さわやかサバイバー

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GIANT KILLING 単行本第46巻感想

 第46巻で描かれるのは清水戦。試合前の達海によると「まだ1回も勝ってねえ」とのこと。あーたしかにヴィクトリーやガンナーズみたいに強敵!ってインパクトはないけど、悪い流れの時によく対戦していたような気がします。

実際にこういうことってあるんですよね。なぜか勝てないというクラブ。ETUも清水も作中では今季上位につけていますが、あまり順位に関係なく起こるのが不思議で面白いところ。強豪が下位のクラブに勝てなかったり。それが苦手意識となって払拭しようとしても無意識に動きが固くなったりして余計勝てない、という負のループにおちいることも多々あります。しかし優勝するような年はそのループを断つようなことが起きるのもまた事実。ETUがそうであるのかどうか、占う一戦となるようです。

 

続きからネタバレ感想

 

 

 そんな大事な試合、前節ヴィクトリーとの大一番を制した勢いのまま行きたいだろうと思うところですがETUは控えの選手を多く出してきました。また達海の奇策か?と思いきやそうではなく、選手全体の力を底上げしてきたからできる起用だと分かります。

たまった疲れが出てきてそのまま無理をすれば怪我にも繋がるシーズン終盤、スタメンでなくても調子がいい選手を使うというのは合理的ですが、戦い方など意志統一がされてなければ当然肝心の試合に負けてしまうことになります。

藤澤さんや亀井のモノローグからETUはそれができるだけの積み重ねをしてきたことが分かる場面にジーンとしました。たとえいつもは控えでも一番手の穴埋めではなく、正当に能力を評価してくれて必要とされてスタメンに起用されたのだと分かればそりゃ力を発揮できるってもんですよ。

初期の頃はそれこそ反発も想定に入れた策を実行し、結果で信頼を得てきたような達海が、信頼を土台とした戦い方ができるようになったんだなあと感慨深くなりました。

 

 そんな風にして伸びてきた選手の代表格といえばやっぱり椿で、初期はスタメンで出ることすら荷が重すぎると考えていたようなのに、今は日本代表という重責でさえも「感じ続けていかなければいけない大切な重さ」ととらえられている。自分に見合わないものではなく、自分のものとして受け止められるようになっている。正しく自信がそなわって来ていることの証だなと、頼もしく感じられました。あとそんな椿を見て泣きそうになってる藤澤さんも報われてよかったねえ、と(笑)

サッカーはチームスポーツなので国の代表になろうと思えば他者をはねのけるくらいの我の強さと同時に他の選手と協力していく姿勢の両方が必要な難しさがあると思うんですけど、試合中にも他の選手の日本代表への想いを考えながらプレーできる椿は本当に稀有な存在だなとあらためて感じました。そんな精神が自分の存在感を最大限に利用しつつ夏木のゴールに結びつけるという、視野の広いプレーに繋がって椿の強みになっていってるのいいなあ。

 

怪我や出場停止によるフルメンバーで戦えない事態っていうのはどうしても出てくるもので、コケないクラブっていうのはそういう時に代わりに出てきた選手が活躍できてるんですよね。それができるところは代えのきかないスター選手を抱えるより粘り強く戦える力があります。自分が抜けた後ETUが低迷から抜け出せなかったことを知ってるから達海はそういう強さを身につけてほしかったのかもしれません。たとえ自分がいなくなったとしても…

ジャイキリの締めくくり方としてそういうことになるかもと頭の片隅にはあったけどまさか今回初めてまともに台詞があったような蛯名監督に言われるとは思ってもみないじゃない!不意打ちだったよ!古い付き合いの後藤さんはなにやってんだ!(やぶへび)

でも真正面からの熱血指導だけでなく、審判を経由して試合の流れをコントロールする策士でもあったり、達海の力を認める器の大きさ持ってたりする蛯名さんいい監督だ…鎖骨折りながら「オッケー!そうだーっ!!」って、もう…!

 

残り少ないかもしれない達海とのリーグ戦、の前に日本代表のアジアカップです。椿も送りだしてくれるサポーターにようやくいいスピーチができるようになったんだね、と思ったら最後がアレ。あの場面、堀田さんとか村越さんとか真面目そうな人が「!!」ってなってるのずるいわ(笑)