コンクリート・レボルティオ~超人幻想~ THE LAST SONG 第23話感想

「怪獣と処女(おとめ)」

 

 

続きからネタバレ感想

 

 

これまで積み重ねられてきた、笑美たち妖怪などの古き存在と

マスター・ウルティマに代表されるそれらを超人と認めない新たな勢力の対立は

彼が妖怪を燃料とするシステムを作り上げてしまったことによって

冒頭から臨界点に達し、笑美によるマスター・ウルティマの殺害と

ウルティマポリスの占拠という衝撃的な事件が引き起こされてしまいます。

 

本当なら笑美は人と超人が手を取りあう理想を抱く爾朗の側で

自身もそれを助けるように人と妖怪の間を取り持ち

彼を様々なものから守り愛す、美しい恋人でありたかったのだと思います。

しかし超人を、ことに古き存在を追いやる方向へ傾く時代の波を

妖怪の姫であるという立場から放っておくことはできません。

今までも爾朗を守るために陰でかなり汚いこともしてきたことはうかがえますが

自分たちの仲間を守るためとはいえ、超人を殺して目的を果たすというような

爾朗の理想からかけ離れるような行為を彼に知られてしまうことは辛く、

失望されるかもしれないことも恐ろしかったのではないかと思います。

自分たちの陣営に誘う言葉を掛けつつ

爾朗の腕を優しく取るのかと思いきや急に強く掴む仕草は、

昔の約束にすがる弱った心の表れのようでもあり、

約束を盾に迫る執着のようでもありました。

 

 

その笑美の逃げようという申し出を聞き、逆に世界に宣戦布告した爾朗が

望んでいることとは何なのでしょう。

存在するだけで死や破壊を招く呪われた出自を知り立ちすくみ、

しかし背中を押してくれる人たちのおかげで人を救うこともできた。

そんな自分をずっと守り庇ってきてくれてきた人々の気持ちも知った。

ここまで見てきた、青くて、甘くて、

自分の中に潜む破滅を求める心に恐怖を抱いているからこそ

正義を欲し、望み、憧れ続けた彼が

今まで関わってきた人々の想いを全て振り切り、怪獣という生まれにのみ

自分が存在することの根拠を求めるとは私には思えません。

「何であるか、どう生まれたか」ではなく「何であろうとするのか」を大切にしてきた

これまでの彼自身を否定する行動のようにも思えるからです。

 

では彼は、人を救うためには苦しむ人がいないければいけないという矛盾に

蝕まれていったアースちゃんのように

何が正義で何が悪か分からなくなっている時代の超人たちに

「倒すべき絶対の悪」として立ち塞がることで

正義の超人が存在する根拠となろうとしているのでしょうか。

(笑美はもはや止められないと判断して、

最後に自分一人が全ての罪を被るつもり?)

前回の感想でも書いたのですが私はそれは嫌だなあと思うんです。

爾朗自身が救われない気がして。

今まで彼は自分のことを超人とは言っていません。

破壊衝動を秘めたままの自分は力を持っていても超人にはふさわしくない

と思っているのでしょうか。

自分は超人でなくても、正義の超人がいてくれればそれで

彼の望みは果たされたと言えるんでしょうか。

それも、正義は相対する悪が居なければ存在できないという、

これまで超人や人々が苦しみ悩んできた構図を越えられていない気がします。

泣く子供がいる前提での正義なんて嫌なんです。

爾朗の原点となっているのは泣いている子供、

つまり自分と自分に重なる姿の人々を救いたいという所だと思っているので、

最後にはやはりそれを叶えてほしい。

 

そうする為には、彼は自分が超人という、誰かの憧れを背負う存在となる

覚悟をしなければならないのではないでしょうか。

あれだけの過去を持つ彼に、それでも君は人々の光になってくれというのは

とても酷な願いだと思います。

今回、原子力が存在する世界はエネルギーを巡る争いのない、

平和な世界かもしれないと神化世界の人々によって語られていましたが、

その世界に住む私たちはここがそんなに素晴らしい世界でないことを知っています。

向こうの人があったかもしれない可能性、ここではないどこかに憧れを抱くように

原子爆弾が落ちず、多くの人の苦しみがなかった世界で

ひとり人の身でそれを背負う彼に「そちらがより良い世界となった証を見せてほしい」

と思うのも、どちらも身勝手な想いです。

どこの世界にいても人は必ずしも報われない現実を生きています。

だからこそ人々を救ってくれる超人を求める。

人々の想いによって超人は生まれ存在する。

私たちが超人を憧れ求める想いが形となるのだと

二つの世界の接点に存在する爾朗自身が超人となることで答えてほしいのです。

 

それと、あれだけ悩み苦しんだ結果、

自分一人を正義の根拠としてきた柴が最後に

爾朗も共に正義を担う存在だと認めていたことは重く、

爾朗はそれにも応えなければならないと思うのです。

 

 

なんやかんや書いてきましたが、

具体的に今まで出てきたどんな装置や能力が使われて

どんな結末になるかはもうさっぱり予想がついてないので

「楽しませて下さーい!」と大の字で待機してるような心理状況です。

泣いても笑ってもあと1回、

できれば大好きになった神化世界の面々が幸せになってくれるよう祈ります。

 

 

以下箇条書きで色々

 

・何にでも化けられるはずの笑美があの姿のままであるということが

マスター・ウルティマを倒すためによっぽどのことに手を出したんだなという感じです。

自分のものと引き換えにマスター・ウルティマの手下に目を与えたようでしたが、

バイオデストロイヤーにどうやって対抗したのかも謎なので

もっと他にも引き換えにしているのかもしれません。

味方の犠牲物量作戦だったりしたららさらに業が深いな…

女心としてはあの姿を爾朗に見られることも辛かったろうなと思います。

 

・笑美の言う友情や家族や愛情を正義の理由にすることを爾朗が恐れるのは

何かを根拠に規定することで結局「それ以外」を作ってしまう、認めなくなる

可能性があるからなのかな…

 

・人吉博士は今まで結局何を大切にしているのか掴めなくて、

超人への興味や好奇心ばかりが突出した人なのかなという感じだったのですが

ここ数回で父としての愛情も爾朗に抱いていたと分かる場面があって

ホッとしました。

久しぶりに返ってきた息子に少しでもいいもの食べさせようと

(おそらく)年越しそばにレトルトのカレー掛けちゃう常識外れの描写で

「ああこの人、研究以外は不器用すぎて愛情も分かりにくかっただけなのかも」

としんみりしたり。

それで帳消しにはならないくらいのエグいこともしてるから

やっぱりバランスおかしい人だとは思うんですけど。

 

・最後、ウルティマポリスに向かう超人たちが

同じ制服、同じ仮面になっていくのが怖かった。

団結してるようで、それぞれの顔を見えなくしていることが

それぞれの正義やあり方を塗りつぶし画一化していくようで。

多くの登場人物たちが「揺るぎないたった一つの正義」を求めてきましたが

形によってはそれは恐ろしいものなんじゃないの?と

言われているように感じました。

 

・私が今回の爾朗の行動を彼の本意でないと思っているのは

倒される直前に白田さんが何かに気付いたような表情をしていたのも大きいです。

宿るS遊星人の体が犯罪者だという暗部を抱えていても

彼の精神は一貫して驚くほど善だったじゃないですか。

一瞬躊躇したのは彼の甘さだったとは思えないんですよね。

この人も大好きなのでこれを根拠に「実はトドメ刺されてない」可能性を信じたい…