さわやかサバイバー

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少年ハリウッド 第5話メモ

一斉無料配信中に録画残してなかった最初の方の回の

自分用メモ残しとこうという記事です。

 

あくまで自分用メモなので断片的ですし、

第10話まで視聴してから振り返っているので思いっきりネタバレです。ご了承ください。

 

(12/14 小説版、BDブックレット読了後の追記あり

 

 

第5話「エアボーイズ」

 

練習してきた舞台がいよいよ披露される回。

舞台見たことあると、「そういう中央に出てきて台詞言う動きするする!」

「そういう強引な展開あるある!」

と思う所があちこちに出てくるので、ホント丁寧に研究もして作られてると感じます。

 

劇中劇だけど本人と重ねてある点がたくさん出てきます。

 

シュン

なりたいものの近くにいるが、今は不本意な仕事をしている

「夢のすぐそばにいるのに、叶わない方が酷だろ」

 

トミー

「みんなそれぞれ叶えたい夢があって この飛行機に乗ってらっしゃるんだなあって」

「僕たちだって叶わなかった夢を抱えて…」

第3話とのつながりから?

 

マッキー

夢が叶った瞬間について。この時点のマッキーとは重ならないように思うんだけど

意味深な長台詞で今後(第11話以降)に関わってくるのかなあと。

夢が叶った瞬間はただそこにいると言う感じ。

訓練時代の方が夢が見られた、夢の側にいる実感があった。

「夢なんてさ、きっかけはしょうもなくても、だんだん叶えなきゃって重くなるものなんだよな」

「意地なのか夢なのか分かんなくなってくるものが夢なのかもな」

 

「俺らだっていつかは地上に帰るんだ」これはアイドル生活のことっぽい。

 

キラは前回の脚本変更から台詞が少ない役として演じている。

EDでそれぞれの練習風景が流れるなかで身体表現の本読んでるのが

プロ意識の高いキラらしくていいなあ。

第4話以降は楽しんでやれてるようになってるといい。

「一生、操縦ができなくでもいい、キャビンアテンダントでもいい

 空にいられれば、それでいい!」

第8話の合宿の回で言っていたように

演じる場に居たいというキラのことを表しているんだろうか。

 

カケル

本当の意味での夢が叶わないことをみんな知っている。

「でも、きっとそれでいいんだよ。

 目の前に起こった事実が素敵だろって、声上げたくなった瞬間

 それが、本当の夢になるのかもな」

「夢は、上書き出来るんだよ

 上書きしながら、叶えていけるのかもしれない」

永遠にアイドルは続けられない、だけど、誰かに託したり

ファンの受け取った喜びが広がっていく事で、それは叶えられていくのかもしれない。

これまでの話で描かれてきたもの、彼らがこれからそうしていくのかもという

これまでとこれからが集約されてるような台詞。

 

EDに入って、緞帳が上がって頭下げてるみんなが出てきて、

カケルがパッっと顔上げる瞬間がワシ好きでなあ…

この回のED曲もかなりお気に入り。

 

 

 

小説版、BDブックレット読了後追記(よりネタバレです):

 

 

第5話まるまる全部を使って描かれる劇中劇「エアボーイズ」では

「夢が叶うこととはどういうことか」が描かれます。

しかしこの時点で、夢を持つことと、その後ついて視聴者に印象を残しているのは

演じた新生メンバーではなく、初代たちの過去と現在の姿です。

 

新生メンバーは夢を叶えようとするスタート地点にすら辿り着いてない状況です。

少年ハリウッドはアイドルを目指す少年たちの話ですが

トミー以外、彼らはそもそもアイドルになることが夢だった訳ではないようです。

はっきりとスカウトだった描写があるのはカケルだけですが

普段の様子からも他のメンバーから「アイドルになりたいんだっ!」という感じは

見受けられません。アイドルものなのに。

第1期はそんな彼らがアイドルになろうという夢を抱き始め、

自覚するその過程でもあります。

その中でも第5話という、メンバーの担当回が一通り終わってもいない時点で

彼らの将来を暗示するような舞台回をするというのはかなり挑戦的な試みだと思いますが、

その自覚のないまま、よく分かっていないままに自分達が内包するものを演じるという

危うさというか、隙間がかえって魅力になっているのかもと思いました。

BD第1巻のブックレットで橋口いくよさんが書かれている

「アイドルは歌詞を理解してないまま歌った方が素敵な悲哀が出る時がある」

っていうのがこういうことなのかなと。

 

夢を叶えるとは自分の中にあるそれを外に出し、現実の中で形にしていく事です。

困難や迷いや恐れを越えたり、イメージと違っている所をすり合わせたり、

過去にそれを成してきた初代メンバーの方が

第5話の時点では「夢を叶えること」という面で視聴者に強い印象を残しています。

叶えようとしてきたり、叶わなかったり、

叶わなかった夢を別の形で成そうとしていたり。

自分はこれだけのことをやってきたという実感や、これは出来なかったという後悔など、

過去を背負って、ひとつの夢が終わった後の現実を生きる初代メンバーの姿や言葉は

経験や年齢を重ねた人の方により深く刺さるのではないかと思います。

 

劇中のマッキーの台詞にもあるように、この作品は夢をただ実現すべき素晴らしいものとして

描いてはいません。

どうしても叶わない夢はある、夢を抱き続けると言うと言葉は美しいけれど、

叶わない現実に逆らい続けて夢にしがみつくことは

自分をも変容させてしまうかもしれないことも小説版の方では描かれています。

それでも夢を抱くことには意味があるのか。

それが終盤のカケルの長台詞に集約されています。

ずっと仲間達と少年ハリウッドを続けたいという夢が叶わなかった初代メンバーたちの中で

そう思えた過去が今も光となり支えとなっていることにもそれは表れています。

本当の意味で叶わなくても、誰かに託すことになっても、

夢を抱いたことこそが、今の自分を支え続けてくれる。

「夢とキラキラさえあれば生きていける」という言葉の意味は一見脳内お花畑か、と思わせて

限りがある現実を生きていくための精神的支柱のことを言っているんですね。

 

「どんな道も、あなたが正しかったと思った瞬間 その後ろの道も全部正しいものに変わる」

とは第2話のシャチョウの言葉ですが、BDのブックレットの中でも黒柳監督が

本人にとってはいい思い出ではなくても、今を肯定できればそれは美しいものだと思う

と書かれてます。

叶っても叶わなくても、夢を抱いてそれを実現させようとすることは

過去と今のあなたを照らしてくれる光になるんだと、

そういうメッセージが込められてると捉えるのはこじつけでしょうか。

 

そして本当のことでなくても、その輝きを光として受け取ったのなら、

その人の支えとなり力となるという意味では

アイドルというものの存在とも共通してるのかもしれない、とも思いました。