さわやかサバイバー

好きな作品の感想を書いています。カテゴリー一覧は50音順で並んでいます。

91Days

91Days放送当時の感想ツイートをまとめたものです。

 

続きからどうぞ。

第1話「殺人の夜」

鏑木ひろ監督って少女漫画系続けてやった後に鬼灯の冷徹で今度は復讐譚、ってバラエティ豊かだな。重苦しいのに端々にこれからの感情の揺れ動きを予感させられて続きが気になる第1話でした「91Days

少女漫画系作品の経験が心理描写にプラスになってるのかな。復讐譚という筋はシンプルだけど、マフィア同士の争いもあって立場が異なる登場人物がたくさん出てきたのにスッと掴めた所など、すごいなあと。

シリーズ構成・脚本の岸本卓さんの手掛けられた過去作品も調べてみたらこれはますます期待できるんじゃないかと感じています。あとこの方、経歴が面白い。

 

 

第2話「いつわりの幻影」

家族を殺した憎い相手も情があり、愛する者がいて、食べて飲んで泣く人間だという描写を積み重ねていくことで深みが増し、復讐が重苦しくなっていくのがいいですね。その「相手も同じ様に考える力のある人間である」ということを思い知らされるラストが鮮やか。

マフィアっていっても好き勝手してる訳じゃなく、勢力を安定させるためにいけすかない大都市の組織の野郎と政略結婚しなきゃならなかったり、人間らしい事情や弱さも抱えていることを見せたのは視聴者、あるいは主人公のアヴィリオにも親近感と同時にある種の油断をさせる狙いがあったのかもしれません。

登場人物の中でも陽性で、感情を素直に表すヴァンノが今回前面に出ていたことも油断を助長させた気がします。それでも彼はドンの息子の懐刀なんですよね。

しかし情が通う相手の懐に入るってことは、相手のことを一方的に知れる訳ではなく、こちらのことも相手に分かるってことなんですよね。そして青息吐息であってもマフィアはマフィア。当たり前のこと、すでに提示されていたけど見え辛くなっていた事実が蘇るようなラストが素晴らしかったです。

復讐するものとされるものという、断絶の上に築かれていく交流がどう転んでいくのか、楽しみです。

 

 

第3話「足音の行先」

私、前回ラストで消えた死体はヴァンノだと思ってて、アヴィリオ目的ばれた、大ピンチじゃん!って思ってたけど違いました恥ずかし!死体が消えた真相、そこから転がっていく物語が予想外で目が離せません。面白いなー。

小悪党の小狡い小金稼ぎで振り回されるくらい、対立するマフィア同士も悪徳連邦捜査官も土台が危ういんですね。胸糞悪い奴らばかりであれば破滅して当然と思えるのですが、悪党でも苦労しながら綱渡りをするように生き延びていること、暖かな情も確かに存在すること、破滅の引き金を引くのが主人公かもしれないことで情緒性と後ろ暗い期待感が生まれているなあと。

 

もともと外部の人間のロナルドに肩入れしつつも、手放せなかった兄弟への愛情をフラテが示すその横で、「兄弟」と呼んだアヴィリオに対してコルテオが疑惑を持つ描写が入るのがゾクゾクしました。

復讐するものとされるものの典型的なイメージを逆転させるような場面に見えて、アヴィリオにも「本当に冷酷な復讐鬼になっているのか?」と疑問を持たせるような場面もあります。「復讐のため友を殺す」って言ってる作品なので、友となれるくらいの情があるってことなんでしょうね。この揺らぎが魅力。

 

弔いの言葉を口にするヴァンノの場面で始まり、そのヴァンノの葬儀の場面で終わる。彼の死を悼み泣き崩れるネロの姿が映し出されることで、死に彩られつつ、その冷たさだけではなく人の情の暖かさも描いていくこの作品の方向性が見られる美しい構成だと感じました。

二人の行く先には共通の敵が立ち塞がってくるようで、普通なら乗り越えることで友情が深まるフラグ、なんですが復讐劇である以上それでは終わらないはずで、ネロがアヴィリオを使える奴だとしつつ油断してない様子からもどうなっていくのか楽しみです。またこちらの予想も裏切ってほしい。

 

 

第4話「敗けて勝って、その後で」

予想外にコメディタッチな回。前回のラスト、困難を乗り越えた二人には普通絆が築かれるもんだけど、この作品だからなあというようなことを言っていたら普通にポンコツ二人連れみたいな感じになってた。でもきっとこれも後で落とすためのトスなんでしょおお!

 

パンケーキを味わうネロに対して、かっこむように食べるアヴィリオの余裕の無さ、反面シロップひたひたにする幼さ、などが見える対照的な食事シーンがよかったです。しかし二人は同じものを食べる、いわゆる同じ釜の飯を食べる仲間にもなったということでもあり。

そんなネロも父親には急ぐな、葉巻を味わう余裕を持て、と言われているのが面白い。結果的にアヴィリオの余裕の無さも際立ってくるようで。

アニメで食事シーンを描くのはとても手間がかかることなんだそうです。毎回、それも違った形で入れてあるってことはやはりそこに意味を込めてる、ってことなんでしょうね。個人的にも生身の存在感を感じることができるので食事シーンは好きです。

ヴィンセントが建てている劇場、これの完成が3ヶ月後ということでタイトルの「91日間」のクライマックスもここにかかってくるのだと思いますが、街に不釣り合いなくらい豪華な劇場を建てるということはかつて成り上がる過程を急ぎ、以前のドンとアヴィリオの家族を始末した後悔、つまり自分が「急いで」いたことに対する後悔が反映されているのではないかと思います。文化的なものに触れ、美味いものを味わい、人生を楽しむ。病に侵され死を間近にした時、劇場を建てることでそれらをおろそかにし、他人を踏みにじってきたことを、幾分かでも取り返そうとしているのではないかと。

今のアヴィリオにそういう余裕がないことをパンケーキの場面で描くと共に、ジャグリング関連で全く失われた訳ではないことを描く。でもその後の雑貨店の場面でジャグリングボールではなく人を傷つけるナイフを買ってしまう流れが悲しい。

んだけども、結果的にはそのナイフでネロと共に窮地を切り抜け彼の命を救う訳で。殺意と友情が同時に存在し絡み合っていく流れが自然ですごい。

 

 

第5話「血は血を呼ぶ」

コルテオはファミリーの仕事への関わりを深め、フラテはロナルドに取り込まれる。変わっていく互いの家族からはみ出し始めたアヴィリオとネロが否応なく新しいファミリーを形成していくのが上手いと同時に嫌らしいなあ、でも上手いなあ。

ネロは「アヴィリオは信じられる」って言っちゃってるし、アヴィリオもネロが仲間を見捨てないという信頼ありきで行動してるんですよね。二人旅でばっちり絆生まれてるじゃん…どうすんのよ…

復讐が自分を生かしているというアヴィリオの言葉には、他に生きる目的がない不安定さがあります。裏を返せば、いつまでも復讐が果たせなければ彼は目的を失わずにすみます。ネロと友情を育み懐に入ること、今彼を殺さずに復讐を長引かせている後ろめたさを「復讐が生きる目的」という言い訳で逃げてるようにも見えて、あの言葉にはもう一段深いアヴィリオの不安定さがあるように見えました。どう考えたって長引けば長引くほど自分が苦しむ道だぞ…

 

ファミリーからのはみ出し者という点ではファンゴも同様なんですね。はみ出し者同士が集まって新しい状況が生まれていくように見えても、どこにも行き場のない閉ざされた街の中では彼らの行く末も明るいとは思えなくて暗い期待感がつのります。

しかしティグレはやっと顔が治ったと思ったら…怪我の絶えないやつだよ…あわれ…

 

アヴィリオ役の近藤隆さん、たぶん一番最初に聞いたのが「アグリー・ベティ」のテンション高いマーク役だったので、記憶とのギャップに最初は戸惑っていたんですが、最近ようやく慣れてきました。91Daysは他にも海外ドラマや洋画の吹替えをよくされている渋めで落ち着いた良い声の声優さんが勢ぞろいで耳が幸せです。

 

 

第6話「豚を殺しに」

食事シーンに様々な意味を持たせてきた91Days、第6話はそれが最高にグロテスクな形で発揮されました。懐に入った証として、あるいは懐に入る手段としての食事。それを口にし糧とする行為はあるいは喰われた相手と同化していくことかもしれないと思わされました。

ラザニア、酒と今回特に同じものをたくさんの人間が口にしています。血を流し焼かれて喰われる鶏は誰なのか、誰が喰われる側で喰う側なのか、混沌としてきた状況が反映されていたようでした。

全てを差し出すと言ってネロはテーブルに着き、はかりごとの結果オルコは全てをファンゴに奪われました。もはや何かことが起これば全てを懸けるしかない、のっぴきならない状況に差し掛かってるのかもしれません。

アヴィリオが最後濁した言葉の意味は、ファンゴのターゲットがヴァネッティに移り、ネロたちもそれに加わるかどうかまた選択を迫られるということなのでしょうか。ヴァンノが用意してくれたヴァネッティの一員としての暖かな食卓は遠くになってしまったな…

 

 

第7話「あわれな役者」

コルテオが危ぶむくらいにネロとの絆ができてきて、アヴィリオこれからどうすんの、ためらったりすんじゃないのと思っていたら、ガンガン人は死ぬし1話の中で家族の絆を断ち切っていくし、ああ復讐劇でしたねそうでしたという衝撃の第7話でした。

そもそも前提がそうであったはずなんですが、家族を思うが故にそれを奪った相手を家族を利用して追い詰めていくということの、苦さ重苦しさ先の無さをあらためて思い知らされました。弟に会わせてやるよっていうのは、ごまかすと同時にお前も同じ場所に送ってやるよってことだよね。

 

家族だから争わず和解してほしい、家族だから認められなくて苦しい、家族だからまだ残る情に賭けてみたい。家族でなければ諦められたかもしれない、冷静になれたかもしれない所にアヴィリオはつけこんでいきましたが、最後宣言したように、これからアヴィリオはその家族になろうと言う訳です。それはアヴィリオ自身も気付かないうちに外部の人間だから保てていた客観性を狂わせることにはならないのでしょうか。今回やたら手際よくことを進めて行ったけど、その先にはまた不安定な道が待ち受けているように見えて、ホントどこまで行っても泥沼だな…

ただ、今回あまりにもアヴィリオに都合のいいように進んだことにもちょっと疑念が浮かびます。手紙を出した人物、謎の4人目の陰の手引きがあったんじゃないかという気が。

 

「ファミリー」はガラッシアに奪われてもいいから家族が元のようになってほしいというフィオの思いすら利用されて、一番の願いが潰されていくのがきつかった…暖かい家族の姿を象徴するようなオニオンスープの場面を踏まえてあれだよ。上手いからエグイよ。冷めて元の温度は失われても飲み込むネロの懐の大きさと、撥ねつけてしまうフラテの対比も際立っていた場面でした。

 

このままテンションとキャラの濃さだけで突っ走っていくかと思ってたファンゴの、突然の過去チラは今後なにかさらに意味を持ってくるんだろうか。半分人を外れたような彼もまたファミリーからはみ出したものであり、家族への何らかの思いがあるというのが、うかがえたようなよく分からなかったような。

 

 

第8話「帳の陰」

 最初からすでに戻れない道であることは知っていたはずなのに、回を追うごとにまだ底があったと思い知らされる展開が続いてます。第8話は行き場の無い者が飲み込まれた先に広がる暗闇の帳の奥。いやキッツイすわ。先が読めない面白さに満ちてるだけに衝撃キッツイすわ。

家族であるということと酒のレシピ、自分だけの特権、拠り所であったものが奪われていく話だったんですね。前回フラテが辿ったように、己の力で道を選べない人間は生き残れない世界観をこの作品は持っています。それにしたって彼がああなるのは見てて辛かった… 

今まで己を守ってくれた酒に飲まれてしまうことによって、最後の救いの糸を持っていたかもしれない人間に見切りをつけられるのがまたなあ… 

 チェロットの情報が正しければ禁酒法自体が近々廃止されるそうで、酒によって利益を上げてきたマフィアの特権も無くなることになります。世代が変わっていく描写もありましたが、マフィアの形もまた変わっていくのかもしれません。

 

情報と言えば今回の情報は全て一人からもたらされていてもおかしくないのですが、提供者の姿が見えないし明言されてないので、実は複数だったということもありえるのかなと思います。相変わらず第4の人物の影は見えてこないしねえ。

 

今まで食事を巡る描写で様々なものが表現されてきましたが、今回は煙草の場面が印象に残りました。共に煙をくゆらすアヴィリオとネロ、慣れたようで結局上手く火を付けられない手つき、内部犯を探す場面のバラバラになった吸殻など。 

 同じく口を付けるものではあるが、糧になる食事と違い、生産的でないとも言えるアイテムに変わっているのがなんとも。

 

 予想以上に早く外部の敵がいなくなり、いつまでも本丸に攻め込まないアヴィリオの言い訳もきかない状況になってきました。なのにあと4話あるって長いと言えば長い。ホントに今回の展開びっくりしたし今後どうなるんだ…

 

 

第9話「黒ずんだ野望」

№2がため込んだ鬱屈というだけでも理由には足るのですが、他にも今回の「ネロのことになると頭に血が上る」証言や、ネロとフラテ・フィオの髪の色が違うことから兄弟の母親が違い、ネロの母親が彼の想い人だったということもあるのかなと考えたりしてます。

 自分が成り上がりたいとか、ネロを後ろから操ろうとしたとかも考えたんですが、昔気質で忠義に厚い今までの印象も全て嘘だったとは思えなくて。ネロは簡単に操れるタマではないし…でもあの人を信頼する性格とか、父親へのコンプレックスを知っていたらできないことではないのか…

あ、叔父貴って役職的な意味だけでなくて、ネロの母親がガンゾの姉妹で血縁的に叔父ってことでもある?ガラッシア(とすり寄るフラテ)に傾く傾向を危ぶみ、自分の血縁であるネロをドンに据えるための計画だったってことなんでしょうか。とすればまた「家族」と「ファミリー」の因縁になりますね。

あーしまった電話でネロ殺させようとしてたこと頭から抜けてた。アヴィリオにネロは殺せないと踏んでなければ全然意味ない推理だ。じゃあやっぱり単純に自分がドンになりたかったからなのかな…うーん…

 

ともかくも次回見てみないとですね…決められた時間を過ぎて会いに行ってたけど、その前にチェロットと話してたし、コルテオ救う手立てを何かしらした上でだと思いたい。あと自分のことがばれるという他にも、コルテオの身を案じてそうしたのだと思いたい。回想シーンからたぶんそうだと思うんだけど。

 

ネロがジャグリングしていた石が手から落ちて、蹴飛ばしていくのはどんな意味があるんだろう。かつてそれを見せていたフラテを始末できるようになったネロの変化を表してるのだろうか。過去に仕留め損ねたガキも今なら始末できるってことなんだろうか。

ここにきてネロが「誰も撃てなった」と告白するのが嫌らしいですよ…!ネロ自身は誰も手に掛けてないってことで、またアヴィリオの復讐心揺るがせてくるってもう。復讐自体は止めないだろうけど葛藤が深まりそうでえげつないわあ…好き…

 

 

「第10話 誠実の証」

ティグレいいやつだなー!あれでよくマフィアやってるよなー!今回特にほっぺふくらましてばかりでリスかよって感じで癒されたよなー!(本編から目を逸らしつつ)

今まで演出とか小道具の使い方に絡めて感想書いたりしてましたが、今回はもう、無理です…そこまで目を配って見る余裕が無い…

ああでもこれだけ、第1話でも描かれてた、アヴィリオが掏って中の金を抜いた後、投げ捨てられてた財布の山、あれはアヴィリオの内面も表していたんですね。

 

これまで積み重ねられてきた憎しみや恨みがあるきっかけで爆発し、突発的に相手を殺してしまうことで物語が動くこともありました。それをどこかで期待する下世話な興味もありました。しかしそこを外し見せられた道筋は美しく、余計にその先の闇が辛い。

 

これまで基本的にロウレスの街の中だけで物語は進行し、シカゴのガラッシアも姿を見せない程でした。それが閉塞感を増していると思ったので、今回街の外にすんなり出たのが意外でした。でも結局は復讐の行われるあの街に戻るしかなかったことが、さらに行き場の無さを感じさせました。

シカゴまで行ったけど、描かれたのは第1話の、復讐の始まりの地点だったんだもんな…

第4話のネロと逃避行をしていた時、あの時も街を出たけど、アヴィリオは街を出ると復讐者ではない表情ができているような気がします。それでも今の彼を生かしている「復讐者」としての面が彼をロウレスに引き戻してしまう。

第4話の時とは違い、今回は船で河を渡り、橋のかかる川を越え、酒を川に流すといった水に関わる場面が目につきました。展開も踏まえると三途の川のような、いよいよ死の淵へと足を踏み入れてしまったような印象が拭えません。

 

91Daysは復讐譚ではあるけど、憎しみや恨み一辺倒でない、その裏側にあったり、寄り添っていたり、絡み離れることのできない友情や愛情の暖かさ美しさを描くことでより悲劇が際立つ所が秀逸で、また好きな所なんですが、今まででそのパンチが一番重い第10話でした。楽しみでもあり怖いのが、あと2話あるってことですよ。これを越える話がまだ来るのかよ!辛えよ!怖いよ!楽しみだよ!そんであと2話しかないの寂しいよ!

 

91Days少し追加。今まで「巻き込まれたかわいそうな僕」であったのが、自分も人を殺して落ちたことでアヴィリオと対等になれたのかと思うと悲しい。それも「お前のせいでこうなった」ととらえていればもっとグズグズになったと思うけど、自分でその先を選んだ彼の前には道が開けていく。

マフィアとしての自分を確立させていた酒を捨てることで、酔いが醒める様に周りも、自分が大事にしていたものも見えてくる。バルベロにああいう台詞が言えたのは自分が同じ様な立場であるからだろうけど、それを認識できるくらい醒めていたのだろうと。

フラテのことを思い返すとやはりこの作品は自分で道を選んだものとそうでないものの描き方がはっきり分かれているように感じます。その道の先がどうなったかには関わらず。

 

 

第11話「すべてがむだごと」

ガンゾの叔父貴、特に複雑な想いを持つに至った過去とか無かったっすね!色々妄想したけど。成り上がりたいだけだった。それにふさわしい足のすくわれ方だったと思います。

思い返せば物語を貫く「手紙の差出人は誰なのか」「4人目は誰なのか」という謎以外の「実はこうだったんだよ!」「何だってー!」という展開は少なく、シンプルな筋だったんだと感じました。それでも妄想したくなったりするほど人間ドラマに惹きつけられ、見続けさせる魅力があります91Days

 

ネロもなあ、本当にアヴィリオのこと疑ってなかったんだな…いやそうでなきゃ話がここまで進まないんだけど、あらためて人が良いんだなって…それでもやるときゃやる奴だけど、ここから彼は真実に、アヴィリオにどう向き合うんだろう。

 手を血に染め、友や家族を犠牲にまでして守ろうとしてきたファミリーは、まさにその行為が呼び込んだ復讐者によって決壊の時を迎えました。吹き荒れる暴力の嵐は恐ろしいというよりヴィンセントの表情が語るようにただ虚しい。

アヴィリオの復讐とは自分の手で殺すことではなく、自分と同じように「他者に全てを奪われる」という目に遭わせることだったのでしょうか。それがまたひとつ叶った瞬間だというのにアヴィリオあんなだし、カタルシスの欠片もない…そうなるしかないんだけど… 

ぼやっと見てるので1回目は気付かなかったんですけど、ガンゾとバーで話してる時点でアヴィリオもう幻覚見てるんですね。

何度か書いてますが、復讐譚だけど憎しみだけでなく、愛情や友情の暖かさも描かれていることが91Daysの魅力なんですが、兄弟と呼んだ友を失ったことで、自分を生かしているとまで言った復讐さえも意味を失ってきているのが上手いながらも辛い。

アヴィリオが憎しみだけで生きていけるような奴じゃないことを、やり方はとてつもなく不器用だけど愛情や友情がその芯にある奴だということを、ここに来て!このどん詰まりで!クライマックスで!視聴者にまざまざと見せつける製作者のドSっぷりたるや。

 

とうとう焦点はアヴィリオとネロ二人に絞られた、と思いきやまだガラッシアが噛んで来る様子?どうなるか予想は尽きませんが、破滅は避けられないだろう最終回、ここまで来たからには最後まで見守りたいと思います。

「アヴィリオに生きがいを与える」と言ったネロの言葉が皮肉な形で実現して、今の抜け殻のアヴィリオにもう一度復讐という命の火を灯すことになる、のかなあ。

 

 

第12話(最終回)「汚れた空をかいくぐり」

なんでこんなものを見せる!なんでこんなものをみせるんだと若干えづきながら見てました91Days最終回。相反する感情、関係のあわいに生まれるもの、その描き方が優れていた本作品、行き着く所で振るわれる刃の鋭さの切れ味はとてつもなかったです。すごいものを見た…

シチュエーションがあの回のリフレインだとか、本当に視聴者の心の抉り方分かってますよねえげつない!だけど居場所を無くした二人がそうなるのも分かるんだえげつない!

今回どこか遠景の場面が多かったドンパチは前回すでにクライマックスを迎えているということだったのかもしれません。心情のクライマックスとしての最終回、空虚な心や一瞬激しくぶつかり合う激情、その後の熾火のような穏やかなひととき、声優さんの演技が素晴らしく引き込まれました。

そしてチェロットは癒し…

 

二人とも全てを無くし、同じ所に落ちた今、寄り添いあえる奇妙な関係になり、相手に暖かい言葉が告げられた訳ですけど、「だからこそ」その原点を清算しなければならないというもよく分かって、切ない…

雑誌に載っていた夢の舞台に近い場所、二人とも見たことのない海、というロマンチックな場所で描かれるのが因果の果て、渦巻き絡まった感情の末路というグッチャグチャの極地なんだけど、確かに美しくも感じられるんです。ここまで見てきたら納得するしかない積み重ねがされてるんですよね。

復讐譚なんだから客観的に見れば「すべてがむだごと」なのは分かっているんです。それでもその先の「汚れた空をかいくぐり」雲間に差し込む光のような、かすかにあった輝きを視聴者に残すんだ、そう見せ切るんだと言うような作品でした91Days

なんか上手いことまとめた風になってるけど、全然そうじゃないし、よく分かんない日本語言ってるのは理解してますから…とにかくすごかったんだ…圧倒され続けてるんだ…