さわやかサバイバー

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灼熱カバディ 単行本第9巻感想

twitterに上げた灼熱カバディの感想をまとめたものです。

  

続きから第9巻ネタバレ感想

 

第76話

 突出した才能があるからこそチーム競技では浮いてしまい足を引っ張りかねない、という状況はサッカー時代を思い起こさせてキツいですね…そこに連携の喜びを知った時と同じく歯車のイメージ重ねてくるとか!上手いけどキツさ倍増っすよ!初めて誰かと噛み合う=連携できる喜びのイメージとして描かれてた歯車が、今回は自分という歯車がいることで全体を壊しかねないイメージとして描かれてる。大会まで1ヶ月を切ったタイミングでこんな宵越の根っこを揺さぶるような展開して…先生サドかな?いやまあ絶対このことも糧にして成長してくるだろうという信頼があるから言えることですが。

 

第77話

 色物コーチ来た…!という最初の印象とは裏腹に、選手の現在だけでなく過去や性格まで調べて指導してくれる久納コーチへの信頼感がギュンギュン増していきますよ…選手はそれを知らないものの、指導を通じて真摯な情熱をちゃんと受け取っている。

それが表情が読みにくい伴くんを通じて描かれたのが面白かった。内面ではとまどったりつっこんだり、わりと普通にいろいろ考えてるのな!いや宵越に対する「パーフェクトヒューマン」は普通ではないか。どんだけ崇拝してるの。

それほどまでに宵越をずっと見てきて尊敬してきた伴くんが、宵越が成長してコートに戻ってくると信頼し、それを見越して課題を与えた久納コーチへの信頼を築いていくという信頼の連鎖がいいなあ。

 

宵越は普段の練習でも王城部長を鷹のような目で見ていたから久納コーチが言うように外から仲間を見ることの利点を知らない訳ではないと思うんです。だけど今までは攻撃に関してのみだったのか、戻りたい一心で視界が狭まっているのか。

最後のシーンで何か気付いた様子だったからこれ以上焦れなくても変化が訪れそうでホッとしています。これを越えたらもっと高いレベルで仲間と歯車が噛み合う時が来るんだろうな。

 

第78話

 賭けのこと知らない安堂もちゃんと先輩呼びしてるのとか、自分より先に全国行った成果認める度量があるとか、さらなる課題を出されても腐らず挑むとか、日常風景の中でも主人公の高潔さを描いて読者の信頼感積み重ねて来るの、いいですね。

灼カバ、ドラマチックな場面でブワッと盛り上げるのも上手いんだけど、そうでない場面ですでに人柄や背景をきちっと肉付けされてるから余計盛り上がるんですよね。下ごしらえというか流れの作り方が丹念。

だから謎の主人公パワーで唐突に活躍、とかないんですよ。今回みたいな比較的動きがない回でも後の伏線になってるところこれまでもたくさんあったし、くりかえし読んでも新しい発見あったりして楽しいんですよね。

なので今回、チームの頂点に立つ者の苦しさ、という点が強調された王城部長に不穏なもの感じて怖いんですが!明確な目標となる存在がいないゆえに自分を追い込む方向にしか努力の向けようがないってことなのかな。危ういような気もする。また脚を壊したりとかしないといいけど…

 

第79話

 いよいよ始まる本大会、まだ知らぬライバルたちの顔見せもあり意外な初戦の相手も判明してこれからに期待が高まりますねつーか佐倉くんがー!!ごめん抑えきれねえ推しがふんわり優しげからさわやかたくまし系になってさらにかっこよく!!

ハァハァ…えーとあとなんだっけ、井浦がムチャクチャになってた。知識や理論の及ばぬ領域になるとこんな風になってしまうとは。それをただ優しく見守ってただけの王城部長見て、なんでこの人たちがいて1回戦も突破できなかったのか分かった。こういうところがダメダメだったのか…

そして最初の相手は外国人選手と!これまた攻略難しそうで面白そう。サッカーの試合とかで日本人チームとの対戦見ても外国の選手って「そこから足届くの!?」「あんなスピードでぶつかって倒れないの?」ってびっくりするくらい感覚が違うんですよね。

しかもプロでもない高校生が試合の中でその感覚を掴んでいかなければならない。いや大会開始までは間があるみたいだからコーチに何か指導してもらえるかな?体格のいい宵越が試合に加われば単純に有利になるかと思うんですが、守備問題もまだ片がついてないしな。うおーどうするんだろ。

 

第80話

 ああ、ストイックに勝利を求める強さだけではなかったか!チームを頂点に導けるものが最強、これだけの言葉で一流選手を動かしてしまう存在感、結果裾野が広がった功績、不破という人の器の大きさが分かるエピソードでした。

誰が強い、という質問の答えをすでに個人レベルで考えてないんだ。脇目も振らず鍛錬に励む人という印象だったんですが、もっと視野の広い人だった。いいねえ、ラスボスとして不足なしって感じの度量だ。

黄金世代と呼ばれるほど優れた選手がひしめきあう貴重な時間、彼らだけで切磋琢磨しても得られるものはあったでしょうが、新しい世代に伝えることで一流の技術や精神はもっと広まった。それがカバディ界においてどれだけ実り多いものになるか、宵越たち下級生が刺激されぐんぐん伸びている様子を見ればよく分かります。さらにこういう描き方ができるのはまだマイナーな、これから広がる可能性をもつ分野ならではで、弱点を見せ場に変えた武蔵野先生の着眼点がすごい。

広がっていった結果、2年生同士の因縁も生まれ始めているのもいいよいいよー。前も書きましたが、部活もので3年生が抜けると穴が開くようになってしまう現象、灼カバでは心配無用だな!って思える。

あと六弦が「負けるなよ」と声をかける場面、ライバルとしての闘志と同じ競技仲間としての激励が合わさったいい場面なんですけど、井浦の名前を律儀にフルネーム呼びしてるのちょっとかわいかった。自分からお名前聞いたからね!ちゃんと呼ばないとね!

 

第81話

 きっと知らないままで試合に出ても宵越は力を発揮したはず。でもチームを勝たせるためにポジション譲った井浦の思いを知った後では勝利の意味の重さが違ってくると思います。応えなきゃね…!

勝利への執念が強いのは宵越のいい所だけど、今の彼は自分が出られないかもしれないことへの焦りでいっぱいでした。だけどチームが勝てるなら自分を抑えてでも勝ちたい、という形の勝利への思いがあることを知った。勝ちたい気持ちなら誰よりも分かる宵越にこうやって自然と「みんなのためにも」という思いが生まれていく流れが上手いなあ。彼の個性はそのままに成長して行ってる。

ここの扉越しに聞いてる場面、夏の宵の静かでしっとりした空気が感じられる絵が情緒的な雰囲気とあいまってすごくきれいでした。

マイナーゆえにルールも試行錯誤中で、その変化さえ展開に練りこむカバディならではの面白さと、高校最後になるかもしれない試合を前にした三年生の思いという多くの人が共感できる山場を同時に描いているのすごいよ。

 

第82話

 とうとう本戦が始まってしまったよ…!練習試合で十分面白いので本戦ならどれだけ熱くなるのかという期待と共に、始まってしまえば好きになったチームのどれかが負ける姿を必ず見ないといけないという怖さが同居してソワソワする…!

せっかく我らが主人公宵越が持ち前の序盤の強さを見せつけて試合前の下馬評をひっくり返すほど活躍しても「も、もうちょっとゆっくりでええんやで…!」と思ってしまう。

それにしても主人公の強みが試合序盤ってのが独特ですよね。逆転に物語の醍醐味がある以上、主人公の活躍は終盤にしたくなると思うんです。序盤であまり活躍すると転落フラグを心配してしまうというか。

それでも灼カバは典型的なキャラ造形や予想を超える展開をいつもしてきてくれたのでここからどうなるか楽しみにしたいと思います。けど宵越一度は痛い目見そうだな!(ひどい)

 

サッカー部また応援に来てるし!自分たちが予選負けしたとはいえ、わざわざまた宵越の応援に来てくれるの愛おしい…っていうかもうカバディ部全体の応援だよね。いいやつらだ…

伯麗ISの校歌音声で聞きたすぎるので灼熱カバディ早くアニメ化しよう。
「♪かがやく我ら めざす方伯 ah~ grows&glory」
くっそーインターナショナルスクールだからって好き勝手やりやがって!

 

第83話

 さすが場数を踏んでるだけあって雰囲気にのまれてない宵越が頼もしいんですが失点してもあっけらかんとしている伯麗は別方向で不気味。最後の外園の表情は意味ありげだけど顔が濃くてそう見えるだけなのかどうなんだ!

颯爽と味方のフォローしておいて煽って焚きつける宵越ホント素直じゃねえなあ!こういう風に宵越らしさはそのままに仲間と支えあいコミュニケーション取れるようになってる姿、最初の頃思うとうれしくなります。

 

サッカー部がめちゃめちゃ熱のこもった応援してるのも、いの一番にそれが描かれてるのも、それなりに力入れた作画されてるのも、ほんわかしちゃう。脇も脇の役だよ。

久納コーチの華麗なポーズのせいで神畑にばれたぁー!華麗なせいでー!つうか神畑なに終始まじめな顔してんだよ逆に笑ってしまうわ。そんでコーチいつごろからそのポーズやってたんすか…

 

第84話

 素人考えなんですが、一度できるようになったことをできない頃のようにしてみせるって難しいことなんじゃないんでしょうか。ノリが軽そうでもやはり世界組、読めないレイドができるだけでなく自在に操れるなんて油断できないやつだったか。

演技が上手いってこと実はこの序盤の点差も普通にピンチだったりする可能性も?それを演出みたいに見せることで外園の術中にはまらせる意図があるとか?考えすぎかな。初戦の雰囲気+外園の筋書きから抜け出し実力を発揮しろ能京!みたいな。

 

第85話

 エースを全体で守る守備の能京に対しエースが全体を守る伯麗。ほほー!こういう対比のさせ方してきたかー!攻撃の要が敵に積極的に接近する方法はリスキーだと思うんですが、力が突出してればこういうこともできると。面白いなー!

体格がよくて守備も攻撃もできるというと六弦も外園と近いタイプだと思うんですが、奏和との初練習試合の時は王城部長と六弦の因縁もあって個人の見せ場が多かったですよね。井浦も試合後に異常な攻撃戦だったと言ってましたし。

それが全体の力や連携が底上げされて守備に焦点を当てられるくらい能京が成長してきたんだなと思うと感慨深いです。とはいえ、新入部員との経験の差が発覚したり、まだまだ発展途上なんですね。2年生組に突破口見つけてほしいけど…

スポーツって相手より点数多ければ精神的にも優位かといえば必ずしもそうではなくて、点を取った後あまりよくない状態が続くと勢いが逆転してくるんですよね。追いかける方が「しのげてる」から「追いつけるかも」に変化するとあっという間に点が入ることもある。この雰囲気の変化がリアルでした。こういう時、勝ってる方は足並み乱さず冷静さを失わないことが大切なんですけど宵越まんまと焚きつけられてるなあ…サッカーでこういうことなかったのかな。かつてエースだったから余計プライド傷ついてるのかな…