さわやかサバイバー

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ラプンツェル ザ・シリーズ 感想

Twitterでつぶやいたディズニーアニメ「ラプンツェル ザ・シリーズ」の感想をまとめたものです。飛んでいる回もあります。前日譚「新しい冒険」からシーズン2「幸せとは…」まで。

地上波放送に合わせて更新するつもりでしたが、そちらがシーズン2までとなってしまい、残念です。感想も中途半端なところまでで申し訳ないです。

 

続きからネタバレ感想

 ザ・シリーズの前日譚「新しい冒険」

 自分の面子よりラプンツェルの気持ちを大事にして、彼女を信頼して、全部は理解できないけど側にいるって言いきるユージーンかっこいい。本人は容姿に自信がある、っていうか正直ナルシスト入ってるけど、中身がかっこいいんですよね。

 

第2話「みんなの人気者」

 「みんなの人気者」ディズニープリンセスだってみんなに好かれるわけじゃないし、プリンセスだって嫌いな人がいていい、という話をしょっぱなもしょっぱなにするのがすごい。しかも相手は他のみんなにはやさしい人気者。どっちが悪いってことがなくても嫌われることはあるんだよ、と。

今回ははだしで過ごすとか、ラプンツェルの伝統を壊す行動が気に食わないとういう理由があったのだけど、それを理解したうえで、じゃあ距離を置きましょう、って結論になるんです。相手を尊重することと感情は別物だし、両立する、と描くのが現実的で現代的。

アップデートされていってるんだなあ、と感じ入りました。いろんな人の意見が目に入るようになれば相容れないものもどうしたってあるけど、攻撃したり近づいて傷つく必要はない。最低限の尊重は必要だけど離れるほうがいいこともある。これ「今」の話だ。

 

第8話「夢の発明品」

 しっかりもののカサンドラとテンション高い変わりもの科学者のヴァリアン、ヴァリアンの方が一方的に熱を上げてるだけかと思いきや、二人とも親に認められたいのに叶わない、という悩みで共感しあっていくの、切ないながらもいいよね… 二人とも自分の能力に自信を持ってて世間に認められるべき、と強くアピールしてるけど、それは本当に認めてほしい一人の人に認められないもどかしさの裏返しであったり、同じ悩みを持つ相手には寄り添い手を差し伸べたり、繊細な描写が染み入ってきます。強い野心を持ち凛々しいカサンドラのやさしさ、ふと見せたヴァリアンの弱音、ギャップにやられる回ですよ…

あと位置エネルギーと運動エネルギーの法則から自分でヨーヨー発明しちゃうラプちんスゲえな!閉じ込められてたから既にあるものだったって知らなかったとか切ないのやめて!じゅうぶんすごいから!

 

第9話「カサンドラの秘密」

 前回「カサンドラとヴァリアン、ええやん…」と思ったファンにこの仕打ち。まあカサンドラ大人ですしねってことなのかディズニー!真相はあれだったので「どうどう」となだめられた感じなのが上手くてちょと悔しい。

悪人だけど顔はいいよね、うん顔はいい、って女子二人の意見が一致するの笑ったし、現代だなーって思った。私的にはくどいけどアンドルー。

 

第11話「パスカルの物語」

 いたいけな動物の献身なんて刺さるに決まってるでしょうが…!過去回想のラプンツェルパスカルのかわいさといったら。子供と動物という鉄板で、孤独な者同士が相手を見つけた話をやられたらね、そりゃ泣くって。

アッティラの話もだけど、脇役の掘り下げできるのはテレビシリーズならではですね。みんな好きになっちゃう。

 

第12話「小さな大泥棒」

 盗みを繰り返す少女を「自分はラプンツェルに出会って変わることができた、今度は自分が」と更生させようとするユージーンにラプンツェルが「人を変えることはできない、できるのは機会を与えて待つことだけ」と言うのだけど、これが彼女の失敗談から出た言葉なのがよかった。

普段人を頼らずクールなカサンドラが怪我をして、それがちょっと寂しかったラプンツェルは世話を焼きたがるんだけど、やりすぎて、必要な時には言うから!と諭された後なんですよね。
未熟な部分とそれを素直に認める長所、人間らしいデコボコから出た言葉にしたのが上手いなと。言葉だけ抜き出すと悟った人間から出た格言みたいだけど、実際は逆。

 

テレビシリーズは「困っている人をほっておけない」「人懐っこい」「無邪気」といった従来プリンセスの美点とされてきた性格を、やりすぎれば欠点と結構バッサリ描いてるんですよね。世間知らずの弊害も。その上でやわらかい思考で変化や成長を続けるラプンツェルを魅力的に仕上げてる。現実と理想をすり合わせていく「現代の」「プリンセス」のお話なんだなー。


ちなみにユージーンは過去の経験活かして防衛顧問みたいなことしてます。ヒモじゃないよ。

あと今回出てくるアングリーとレッドの二人がほんっとカワイイ。ユージーンにもお話にも都合のいいキャラではなく、独立してて、服のデザインも境遇に合ったシンプルなもの。媚びなくてもかわいいと感じられるキャラ作れるの、マジの実力ですわ。

 

第23話「太陽のしずくの力 パート2」

 ディズニーのラプンツェルは原題がTangled、つまり絡まった・もつれた、という意味なんですが、塔を出てめでたしめでたし、ではなくて、その影響が続いていくしんどさと、ほどいていく過程をテレビシリーズだからできる長さでじっくり描いてくれたのがとてもよかったです。

さらわれて長年離れ離れにさせられていたことが王を過保護にさせ、ついにはラプンツェルをまた塔に閉じ込めるという行為に走らせる。これを単に愚行と言えないのは親が子を思う愛が底にあるからで、だからラプンツェルも苦しむんですよね。

王がラプンツェルを守ろうとするあまり彼女が自分の力で進んで行けることを信じ切れず、壁になってしまう、というのはテレビシリーズの最初から示されてて、1シーズンかけてそれを変えていくお話だったんだなとシーズン最終話で気付きました。

またラプンツェルも閉じ込められて暮らしていたために他の人との関係の築き方が発展途上で、失敗もしながら成長していったこともよかったなと思います。完璧なラプンツェルに対しダメな王、という構図にならなくて。

王国の壁が壊れるという物理的なできごとを、王が壁でなくなる、王が思い込みから抜け出す、ラプンツェルは解放され真に外の世界へ出ていく、という様々な比喩として見せていたのもすばらしかった。
外への旅であり、また彼女自身の内なる謎に迫る、新たな旅の始まりで世界が広まり深まる予感にもワクワクされられました。

 

とはいえ終盤の展開はやきもきするところもあって…
雪がおさまったんなら早くヴァリアンの様子見に行ったげてよ!とは思いましたよね。絵画教室のエピソードも必要なのはわかるけど、別の所にねじ込めんかったか?

村に行くことはすぐできたし、実際ヴァリアンは村から離れられなかったわけだし、間が空いたことでラプンツェルの心配が上っ面のものに見えかねないところが不憫だったなあと。

「Ready As I'll Ever Be」かっこよくて大好きな歌ですけど、王国勢がAre you ready?I'm ready, we're readyと人々が団結していくのに対してヴァリアンパートではI'm ready, I'm ready, I'm readyと自分に言い聞かすように一人繰り返すのが痛々しくって。

私は後追い組でこの先の展開も知ってるから、これもまた絡まっていく物語のひとつだと落ち着いて見られるけどリアルタイム組はモヤっとした人もいるんじゃないかな。波で初めて見る人たちのためにも地上波でシーズン2以降も放送してほしいなーと思ったら引き続き放送されるみたいですね。ワーイ!

 

<シーズン2>

第27話「友好の町」

「ううん、いまでも嫌いだよ。」
なに?シーズン初めには何やってもラプンツェル嫌いな人間出すって決まりでもあんの?
テレビシリーズはこういう「清くて優しくて、みんな大好きでみんなからも好かれるプリンセス」イメージを「いやー今時それはないよね」とシニカルに見てるところありますよね。
ただ続けてキャプテンが
「そんなことはどうでもいい。君が来てからヴァルダロスがいい方に変わったのは確かなんだ。」
とフォローするのがいい。

確かにラプンツェルの前向きな姿勢は「なにやってもこの最悪な状況が変わるわけない」となげやりだったヴァルダロスの人たちに活気を与えたんですよね。
世間知らずで、でもだからこそ純粋な心根から生まれる行動は、現実に打ちのめされている人を救う可能性を持っている。
それを一番体現しているユージーンがいつもそばにいて、折に触れてきちんとそれを示してくれるのが、シニカルな視点といいバランスになっているなと感じます。
清くて優しければ誰にでも好かれるはず、というのは楽観的すぎて今時の感覚に合わない。だけどそういうプリンセスらしい性質を茶化さず、美点を現実的に描いている。そんな今の時代のディズニープリンセスの物語になっているところが好きです。

このあとダメ押しのように「あんたもあんたの言うこともみんな大っ嫌いだ!」って通りすがりに言われて「このクズー!」と楽しそうに返すところもいいんですよね。
外の世界を知って、受け入れて、その上で必要以上に左右されることはない。受け入れられないなら距離を置いてお互いやっていきましょ、と対処できる。
ラプンツェルの賢さとしなやかさが表れてるし、第2話「みんなの人気者」の経験が活きてるんだなと感じた場面でした。

 

第34話「幸せとは…

「責任を持って処分してくるわね…(略)私たちの友情の方がずっと大切なのよ…でしょ?」
「ハハハハハやったー!こんな使い古された手がうまくいくなんてね!」

ちょっラプちんラプちん!!呪いのアイテムに精神的影響受けてるとはいえ、こんなこと言うプリンセスがいただろうか。仲間だまして独り占めなんて。
でも正直こういうラプちん好きです。揉まれてきたなあ!って歓迎して健闘を称えたくなる。
最後の所は外さないだろうという信頼があるから、ネガティブさも含めた人間的厚みを増していく様子を安心して見守れるんですよね。