもう今回の展開どう受け取ったらいいのか!!(テンション高低差注意)

今回NUTSをあっさり切り捨てた里見が

新宿擾乱から何年も経ってなおクロードという存在を使ってきたのには

何かしらの思い入れや狙いがあるからなんでしょうか。

視聴者的には第1期で答えられらなかったクロード/神の問いかけに

爾朗は今度は答えることができるのだろうかという期待もあります。

…という、真面目な感想を吹き飛ばしそうな勢いで

女言葉のインパクトが強くてね(笑)

放送されてた以外の東﨑さんがなんやかんや言ってた台詞も全部

クロード声だったりしたらどうしよう。面白すぎる。

いやそんな面白さはクロードには求めてないんだ。

まさかの再登場は嬉しいんだけどこれどうなるの。複雑な顔になるよ!

 

・東﨑さん搭乗した時の様子からするとたぶんNUTSは

あのクロードが投影されるヘルメットを被らないと起動しないんでしょうね。

「なんでモニターが映らないのよ」って言ってたけど、

起動した後も別にモニターに何かが映っているようには見えませんでした。

となると、あれは搭乗者が実際に見ている景色というよりは

「ヘルメットが見せている景色」つまりは

「製作者が被った者に見せようとしている景色」なのかもしれません。

そう考えるとラストで爾朗が過去を幻視する理由もなんとなく見えてきそうな気もします。

里見が知らしめたい真実が爾朗の過去に繋がっているものだからこそ

あそこで爾朗は自分の知らないはずの過去を見たのかも。

 

・弓彦がレックスFEを動かす際に被っているヘルメットもデザインは似ていますが

あれにはクロードの投影はされてないんでしょうか。

今回彼の台詞は例の映画の内容に基づくもののようなので

何を知った上でああ言ったのか、判断は保留しとこうと思うんですが

東﨑さんは自分があのヘルメットを被った経験から

弓彦もまた、あれに影響を受けているのではと心配して

結果爾朗にヘルメットを渡すことを決めたのかもしれません。

 

・このあたりは「仮面を被ること」それ自体の意味、

自分を隠し別の存在になるだとか、それにより自分以上の力が出るとか

以前から何度か出ていたことがもう一度描かれているように感じました。

加えて、アキ(ヒカリナイト)対東﨑さん(NUTS)は

それぞれ天弓ナイトとクロードの遺した仮面を被っての戦いでもあり

仮面が象徴した存在は受け継がれていくんだということを言っているかのようでした。

 

 

・アキの爾朗への「いくつになった?」発言

それなりの年齢でセクシーコスチュームを着る羽目になった東﨑さんへも

流れ弾行ってねえか。

「やめて…アラクネ…(勘弁して…)」

 

・アキが餞別として受け取った天弓ナイトの仮面を被っていたのは

第15話で爾朗から掛けられた言葉に思う所があったからなんでしょうか。

「自由になってから~」という台詞には以前の自暴自棄さとは違う

どこか前向きな印象を持ちました。いや、やろうとしてるのは破壊行為だけども。

そうさせる言葉を言った爾朗自身がまだ同じ所で立ち止まっているように見えたのが

もどかしく感じてあんなこと言ったのかも。

 

・アキの背景を知ってか知らずか分かりませんが、

柴の「好きな相手と~」という台詞など、それまでの展開を拾ってくれてるのも

よかったですよね。これが「彼氏と」ではないのが憎い。

 

・そんな柴の立ち去るメガッシンの二人を見る一瞬の表情もね、

含みがあって色々考えさせられました。

自分たちの行動に迷いを持たない二人に憧れる気持ちがあるのかな。

ただ単にまだ美枝子さんに未練があるとかでもいいよ。

 

・BDの脚本集で新宿擾乱でアースちゃんが機能停止に追い込まれたのは

デモに参加していたであろう女子生徒を助けようとして

押し寄せるデモ隊に押しつぶされたからだと書かれていました。

憶測ですがジュダスがそれを見たか、後に知ったとしたら。

信奉する正義が純粋であるが故に

守ろうとしている対象に壊されたのだと知ったとしたら、

彼は自分が正義をはみ出した力でもなんでも手に入れることで

アースちゃんを取り戻し守れるのならそうしようと決意して

あんな感じになったのかなとか思います。

 

・「巨大化しても大していいことないぞ」

グロスオーゲンの時から次元の隙間で戦ったりしてたもんな。

巨大化するたびに街や人に被害が広がらないか気を遣ってくれてたんだろうな

っていうのがうかがえる台詞で好きです(笑)白田さんいい人だ。

 

・モブ超人たちの色んなデザイン見るのも好きなんですけど、

動物超人の犬の人は口髭が生えてたり(本来のヒゲとはどう違うんだ)

年を経た変化がちゃんと反映されてる細かさが嬉しかったです。

零一くんの仲間の委員長の後ろにいた黄色マフラーの少年、

確か第12話の八方高校にいた正統派少年ヒーローみたいな感じだった子じゃないかと

思うんだけど、ずいぶん太…恰幅がよくなっちゃって…

BL団の面々とかも成長した姿を見られたのは嬉しいんだけど

みんながみんな「健やかに成長した」とは言えない感じで、

でも変わらずBL団のバッジを付けてるのが切なくて。

あの子たちと弓彦くんはお互いが今どういう存在になってるんだろう。