さわやかサバイバー

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Prey 私を私たらしめるもの

 2017年にPS4Xbox One、 PCで発売されたゲーム「Prey」をクリアしました。とても面白かったし、それ以上に「好き」な作品でした。

ある実験に参加する中、事故が発生し収容中のエイリアンが脱走、死者と怪物だらけの宇宙ステーションを主人公は自分の声に導かれながら探索していくことになります。サバイバルという身体的冒険であると共に人格の連続性や同一性にまつわる謎を探っていく心理的冒険でもあるところが好みドンピシャでした。

 

以下、内容に触れていますのでご注意ください。

 

 

 ゲーム開始後すぐ明らかになることですが、主人公モーガンは過去3年間の記憶を失っています。このことでゲーム内の主人公も操作するプレイヤーも「見知らぬモーガン」を探っていく同じ立場になるというのがまずよかった。なぜならこのゲームは記憶が大きな鍵となるからです。

記憶喪失シチュエーション自体は昔からあり、映画などの場合、最終的に過去に何があったかは明確になることが多いです。しかしこのゲームでは事実や記録に常に疑念がつきまとい「私はどういう人間だったのか」「過去の私と今の私は同じと言えるのか」と自分自身や記憶を大きく揺さぶってきます。

 

 宇宙ステーションでは100人以上が働いていたため、最初のうちは情報収集しても「誰が何やってんだか分かんねえ!」状態が続きますが、しばらくすると徐々にステーションで何が起こっていたのかが見えてきます。集まった事実から掴める全体像、その結果のエンディングは人によっては物足りないかもしれません。映画など一方的に受け取る媒体であれば私もそうだったと思います。しかし本作は能動的に動く必要のあるゲームです。どんな情報を得たか/見落としたか、それをどう判断したか、何を行ったか/避けたか、そのためにどんな手段を用いたか、エンディングにいたる手段と感情の道筋がプレイヤーの数だけできあがるのがすばらしいと思いました。

特殊能力やアイテムの使い方がアイデア次第で非常に多岐にわたるゲームで、閉まっているドアの開け方など障害の乗り越え方が複数あったり、敵に対しても戦う以外の対処方法があったりします。メインストーリーを進めるため以外の所も含め個性が出て、それにより内容の受け取り方が変わってくるんです。

これらはゲームでしかできない体験であり、私がその媒体でしかできない体験をさせてくれる作品というものに非常に弱いのでガッチリ心掴まれました。

 

 ある者の自分への言葉と他者への行動、どちらを本性ととらえるのか、お前をだましていると指摘された者を疑うのか信じるのか。判明した事実に重きを置いて印象を改めることも、知った上でなお肩入れしてしまうこともあるでしょう。迷いや不安の中、それでも私はこれを私の中心にする、とプレイヤーが選んでいく心の動きと反映された行動が「今のモーガン」を形作っていきます。

 プレイヤーと主人公の密接な繋がりが作り上げられていくからこそ最後の選択はシンプルながらも重かったです。リフレインもまたこの作品の重要な要素のひとつですが、ここまでの道筋全ての「どう生きてきたか」「何に重きを置くのか」つまり、私を私たらしめるものは何かを再確認させられる。

他の方の感想を拝見すると多くの人がクリア後クリアした人と語りたくてしかたなくなるようです。すごく分かります。私の道筋を知ってほしい、あなたの道筋を聞かせてほしい、そんな気持ちになるゲームでした。

 

思いっきりネタバレの感想も書いてます→ 

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