さわやかサバイバー

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放課後のイケメンごはん ごはん比重多めのすこやかさ

 タイトルこれなのに、この子たち食べることにまっすぐだぞ…!親近感わくじゃない…!っていうのが第一印象でした。

ちまたには今「ごはん漫画」があふれていて、差別化を図るためにいろんな付加価値を付けたものも多いです。そんな中このタイトルだとごはんを通じてイケメンとお近づきになっちゃってドキドキ…!みたいな漫画だと思うじゃないですか。違った。晩御飯までお腹がすいて仕方ないから放課後なにか食べて帰りたい、でもおこづかいやバイト代で食べられる分は限られるから分けっこしてできるだけたくさんおいしいもの食べよう!という、どちらかといえば戦友になる展開だった。

 

 主人公の網名さんが日々おなかを鳴らしているのを聞いた隣の席のイケメン岡野君が寄り道に誘ってくれた、というなかなかの少女漫画的導入なのに、網名さんがイケメンは存在してるだけでありがたいから…という姿勢で恋愛的にどうこうなろうとしないさっぱり具合。岡野君もそんな気取らない網名さんとの寄り道に心地よさを感じて自然にふたりが仲良くなっていく様子はこちらもほんわかします。

また岡野君も食べることに真剣になりすぎてちょくちょくイケメンを逸脱してるから思わず笑ってしまう。第1話からハムスターみたいにほっぺ下膨れさせてるイケメンってなんなの。少ない予算だからメニュー選びを外したくない…!って悩みまくる気持ちも分かりすぎて、じつに親しみやすい。

やわらかくシンプルなかわいい絵柄なのにギャグのキレが鋭いギャップにもやられました。お寿司しか見えなくなってる岡野君も岡野君だがそれを「完全にお寿司・ザ・ワールド それは誰にも踏み込めない領域」とか評しちゃう網名さんいいコンビだよ。

岡野君のリクエスト優先したときに「これでよかった?」と確認してくれる岡野君の優しいところ素敵なんだけど、「私もそれ食べたかったからよかったよ~」とごく自然に返してくれる網名さんの受け答えがまたいいんですよね。こんな子と一緒にごはん食べたら楽しいだろうなってすんなり伝わってきます。

 

 予算の都合でドリンクにストロー2本差して分けっこして、お店の人に「カップルで交互に飲んでるのかわいいね~」って言われた時も「やだ…照れちゃう…」って展開になるのかなと思ったら!恥ずかしいから気兼ねなく食べるためにも今度はバイトしてひとり1個頼もう…って決意で終わるとか。他のお客さんに岡野君が注目されてるのを見ても網名さんの反応が「かっこいいでしょうそうでしょう」って満足気なだけだったりとか。いくらでも恋愛方面に進めそうなフックを外して、あくまで「おいしいごはんを心置きなく食べたい」というところの比重を多めにしてるのがこの漫画の特徴で私の好きなところでもありました。

とはいえ、岡野君はそれだけでもなくなってきたようで、網名さんの分も支払えるようにバイトを増やしたところなんかは「あらあらウフフ」と変化の予感に期待したのですが、網名さんが「自分の金で食べないと本来の味が分からなくなるんで」といさぎよさを発揮して断られてしまったり。岡野くんがんばれ。網名さんのその姿勢は好きだよ…

(ちなみにこのエピソードはコミック未収録なので公開されてるマガジンRのサイトで読もう。ページ下部にリンクがあります。)→

http://www.magazine-r.co/comics/ikemengohan/

 

ふたりのこの関係が好きなのでこのままでもいいな~でもこのすこやかさだから逆に?逆にカップルになっても?いい感じになりそうだよな~!と先を楽しみにWeb連載を追ってたところ、単行本が出ることを知り喜んだのもつかのま、巻数表記がないことに気付いてしまい…

きれいに終わっているのはせめてもの慰みですがもっとこのふたりを見ていたかった!しかし単巻で終わっているぶん、手が出しやすいとも言えるので興味があればぜひに。これがデビュー作の作者さん応援しようぜ。