さわやかサバイバー

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灼熱カバディ 単行本第10巻感想

twitterに上げた灼熱カバディの感想をまとめたものです。

  

続きから第10巻ネタバレ感想

 

第86話

 陽気で細かいことを気にしない、いかにもアメリカンな外園の印象が部員とのエピソードを描くことで精神的フォローを忘れない器の大きいリーダーに変化するのはお見事。

外園本人が思っているように闘志や身体的能力は他の世界組に届かないのかもしれません。それでもチームを勝たせる力があるならかつて不破が定義した「強さ」を持ってるということなんですよね。

灼カバはいつも熱い展開だけど、勝ちたい思いや動機、強さの意味などが多面的に描かれて勢いだけの熱さではない、深みのある熱さとでもいうようなものが生まれていくのがいいんですよ。次はどういう方向から描かれるのか予想がつかないワクワクに満ちている。

 

宵越は完全に視野が狭くなってましたね。自分が自分が、になってる感じは初期の頃思い出します。そこから変わるためのチームプレー、連携だろー!今までやってきただろー!でももどかしい分、それを本当に身につけることができれば一皮むけそう。この試練は再スタートになるのかも。

 

第87話

 「まるで主役だぜ」うわーまた外園の印象変わった!これ絶対主役級の人物からは出ない台詞ですよ。自分がその器でないことを承知で、それでももがいた末に勝ち取った成果に対するうれしさや意地や切なさが感じられる台詞だ。

初めの頃は能天気なやつだなーくらいにしか思ってなかったのに。それが仲間のプレーを受け止める懐の大きいリーダーに変わり、その奥には自身も一流になれないコンプレックスがあった。だけど自分を知ってなお前に進むことをやめない現実的な努力家…いいやつじゃんカッコいいじゃん。

ここに佐倉くんとヒロの会話挟んでくるのが上手いですよね。状況を打開できる能力がある天才には慎重にならざるをえない凡人の考えは読めない。天才と凡人の差を明確に描きながら、壁を打ち破ろうとする時の熱さは両者とも同等に描く灼カバが好き。

 

今回外園を止めようとする能京メンバーもどちらかといえば凡人側で、スタメンに能力も経験も劣る「穴」であることを自覚しながらそこに甘んじてはいられないとする様子が熱かった。サッカー経験者の伴が素早い動きで引き付けようとしたり相撲経験者の関が突進力活かしたり、いい作戦だったと思うんですよ。へこむだろうけどバネにしてがんばってくれ…!

 

第88話

 恵まれてるとは言えない環境で今いるメンバーの個性を尊重し活かすリーダーって好きなので外園応援したくなるんですが、相手が規格外すぎたね…一番きつい所は自分が受け持つっていうのもカッコいいんだけど相手がね…

王城部長、普段はにこやかで穏やかなだけに、あのモードに入ると追い上げる者を許さない強大な壁みたいになるからギャップにヒッってなりますよ。ああいうの普通敵だよね…

宵越が部長とは違う持ち味を得ようと守備の方で試行錯誤している中、王城部長が攻撃特化な強さ見せつけるのはなかなか皮肉。この展開が宵越にまた何かしらの影響与えるかな?

 

第89話

 一番にいまだ届かない者たちの共振にこちらも震えた回でした。関が一方的に影響されるだけでなくて、神畑も関の成長を認めているのがいい…

他校で師弟関係というと王城部長と佐倉くんもだけど、神畑と関は合同合宿からだもんなあ。こうして実になってきているのを見ると、あの濃くて熱い時間で得たものは本当に大きかったんだなと感じますね。

人見ちゃんが自分のことのように関の活躍を喜んでいるのも泣ける。一番近くで見てきたんだもんねえ。一度は積んできた人間との圧倒的な差を知って打ちのめされ、でもそこからカバディの選手になる歩みをやめなかった二人だものね。

関に止められて「こんな奴に」となるのではなくて、すぐに脇役なんていないんだ、と考えをあらためるのは外園もまた一番に届かない者だから。外園自身は割り切っているところもあるようだけど、追いつこうとする者の力を知ってるってことは彼自身も相当に努力した経験と自負があるからなんだろうな。

神畑カバディは学生のうちだけ、と言いながらあれほど壮絶な努力を重ねている。それはやはり一番の不破に届かなかった悔しさが根源なのだろうけど、それでいて神畑も外園も不破ばっかりを見ているのではなく自分と同じように悔しさ抱いた未熟な者たちへ目線を配れる器の大きさがあるんですよね。

それが若菜や関といった次世代の芽を伸ばし、自分たちでさえ追い越さんばかりの勢いつけていっている。この闘志の継承といった流れも静かに熱い。

 

第90話

 うおおお外園ー!主役級の人間ではないことを思い知らされながら歩みを止めず、仲間のために焦りも劣等感も隠して大丈夫だと笑い続けた男が、こらえきれず感情をあらわにした瞬間なんて泣かずにおれんだろ…

敗退が即引退になってしまう3年生の切なさを思い知らされたなあ…それは能京だって他校だって同じな訳で、ひと試合進むごとに競い合った仲間が去っていくのを目にするんだ。めでたい1回戦勝利の回にこんなセンチメンタルになるとは思ってなかった…それに外園をこんなに好きになるとも思ってなかった。灼カバ出てくるキャラ出てくるキャラそれぞれに違った熱さを持ってるから結局みんな好きになっちゃうよ。

灼カバではめずらしくイメージの演出が続いて、それもとてもよかった。普通の人々が満喫するだろう楽しげな夏の風景から隔てられた電車に乗り合わせた者たち。その電車に乗り続けないと見られない景色を求めるが全員が乗り続けられるわけではない。そこから降りて、なんでもできるしどこにでも行けるようにようになったはずなのにたまらなく寂しい心境が最後の1枚で伝わってなあ…しかも絵自体は夏の美しさにきらめいててまばゆいの。

よっしゃ連載再開だ!と意気込んで読み始めたらまさかこんなに切な美し回だとは思わずドゥオオオオ…!って感じになりましたけどやっぱり灼熱カバディいいです。面白いよぉ…!

 

第91話

 短いのに過去が察せるような描写に出会うと上手いなあと思うのですが、灼カバは未来まで予感させるんですよね。影の薄かったキャラが未来のライバルになる、その変化の瞬間に立ち会っているのだと昂るような作品はそうそうないです。

正直、伯麗のふとっちょくんの名前おぼえてなかったもんな。ごめん。ルークね。だけどそんなキャラでさえ今後は油断ならないかもと意識させられる。それほどドラマチックな展開もこれまでの試合内容と外園の人柄ですんなり飲み込めるよう描かれてるんですよね。

こういう構成やら見せ方の上手さを考察とか好きな人とかにディープに語ってもらいたいから灼熱カバディもっと売れねえかなあーーーっ!!(大の字)題材に尻込みせずに読んでほしい。熱さも一級品だけど上手さも一級品なのよ…

 

初めての第1回戦突破だというのに、うれしさより不安感が押し出されていたのは意外だけど納得できました。当たり前だけど勝った後の精神状態って勝ったことないと分からないんですよね。そっちにずっといたから、いつまた自分たちが「負け」の側へ行ってしまわないか、つい考えてしまうのだろうなあ。

その思考を負けたチームのためにも勝ち続けなければいけない、と勝利の方へ切り替えさせた外園はやっぱり大したやつだ。負けたチームの人間に勝ったチームが救い上げられることでただの敗者にせず、違う形の強さを持った人間なんだと描かれているのがいい。

キャラクターの一人一人が役割ではなく人間として描かれてる。これまでの流れから能京1回戦は勝つでしょと思っていたので、私にとって相手は最初から負け役だったんです。こんな尊敬できるいい相手になるなんて思ってなかった。灼カバはいつもいい方向に予想を超えてくれるなあ…

 

第92話

 クサい台詞を言わせるときは股間隠し芸を併用することで股間を隠しつつ照れも隠すというライフハックライフハックじゃない。何言ってんのか頭入って来ねえわ。というわけで銭湯で汗を流しつつ1回戦の反省と2回戦の相手紹介。今度はそういう因縁か!

水澄と伊達が全く力になれなかったと後悔する冬の大会。その時ボロ負けした相手に2回戦で当たると。雪辱だ!ってバネにすることもできるけど、意識しすぎて固くなる可能性もあるなあ。あの時をきっかけに二人の絆は深まったし、力を付けたので見返してほしいと思うんですが。

変化に気付けるようにもっと人を見ないといけない、って気付くだけじゃなくて仲間に相談できるようになったなんて宵越も変わったね…やりたくないけど勝つためには必要だから、って感じじゃなく結構自然に話せるようになってるのニコニコしちゃう。

サウナで先に出たくないから初めて部長権限使うとか王城部長そんな。かわいいな。威厳があるタイプじゃないけど「支えなきゃ」って感じでもないし、実力と情熱とビジョンで引っ張っていく、でも普段はふわふわって本当めずらしいキャプテン像ですよ。

 

第93話

 これまで一貫して気持ちや想いは力になると描いてきた灼カバで我をおさえろ、こだわりをなくせというチームが出てきたのは面白いなあ。試合の中で想いが噴き出すのか、徹底的におさえた先の強さを描くのか、とても楽しみです。

でも亜川コーチ、絶対情念強いとにらんでるんですけど…くせっ毛白髪片目かくれ爪噛んじゃう系って役満じゃん。神経質じゃないわけないじゃん(偏見)選手として勝てなかった久納コーチとの指導者対決も楽しみ。ねちっこく絡んでほしいなあ!

久納コーチはいままでどこかのコーチをした経験もなさそうだし、指導者としての成長も描かれることになるんでしょうか。あの人これまでが結構無敵だったから迷いが描かれると深みが出そう。個人的には選手と分かち合ってほしいけど、大人だから隠すっていうのもそれはそれで好き。

 

絶対怪我をさせたくない井浦と、いざというときは勝負に出る王城部長のすれちがいを予感させるような場面もあってドキドキしますね。これも二人のこだわりといえばこだわりだし、ここを大山律心につけこまれる可能性だってあるかもしれない。

最後、部長としての仕事を言葉にしたのは外園の影響と見ていいんでしょうかいいよねそう思うぞ!ちゃんと受け取って前に進んでるだなってうれしくなってしまった。外園…お前の生き様、受け継がれてるぜ…(青空に浮かぶ外園の笑顔)(死んでない)

 

第94話

 無理やり入れられた部活だけど負けるのは死ぬほど嫌だから連携する、ってところから始まった宵越が、その連携を通じて畦道のこと「こいつはこういうやつだ」って人柄まで理解するようになって穏やかに彼の気遣い受け入れてるの、胸がいっぱいになってしまう。

宵越はサッカーのスター選手で、畦道は潜在能力あるけど素人で、一見キャラとして目立ち度合いに差がありそうな二人が対等に作用し学びあっていくの、本当に好き。

コップ持ってフ…のコマの畦道かわいいな。水澄は今回なんか首太くなかった?因縁の試合前にして首ばっかり鍛えちゃったのか。

0から積み上げた宵越と畦道に対し、水澄と伊達はともに苦い経験を味わった相手に挑むという過去ありきの火の付け方なのがまたいい。この二人は「ケンカっしょ」で高めあっていくのだね~。

こういう風に試合前の様子を描いてくれるの、期待が高まって私は好きです。あんまりやるとくどくなるけど灼カバは「もうちょっとためてくれてもいいのに!でも試合も早く見たい!」って感じでちょうどいい。

 

第95話

 大山律心、コーチも選手もゲスっぽい言動かましてきてるけど、これ灼カバだからなあ。情熱や闘志の表れかたがひねくれてるだけって可能性あるんじゃないですかね、どうですか応援席の安堂さん?初登場時の嫌な奴っぷりからいまや能京見守り隊になりそうな安堂さん?

わざわざ律心と名前を付けた学校を単なる悪役にするとも思えないんですよね。灼カバは意味を持たせて名前を付けている感じなので。試合や心理をコントロールするためにあえて煽るようなことしてるのかな。となればそれを越えるほどの熱が生まれる瞬間があるのかどうかも気になるところですが、これは先の展開を楽しみに待ちたいと思います。

外園、意外と早い再登場で!わーうれしいなー!しかも負けた能京の解説してくれるとはやっぱり器がでかいぜ!あんまり解説になってないのすらチャームポイントになってしまうんだぜ!

 

第96話

 律心は我を抑えるどころじゃなく試合中の判断まで亜川監督任せなんだろうか。それでは目先の試合に勝つことができても将来的に選手のためにならないんじゃないだろうか。それでも勝利の方が選手のためになるという考えなのかな。

亜川監督が自分は執念を抑えることができなかったゆえに天才に勝つことができなかったと考え、選手たちには後悔してほしくない、何よりも勝利してほしいとこんな手段を取っているのなら、これはこれで選手を思った指導なのかもしれない。

まあ試合始まったばかりだから本当の所は全然分からないんですけどね!個性豊かな面々がいきいきと試合していた伯麗戦とは対極の試合だなあ。

不気味だし煽るような口調だし、嫌な相手って描きかたされてるけど、能京の弱点を的確に突いてきてるんですよね。それは勝負の世界では正しいんだよな~!灼カバだから単純に悪役が負けるとか、監督の悪政から抜け出すってことにはならないと思うので、どう描かれていくのか楽しみです。