私立探偵ダーク・ジェントリー 終わりからもう一度

 Netflixで配信中の海外ドラマ「私立探偵ダーク・ジェントリー」をシーズン1最終回まで見てから振り返った感想です。癖はあるけど超面白かった!当然ながらネタバレ全開なのでまだ見てない方はご注意ください。

 あらすじはこんな感じ→

大富豪パトリック・スプリングが殺された。彼は数日前に娘リディアの捜索願を出していたところだった。事件現場のホテルの一室には食いちぎられたような遺体が散乱し、サメの噛み跡のような痕跡まで。事件の第一発見者であるベルボーイのトッドの元に私立探偵ダーク・ジェントリーと名乗る男が訪ねてくる。彼は悲劇を予見していたかのように事件前にパトリックに雇われていた。全ては繋がっているという理論に基づき調査する全体論的探偵、探偵を狙う全体論的殺し屋、事件の陰で蠢くカルト集団、事態をかき回す4人組の男たち、混迷を極めるばかりかに見えた奇妙なパーツは最後に全て繋がっていく。

 

続きからネタバレ感想

 

 ※最初から最終回の台詞に触れてますので本当にご注意ください 念のため

 

 

 シーズン1最終回、アマンダは家を出る前、ダークにわだかまりを残したままのトッドにこう言います。

「なんでダークは嘘をついた?2人であの子を救うためでしょ?
 あの子の命を救った。どんな嘘ついてたにせよ、救うことが大事だったんだ。」

この台詞はダークとリディアのことを言っていますが、トッドとアマンダにも当てはまるのではないかと思いました。トッドは確かに最低の嘘をついてました。彼がパラリビュライタスを発症したと嘘をついてなければアマンダはもっといい治療を受けられたかもしれません。しかし家の金が尽き、アマンダが発症してしまった後では「トッドは発症したけど治った」という希望がなければアマンダは救えないと思い、嘘をつき続け彼女を支援する道を選びました。「どんな嘘ついてたにせよ、救うことが大事だったんだ」です。希望的観測ですが、こう言うことで自分もトッドを許したと遠まわしに伝えたのではないかと。実際の所は分かりません。許したいけどまだできない気持ちの表れかも知れません。ただ、顔も見たくないと言っていた時からすると表情も柔らかくなっていました。心境の変化があったと思いたいです。トッドの元を去るのも縁を切るとかではなくて自立して2人とも自由になる道を選んだのではないかな。「またね」って言ってるし、その後かなりなピンチとはいえ一番にトッドに電話をかけてますしね。

 

 

 そしてリディアを救うために嘘をついたダーク。彼の能力の詳細は判明しませんでしたが、自分を助けるためには役立たず、能力のせいで奇妙なことが振りかかり、これまでずっと孤独だったことは分かりました。だったら他人を助けるために能力を使おうと、探偵という職業を職業を選んだのは彼自身の意志だったようですが、運命的な導きによって一つの事件が終わればまた別の場所へ連れて行かれるようです。この境遇からすると事件が終わっても側に居てもらえる友達という存在ができることはどれほど嬉しいことだったでしょうか。第1話の時にはトッドを事件を共に解決する「助手」と言っていたのに、いつの間にか事件と関係ない「友達」にシフトしてるあたりどんだけ浮かれたのかと。彼が自分の過去とトッドについて思うことを語る森の場面、あそこでダークは「君が認めるかは別として、友達みたいにしてくれたのも君が初。」「でも君ほど親しくなった人はいないし、君が自分を最低って言うのをやめてくれたらすごく嬉しい。」って言うんですよね。他の方も感想で触れられていましたが、いつも強引でエキセントリックな言動のダークが、トッドが認めないなら友達とは言いきらないけど、自分はそれくらい慕っているし、いい奴だと思っているよと控えめとも言えるくらいの言い方で告げるのが本当に繊細で。憧れていたけど居たことがなかった友達という存在にどう向き合えばいいのか戸惑いながらも、自分の思っていることをなんとか伝えようとする慣れてない様子にキュンとなりますね…

トンデモ展開かと思いきや全てが繋がっていく事件の緻密さのように、登場人物も個性的でとんがっていながら、ふとした瞬間に見せるナイーブさもその人の一面と無理なく感じられる手腕には驚かずにはいられません。

 

 それくらい嬉しかった友達という存在、信頼を裏切れば失ってしまうことは分かっていたはずです。それでもダークはリディアを助けるためにトッドに嘘をつきました。真実を知ったトッドが責めたように、黙っていれば友達でいてもらえるという打算も少しはあったのかもしれません。けれどやはりリディアを助けること、事件を解決することが一番だったのだと思います。なぜなら能力や運命に翻弄されながらも選び取ったのが「探偵」という職業だったから。長い間ダークを拘束していたらしい政府関係者に彼は「君は探偵なんかじゃない」と言われていました。能力によって事件の起こる場所へ引き付けられてしまうだけの存在であればそう言えるかと思います。だけどダークはそれでは嫌だと、どうしようもなく連れて行かれる場所だろうと、そこでどうするかは自分で決めたいと思い選び取った、それが事件を解決するということ、探偵という職業だったのです。

 自分が自分であるためにどうしても探偵であるということが必要なのだったと思います。だから先に触れた政府関係者がダークを昔から知っていて身を案じて無茶はするなという意味で言ったとしても「君は探偵なんかじゃない」という言葉には涙を浮かべるほど抵抗したのではないでしょうか。それを踏まえると第1話の

「絶望して、ずっと捨て鉢で決断してきたね。それはどう見ても明らかだ。自分を追い詰めてきたんだな。
でもそれはもうよせ。自分の人生を掌握するんだよ。自分の手で人生を掴めば人生は面白くなるんだ。
この僕が保証する。」

この台詞がよくある人生訓などではなく、ダークが奇妙な運命を生き延びてきて彼自身の経験と選択から掴み取ったものだと分かり、より重く感じられます。たぶん前半部分の「絶望して」という所も味わってきたんじゃないでしょうか。だから過去の自分と重なるようなトッドの心情がよく分かったのだと思われます。普段テンション高くてウザいくらいなのに、ダークお前ってやつはよー、も~~~!!

実際どう生きてきたのか分からないままに心の深い所だけ知ってしまったような、表面的なことが分からないからこそ余計響くような、絶妙な台詞選びや描き方なんですよね。

 

 自分であるために他人を助ける道を選んだ結果、その姿勢がアマンダを動かし、彼女を通して彼は友達を繋ぎとめることができました。ダークが自分で人生を選択したことへの祝福のように思え、嬉しかったです。色々あったものの、彼が救ったリディアが言うように「これが最高の結末」なんだと思います。取り返しがつかないこともあるなら、選んだ結果を受け入れ、そこから始めるしかない。

 そんなシーズン1のラストでは既に次の展開が始まっていました。しかもかなり大規模でおおごとな感じで。シーズン1で肩入れしてしまった連中にあんなこと起こったら気になってしょうがないじゃない!アメリカでは10月にシーズン2が放送開始とのことです。はよ、はよ日本にも!お願いします!