さわやかサバイバー

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GIANT KILLING 単行本第45巻感想

東京ダービー、とうとう決着です!

 

続きからネタバレ感想

  

  結果は完全勝利とはいかず、少しの苦さと希望をもたらすものとなりました。現実に近いサッカーを描くジャイキリならこういう形になるのかなと思っていた所、達海の言葉が「その先」を見せてくれました。そうだ、フィクションだからきれいな決着を望んでしまうけど本来選手やクラブはこれからも続いてくのだし、それに継承や歴史を作っていくことをいつも描いていたじゃないかと気付かされる思いでした。

 

 まずは振り返って試合中の所から。

一旦は1-3と引き離されたものの追い付き、しかし奮闘の結果疲れが見えているETUの選手達の様子を気付いていながらも達海は様子を見ることにしました。交代はしなくてもいけると踏んだ達海の判断を選手も感じ取り粘ります。

特に椿は前巻ラストで意気込みを見せていた通り、攻撃に守備にと大活躍です。口に出さないものの持田が素直に認めるくらい。ここのモノローグ、前巻で成田さんが持田がトップチームに上がってきて打ちのめされた時のことを語る台詞とよく似てるんですよね…

そんな椿の言葉に触発されこの試合と自分のプレーを振り返る持田。持田の花森に対する心境がここまで描かれるの初めてなのでは。彼の我が強くて怖いくらいに結果を求める性格は元々の部分が大半だと思いますが、それでも求める場所へ先に行った友人といつまでも並び立つことができない歯がゆさがそれに拍車をかけていたのかもなあ…

代表にこだわる理由がまたひとつ明かされ、平泉監督も持田の代表入りを願い、試合を決定づけるような場面が訪れ、彼が上りつめる舞台が整っていくにつれ、もうひとつの展開が頭をよぎります。

 はたして再び悲劇が彼を襲います。この膝を痛める場面がリアルですよね…実際の試合でも着地の仕方がおかしかったり見た目には地味なアクシデントでも重傷になったりすることあるんですよね…

 持田退場後、彼をエースと認めるからこそ勝たなければならないとETUもヴィクトリーも最後のボルテージを上げる中、もう決めるのはこの人でなければならないだろうって感じで椿が決めてくれました。#444最後のページが「ETUの7番を継ぐ者」として象徴になる姿で本当にかっこいい…!

 

フィクションとして盛り上げるなら椿が持田を完全に上回る力を見せ勝利するとか、持田を選手として終わるが試合に満足して去る悲劇のヒーローみたいにすることもできたし、その方がカタルシスも得られたと思います。リアル寄りのジャイキリでもここまで因縁積み重ねたらそうしてもいいような気がしていました。

だけど結局持田を抑えきることはできず、印象としては勝ち逃げされたような形になり、持田自身も一旦本気で選手を辞める決心をするも諦めきれない気持ちを再確認し、再出発するために今回はピッチを去ることにしました。

ETUも持田もどちらかを下げないためでもあったのかなと考えていたら達海が

「どこかスッキリしないままの関係がこの先もずっと続いていけばいいんじゃねえの?」

「ダービーってのはそういうもんだろ」

と。

 そうか、読者が満足して終わるドラマではなくて、ETUもヴィクトリーもそれを囲む人たちも含めたその先を見せてくれたのだと感じました。

 

持田は達海と重ねられることも多かった訳ですが、ならなおさら絶望してだろうと満足してだろうとサッカーから離れるようなことにはならなかったんだろうなと今なら思います。もし持田が選手を辞めていたら達海の過去の傷も深まっていたような気がします。選手生命を断たれた、クラブがガタガタになった責任感じて半ば放浪してた、色んな最悪に近づいた人たちが再生しその先へ進む作品でもあるんですもんね。

続いていくと同時に時代は流れ、継承もされていく。クラブの歴史を塗り替えるような存在として椿は達海を継承しました。コータがその先を受け継ぐかも?みたいなかわい場面もあったけどコータふらふらしてるからどうかな(笑)達海が選手を諦めなければならなかったのに対し、持田はまだ可能性があるという感じで描かれてたのも時の流れの変化を感じる所でした。

 

ただねー、前も書いたけど村越さんは一矢報いてほしかったんですよねー!でもダービーに勝てたことで予想以上に解放されてたのでもういいです(笑)あんな風になるんだね…

 

 

実際にひとつのクラブを応援してると日本代表には複雑な感情持つこともあるんですがジャイキリでの描き方は代表へのモチベーションや代表での経験がクラブでのプレーも活性化させたり理想的でいいですよね。今回の結果を受けて椿がまた代表でどう躍動するのか楽しみです。

選ばれるよね?