さわやかサバイバー

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ハル

アニメーション映画「ハル」を観てきました。

観終わった時は「うん、よかった」ぐらいだったのに、

その後色んな場面を思い返しながら歩いていると

何度も涙が出そうになって困った、そういう映画でした。

 

私がこの映画を観ようと思ったきっかけは

前から脚本の木皿泉さん(「すいか」Q10」等の脚本を手掛けた方)の

ファンだったからなんですが、すっかりそういう「昔からの木皿泉ファン視点」で観に行ったら

他のお客さんが若い方ばっかりで驚きました。

そうよね、「青春」「アニメーション映画」だもんね…

本編が始まる前の他の映画の予告がアニメばっかりだったのを見て初めて

むしろ自分の方がメインターゲット層とずれてるのだなと気付いたのでした。

 

隣の席が男子二人連れだったので、何に惹かれて何を思って

男子二人連れの休日に「ハル」を選んだのかちょっと気になりました。

TVCMもやってるし、制作スタジオが今ブイブイ言わせてる「進撃の巨人」のとこだから

とかなのかしら。あー、観客みんなにアンケートしてみたい。

そんであわよくば木皿泉ファンがいたらお友達になってもらいたい。

別に脚本がどうとか気にせずに見に来た若い人の感想とかも聞いてみたいなあ。

 

 

ケンカ別れしたままの恋人を飛行機事故で失ってしまい、

そのショックから閉じこもってしまった「くるみ」。

彼女に生きる事を思い出させるため、くるみの祖父のもとで働いていたロボット

「Q1(キューイチ)」は、くるみの恋人「ハル」の姿となって彼女の所へ向かう、

というストーリーです。

 

近未来の京都を舞台としており、町屋!鴨川!錦市場!という

京都のステキビュースポットがこれでもかっこれでもかという勢いで

超絶きれいな映像で見せられる訳で、こいつは卑怯、卑怯ですよ…

これだけで作品の評価数段アップしますよそして京都行きたい。

 

物語の冒頭、まだ人の姿になる前の素のロボット姿のQ1が出て来るんですが

これがまた、かわいい…(ロボ好き)

あの「きょとん」とした顔の造形がたまらなくかわいい。

ロボ姿の時、Q1は喋る事はありませんでしたが、悲しそうな、切なそうな表情に

見えた時もあって、どれだけのことをあの時は感じていたのかなと思います。

 

以降、内容についてもう少し踏み込んで触れますので続きからどうぞ。

 

 

ただ献身的な美しい愛の姿、というだけではないお話なのがよかったと思います。

 

ロボハルはくるみを理解したい、何かしてあげたい、と思うけれども、

ロボであろうと人であろうと、相手の全部を分かってあげられる事は出来ない、

という断絶がある上で、それでも相手に何かをしてあげる事ができる、

というお話なのがよかった。

 

飛行機事故のような突然の悲劇や、ハルの過去のような

どうにもならない暗いものが、この暮らしのすぐそこにあるということを描き、

あるけれども、それだけではない、完全に理解しあえずとも

何かをしてあげたいと思う人の行動によって救われる事もあるんだと。

そして救われるのは思ってもみない人であったり…

 

さらにネタバレ的なことにも触れますが、最後まで見て振りかえると

そこまでの事がまた深まるのが凄かったです。

あの時のあのまなざしの意味、あの言葉は誰に向けてのものだったのか…

あーああー(思い出浸り)

 

この辺に関しては観た人に訊いてみたい事とか話したい事とか

色々あるんですが、完全にネタバレになるので…

 

木皿泉ファンとしては焼きたてのパンの幸せの匂いとか、

「明日、あります」の看板とかニヤリでしたよね?

あ、ルービックキューブもか。

あとQ10の方がQ1より後の世代のロボットらしいのですが、

Q1の方が日本語達者でしたね(笑)

というかQ1は感情表現というか、色気というか、や、やりおるで…(ゴクリ)

 

この人だけピックアップするのは偏り過ぎですが、

リョウのある場面の泣き方が本当に子供のようで、

そこでは顔は画面に出てないのに、その場面で彼の事がより分かった感じもしたので

やけに印象に残っています。

 

木皿さんが書かれたノベライズ本も買ってきました。

映画とほぼ同じ内容ですが、ハルがその時どう感じたかなどが細かく分かります。

ラスト近くの盛り上がりは声や音楽のおかげで映画の方がよかったなあと

思いますし、まあつまり両方買って観ておけば問題ないですよ!