GIANT KILLING 単行本第49巻感想

中国の事情と可能性、サッカーに関することを多角的に描いてきたジャイキリはこう描くのか!と興味深く読みました。

 

続きからネタバレ感想

 

 

 の前にヨルダン戦の続きから。

 城西…!言えねえ…あれほど献身的な姿を見せられたらもう「やーい優等生」とか言えねえ…

優等生って呼び方はどこかいい子ちゃんぶりを見せつけるいけすかない奴というニュアンスが含まれてると思うんですが、今回の城西は藤澤さんも言っているように黒子に徹してるんですよね。光が当たらなくてもチームのために尽力できるなんてただの超いい人じゃん聖人じゃん。

また城西は自分に自信があるタイプだと思っていたので「つきぬけられなかった」という後悔を抱いているのが意外でした。自分は光が当たるに値する人間で、だからそれにふさわしい言動をしなくてはならない、と思っているのだと。まったく違うというわけではないとは思うんですが。花森と肩を並べられるくらい光が当たる人間に「ならなければならなかった」だがそこには届かなかった、だから光が当たらなくてもできる限りの貢献をする、なんじゃないかなと。その献身を見てる人は見てるっていうのが嬉しいし、意志を汲み取った越後の活で光を目指す道がまた開かれたように描かれてたのが静かに熱かった。

 それはそれとして三雲、ゲームメーカー任されるほどに成長してるんだな…実直な感じが好きなんですけど、その印象のままに順調にステップアップしてるようで嬉しいよ。

 

 城西のゲームコントロールとブランの交代を利用したモチベーションコントロール術により後半調子を上げた日本代表はめでたくヨルダンに勝利。桐生を焚きつけるために椿は犠牲になったのだ…つ、次がんばれ!

 

 そして迎えるグループリーグ最終戦。相手は中国です。決勝トーナメントに進めることは決まっているものの、2位通過では開催国UAEが相手になる可能性が高く、不利な状況を避けるためにも首位通過を決めておきたいところです。

そんな手は抜けない試合でもブランはメンバーをガラッと変えてきました。堅実さよりもあの手この手でチームの活性化をもくろむブランっぽい。というわけで椿もスタメン出場です。そんな椿を見守る各地の人々…あっ杉江!ひさしぶり!

 

 世界の名選手や名将を迎えて実力アップを図っている中国。それが即結果につながっているかといえばそうでもないようで。

以前、岡田元日本代表監督が中国のクラブの監督されてたことがありました。その時に取材されたテレビ番組を見たかぎり、いい悪いではなく、この国の人たちはサッカーという競技に向いてないのでは…というのが私の正直な感想でした。もちろん何年も前の、いちクラブの、テレビ番組の、と限られた情報であることは理解していますが、今回ジャイキリでも描かれたような外からの人間の意見をなかなか受け入れないなどの面があることはその番組を見ても感じました。じゃあ全部無駄になるのかというとそうではない、レベルの高い外国人選手とともにプレーすることで中国の選手にも思ってもみない形で影響が現れることがある…という展開に「おおおさすがジャイキリ!」と興奮しました。

主人公の属するクラブとは方針が合わなかった監督、過激なサポーターなどを短絡的に悪役にせず、その人なりの信念ややり方があるのだと読者の視点を広げる描き方をしてきたジャイキリらしい柔軟性のある視点が今回も活かされてて。同時に「向いてないな」で思考を止めてしまった自分の硬さにも気付かされました。

きれいごとだけ並べて希望にするのではなく、課題や問題点も把握した上で中国が伸びる可能性を見出し哲学を叩き込もうと挑戦するモレッティかっこいい…あと悪びれない通訳さん?とのコンビがコミカルでよかったのでこの試合だけで消えるにはもったいないくらいでした。「ビックリですね!」「ビックリしてる場合じゃないんだよ」いいコンビだ。

 

 国の方針レベルのこと描くのって難しいと思うんですよ。下手なこと描けば批判されるだろうし。監督や選手以外にもサッカーにかかわる人たちの話題を広く取り上げ続け、決して一方的には描いてこなかったジャイキリ。その積み上げた信頼とバランス感覚があるからこそ描ける題材を委縮せず、重くしすぎず、しかし真摯に見事描いた巻だったなと、あらためて惚れなおしました。

 

 最後にスレスレな感じのブランの日本代表強化プランが明らかになって中国戦は終了。ほんとタヌキだなこの人…仲のいい窪田くんの海外志向、今回のブランの作戦って椿の海外移籍の布石なんだろうか…

 

 で、思惑通りグループリーグ1位通過果たしたのに結局開催国UAEと戦うの?(次巻予告)