さわやかサバイバー

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灼熱カバディ 単行本第18巻感想

twitterに上げた灼熱カバディの感想をまとめたものです。

  

続きから第18巻ネタバレ感想

 

 

第170話

 うぉぉ木崎ぃぃぃ!!ってなった後に眼鏡の彼が出てきてこれまた泣いた。どんな登場人物でも本当丁寧に拾ってくれる…同時に水分全部出てんじゃない?って状態に笑ってしまった。
あとで眼鏡拭きなね…大変なことになってるぞ。

眼鏡さんの回でも書きましたが「かちょいい身体になりたい」なんてフワフワした動機で入部して、辛いことのほうが多いような選手生活続けて、それでも強豪校の1桁背番号取った木崎はすごいんだよ。

他競技でも経験がある選手、体格に恵まれた選手が有利な現実は確かにあり、それでも「カバディの選手として」積み重ねた期間の長さ、加えて点が入りやすい延長戦のルールがあって初めて逆転の大活躍を見せる。このさじ加減が絶妙なんですよね。

それを一番よろこんでくれたのが同じ環境で一緒に続けてきて試合には出られなかった同級生というのが胸に沁みるんだ…冒頭の外野のヤジと対になってますよね。いまそこに立っていることがどれだけ大変なことなのか、わかってくれている。

 

冴木が緒方くんを戦術より人間を見るタイプと言っていましたが、データや知識の素材というだけじゃなくて一人の人間としてその人全体を見ていると描かれたのもよかった。これも「誰も見てない」の対になってる答えですよね。華々しい活躍でなくても見てくれてる人はいるという。

盛り上げるために路線変更したというわけではなくて、緒方くんはもともと様々な競技を広く見ていて、輝かしい能力に引きつけられる分、凡庸な自分との差になかなか実践に踏み出せなかった人だから、このあたりも汲み取れたんじゃないかと思います。

 

しっかしここぞという時にバンダナ取りやがってよ…感情が!漁港近くの評判の店の!船盛みたいになるでしょうが!!全部味わいますけど!?

 

囮に使われると知りながら何度でも本気で攻撃に出るつもりの王城部長の闘志は彼らしいけど、そこに「慶がくれたチャンス」という思いがあるのがいいですよね。この一言でこの局面だからこそ燃え上がる闘志と深みのある印象に。

囮作戦がばれた後にまっすぐな伊達が攻撃に出るのは不利でしたかね…2点差ならまだ許容範囲という気がするけど、この後奏和の攻撃で差を広げられるとまずいですよね。能京ふんばれ…!

 

第171話

 いっそいない方がいいんじゃないかと不甲斐なさを嘆いていた2年生が、チームの柱と認められるくらい強くなっていた。身体的にだけでなく、精神的にも頼れる存在でなければ柱とは呼ばれませんよね。二人が部を背負っていく未来が見えるようだよ。

今回ももれなく熱い話なんだけどサブタイトルが目に入るたび微笑んでしまう。水澄、5ページ目のイメージ映像は片桐なの伊達なの。ごめん人の姿で出してもらえんか?

 

片桐も伊達も不器用でパッと人目を引きつける派手さはないタイプです。こつこつ頑張ることはできるけど、裏を返せばそれしかないから実を結んでくれとすがるように続ける。けれどそれが視野を狭め自分を追い詰めたりもする。

主役にはなりにくいと、わきまえているつもりでも打ちのめされたり、ドロドロとした感情が渦巻くのを止められず苦しんだり。私も似たタイプなので二人に共感します。そんな二人の変化と対決を最高にかっこよく主役として描いてくれるから、なんか私まで救われた気になるんだ。

 佐倉くんや井浦のエピソードもだけど、従来なら「そうは見えないが秘められた闘志があったのだ」で終わらせられそうなタイプの登場人物の闘志を表に出し、結果に繋げてくれるところが大好きです。堅実だが敵として認識されないポジション止まりだった人物の「怒り」に光を当て、ぶつけ合わせることで変化をうながし、他の選手にとって油断ならない恐ろしい選手へと変わっていく様子に驚きとよろこびを感じます。

 

変化のきっかけには「今のままでは駄目」「自分だけでは無理」といった現実の厳しさがあって、それでもその先へ進もうと行動した時、身近な人や相棒が呼応してくれてるのもいいんですよね。緒方くんの評価は高校よりさらに未来の可能性さえ感じさせてくれるし、水澄の「待たせた!!!」の「こいつがいればどこまでも行けるな感」ったら!ああもう最高の相棒!

あ、お父さん、亜川監督が今いいこと言ってるんでドラミング控えてもらえますか。

 

パワー勝負の余韻に浸ってたらあれですからね。ギャップえぐいわ!「まさかここで」「練習試合のリフレイン」「高谷学んでる」待って待って待って押し寄せすぎ。最後に取っておくのかと思ってた王城六弦対決までやっちゃうのうわああ!!

 

第172話

 競技を広める意欲もあるし後輩の育成にも熱心。「開かれている」のに芯のところでは他者の介入を許さない。愛と言うには独占欲が大きすぎる、恋にも似た王城部長の深く秘められたものを見てしまったようでドキドキしました。

神仏の助けを求めない、って殊勝なようで、わざわざ授けないでほしいと拝みに行くのは神仏だろうとなんだろうと割って入るな、と釘を刺してるように見えたんですよね。16ページ1コマ目、神社に背を向けて、太陽の方だけを向いてひまわり咲いてるんですよ。ヒェェ。

神様「宮本武蔵だって先手打って断ってこねえわ」

 

六弦が一人では勝てなかった、仲間がいたから勝てた、という境地に至ったのと対照的ですね。それにしたって他者がともに担うことのできない情念を芯にして一人戦う超強いキャラって普通ラスボスあたりがやるもんじゃないの?不破とか。

でもこれが王城部長の唯一無二の魅力なんですよね。六弦の勝利はそりゃもう感動したけど、最終的には王城部長の勝利を…と思ってたから見られたのはうれしいんですが、見られたって言うより見せつけられたって感じで。なんかもう、怖いし照れる。謎。

 

ひそかに「審判さん渋いな…」と思ってたのでモノローグ出てきてびっくりしました。このレベルの選手見るの大変だよね。フェンシングみたいに当たり判定のセンサーほしいよね。

 

 

第173話

 木崎の回想のように、姿勢や行動で部を引っ張ってきた六弦が自分で「俺は奏和の一番だ」って言うようになったのたまんないな…この試合で変化し受け入れていく様子は描かれてきたけど、自ら発信していけるようになったのはまたグッと来ます。

六弦の言葉は一見厳しくても人柄を表すようにまっすぐで、言われた人に前を向かせる力があると思います。でもだからこそ王城部長との勝負に賭けていた今までの自分を自分で部長だと言いきれないところがあったのかもしれません。

そんな彼だから今は心からそう思えているのが分かるし、今回の活躍もその言葉が生み出した力だと納得できます。奏和の仲間のおかげだと思っていましたが、対戦相手の能京の粘りも影響与えていたのは熱いねえ!

 

それにしたって「たかが肉の塊」って、んなわけないでしょ!人間だよ?重心あちこち変わるし、当然抵抗してるだろうし、動かない物を運ぶよりずっと難易度は高いはず。自分に言い聞かせるっていうより、こっちはもう自分の言葉で事実をねじ伏せてる域だ。

 

今回は敵わなかったけど(というか相手がすごすぎた)伊達が実績を自信にしているのはよかったですね。
イメージ映像の外園のポーズ、ナイスガイにしかできないやつだが実際ナイスガイなので問題ないな。

 

前回とんでもない想いの深さとプレーを見せつけた王城部長が止められないと判断して関を抑えているのがまた六弦の恐ろしさを感じさせてね!ゾクゾクしました。

「もうわかってるじゃないか」の顔、眉を寄せて歯を噛みしめてはいるけど、笑っているようにも見える、一言では言えない感情が表れているようですごくいいですよね。新しい段階へ進んだことをライバルとしては脅威に感じ、長年の友人としてはうれしくも思う、そんな顔に見えました。

胸を張れる理由で競技に向き合ってきたのではなくても、認められ報われる道に繋がると示してくれるの、灼カバらしくてとても好きです。そんな屈折を性格的には表裏なさすぎにも思える六弦が抱えてたってのが読者に色んな光を投げかけてくれて、多層で深い印象が残るんですよね。

 

第174話

 畦道たくましくなった…!残念だったけど同じところではうつむかない。王城部長に手を引かれ、宵越に気付かされ、自分から動くようになった彼は、もうひとりで前へ進む力を手に入れてるんだな。

以前も書いたんですが、最初王城部長にお客さん扱いされてた畦道が奏和との練習試合や合宿を経て、タフな選手として成長していく過程が感慨深くて。声をかけようとしてフォローは必要ないと判断した部長の顔にジーンときました。

部活動の経験すらなかった素人の畦道を部長が誘って連れてきたのが始まりだったんですよね。この二人の関係と変化も好き。
部長復帰した時にタックルぎみに抱きつきにいってた慕いっぷりとかほほえましいよね。

 

畦道のセンサーは強力なので今後の成長はこういう精神的な方向になるのかなと思ってたんですが、センサーの方もまだ伸びしろがあるとは!しかも学ぶことで終盤強くなるって、序盤に強い宵越と対称じゃないですか。コンビ感増してニヤニヤしちゃう。

 

緒方くん自身が言っていたように、考えながら動くことのキツさは相当のもので、「生活すべてが筋トレ」だった畦道と比べたらスポーツの経験なかったっぽい緒方くんの方がもっとキツいと思うんですが、あの自信はなんなんだろう。

プロのスポーツ選手だって試合終盤は難しいことできなくなるのにぃ?と疑いの目全開で見てますが、よく考えるキャラは好きなので私の浅はかな疑念は裏切ってほしいところ。
…さすがにこの流れがフェイクってことはないよね?

 

第175話

 はー!ここに因縁できるの!まったく違うタイプの二人が、と驚いたけど、そうか、見ていただけの場所に飛び込んだという共通点が!灼カバのこういう「気付いてみれば納得」な関係性の作り方大好き…!

 

以前、畦道と宵越に関して、畦道が仲間として中に引き入れたり、宵越が経験者として中の世界の厳しさを教えたり、常に互いを引き入れる関係だと書いたのですが、今回宵越が勝負の世界を知るようになったと認めてくれたの、うれしいですね。

だけど理解が深まった、レベルが上がったなどの喜ばしい面だけでなく、勝っても負けても苦しみ続ける世界に踏み込んだと描くのが灼カバなんだよなあ。「外側にいれば苦しまずに済んだのに」で描かれてる二人の顔はあどけなくて、それこそ傷ひとつ知らないようです。今回のサブタイトルが「最初の傷」なのを考えると、このあとだって傷はきっと増えていくだろうことを予感させます。それでもその先に必ず何か掴み取ることはできると、希望を見せてくれるのがいいんだ…

 

センスとパワーの畦道、頭脳派の緒方くんと、真逆に近いタイプ同士で、今後また対決することがあればどんな戦いになるのか楽しみです。今回はもう最後に絞り出した力で戦ったけど、万全の状態で互いの持ち味ぶつけ合ったらなにが起きるんだろう。相手の良さを消すのか、自分の強みで押し切るのか。

真逆といえば王城部長と六弦も真逆だけど、二人の最後の対決で新しい世代の真逆タイプの因縁が生まれたことも感慨深いですね。

 

前回の感想で緒方くんの自信に疑いの目を向けてたんですが、本人じゅうぶん分かってましたね。そりゃそうだ頭のいい子だもんな、ごめん。

物怖じしないタイプだと思っていたけど、先輩たちが積み上げたものをかけがえのないものだと思う優しさや、それゆえ自分が終わらせてしまう可能性へ恐れを感じている繊細な描写には緒方くんという人をより深く知れたような気がしました。

確率から言って緒方くんの方が有利という判断込みですが、この局面で将来への投資も含めて1年生に任せてくれる器の大きさがまたね!勝っても負けてもいい経験、なんて綺麗事言ってるわけではないし、なげやりになっているわけでもない。目の前の勝利と同じくらい、未来の成長も見据えている視点がクライマックスにくぎ付けになっている私の視点も開かせてくれたような気がしました。
同時に作品自体のスケールも一段と大きく感じられたようなそんなような。

 

そうは言ってももう本当に最後のターンで毎回えづきそうなくらいドキドキしながら読んでるんですけど!満を持して宵越、といった感じで主人公として大活躍の期待が高まるんですが、そのあと高谷の攻撃が待ってるのが嫌だよー!怖いよー!勝ってほしいよー!

 

第176話

 こんなに熱いのに泣きそうになる…!宵越がこれまで経験したこと、いいことだけじゃなく悔しさや屈辱も含めたすべてを使って勝とうとする行動のひとつひとつが胸を打ちます。いいぜもう存分にサンドバックにしろよ望むところだァ!

勝戦じゃないんですよまだ。関東大会の、各ブロックの、頂点争い。ここまでの集大成プレー見せちゃっていいんですか盛り上げちゃって後大丈夫なんですかぁ!?
あ…後があるって信じてっからね?今大会のクライマックスじゃないって信じてるからね?

 

「ドゥッ…ええっ!?」「パワ…フェーーーッ!?」
読んでる人間から人語を奪う灼カバ怖い。筋力はまだ身に付けた描写がありましたが、ドゥッキなんて宵越の身長から考えたらまず選択することはないと思ってたので本当に驚きました。

そんな感じで度肝を抜かれすぎていま内蔵スッカスカなんですが、驚かされつつもやっぱり納得がいく展開なんですよね。宵越の敵味方関係なく意欲的に学ぶ姿勢も、それを活かせる体格や度胸も、初めての技をぶっつけ本番で成功させる強みも、全部これまでに描かれていること。

動きの中にサッカー時代のかわし方も挟まれているのが目頭熱くさせるじゃないですか。最終的には挫折し離れることになったけど、それでも身につけたことがここで宵越に壁を越え前に進ませている。ドラマと行動がシンクロして盛り上がらないわけないんですよ。

気持ちはわかるがサッカー部、噴出しすぎ。涙(以外も)ふけよ。

 

挫折からの逆転という点では六弦との最後のパワー勝負もそうですが、六弦の積み重ねを敬うからこそ、簡単に追いつけるものではないと認めながらも学べば自分も進めるはずと、あえて同じ道へ踏み込むのがとてもよかった。

その積み重ねで遥か先を行く六弦に追いつけるはずもない、自分がこの土壇場で進めるのはほんの数歩でしかない。それでもいまここで必要で、自分にはそれができると、果敢に挑む。できるんだなあ謙虚さと負けん気両方感じさせるって。

カラーページのかっこよさはもう言うまでもないっすね!ヒャー!!台詞がまた練習試合で高谷に沈められた屈辱を払拭する台詞で!考えれば水底に沈めるのと燃える熱が上へ上へと上がっていくイメージも対極的なんですよね。※Web連載時は見開きページがカラーでした

やーでもこれ高谷にも火を付けちゃったんじゃないのかな。最後数ページの表情の変化がどんなプレーに結びつくのか、読みたいけど怖い。

 

第177話

『子供のような』
自分が楽しむことが一番のわがままな言動として表に出ていた高谷の性格。光の当て方が変わり、あらたに浮かび上がったのは純粋さ。それを濁らせないのも我がまま、わがままでいるには必要なこと。あくまで彼らしく、気高い選択をした姿が胸を突きます。

 

「自分でおもちゃを作るみたいに」「まるで限界のない子供」紅葉戦で水泳時代のコーチが語っていたように子供っぽいところがあるのは作中でも語られてましたし、個人的にも「それそれ!!」の笑顔が子供のようだと感じました。

だけど今回水中で人形遊びをする子供の姿に、そんなにも大きな部分を占めていたんだと動揺しました。いつもニヤニヤと人を食ったように笑っていて、自分と他人の才能を割り切りながら楽しんでるように見えたのに、芯はそんな幼い子が望むような「誰かと一緒がいい」だったって…

それでも今回の選択は高校で部のみんなと過ごした高谷だからこその選択でしたよね。競い合うだけではなく、仲間として「誰かと一緒」の楽しさを知ったから、たぶん無意識にもっと長くと引き延ばしを考えた。

しかしそんな仲間が信じて送り出してくれたからこそ、チームを勝たせるエースの仕事をしなければと、逆転狙いの行動に出た。六弦が勝ち切る意志を感じ取って「ああ、そうだ!!」と言ってくれるのがうれしいじゃないですか。

宵越の攻撃がそうだったように、今回の高谷も、元から抱いていた渇望、水泳時代の経験、カバディ始めてから知ったこと、これまでの彼のすべてがつまっていて、それらを裏切れないと、選び取った行動です。どれも大切にしたからこその選択を称えたい。

 

超強いけど気まぐれなワンマンプレーヤーだった高谷が「奏和の誇り」とチームを代表してねぎらわれる選手になるとは思いもよりませんでした。いまや真に奏和のキャプテンとなった六弦がこの言葉をかけているんだなと考えると胸がいっぱいになります。

絵もめちゃくちゃいいしー!表情がー!六弦の優しい笑顔と高谷のクシャクシャな顔がー!

 

最後、宵越が追いついた時のうれしそうな口元に希望が示されてるのがいいですね。追いついたってことはこれからは対等な相手として競い合えるということ。天井知らずに成長する最高の遊び相手がまた増えたんですもんね。

勝っても負けても「その先」を予感させる描写が入るところ、ワクワクが続いて巧みだし、登場人物を本当に大事にしてくれてるんだなと思います。

 

ライバルと言えば人形の中に佐倉くんがあるの、あれね!ほらごらんなさい!となんか得意げになってしまった。うん、私が一切関係ないのはわかってます。紅葉戦のあと高谷からの影響のほうが多く描かれたけど、お互いに影響与え合ってるんじゃないですかあ!いいじゃないですかあ!

 

水のイメージが水泳からくるものだけでなく、もっと深く高谷個人の純粋さを表す透明感と結びついていくのが美しかったです。すでに示されて周知のものとなってるイメージが新情報でガラリと見方が変わるのってオタク大好きなやつですやん。もれなく私にもぶっ刺さりました。

 

「奏和のエースなめんなッ!!!」木崎ぃー!!
「…………!!!」木崎ぃ~~~っっっ!!!
生意気と思っててもエースって認めてくれるんだ…
そんでそいつの眼中にはないと思ってた自分のがんばり、見て称えてくれてたのを知ったら滂沱なんだ。お前ってやつはよ…!

表裏ないタイプだからいいやつっぷりがこっちの心にもストレートに直撃ですよ。大好きだ。最後肩たたいてあげてんのもいいな…

奏和戦は本当に総力戦で、各選手の内面掘り下げる描写も多く、みんなに愛着がわく試合だったので(いつもそう)今回描かれなかった片桐や栄ちゃんや室屋や植野や眼鏡さんの様子も見られたらうれしいな。

 

毎回毎回、メインで描かれた人に全部持っていかれるくらいそれぞれのドラマが濃くて、しかもそれらのエピソードが回を重ねるごとに相互作用していくので、なんかもう、大渦に巻き込まれてるような感じでした。最高だった…通して読んだら大渦が大河になりそうな予感がしているので単行本たのしみです。

 

第178話

 この先も続くからこそ、単純な「勝ってうれしい、負けて悔しい」ではない感情を描いてくださる所が好きだ。晴れ晴れとしたキャプテンの笑顔も、自分を盤上に上げる覚悟をした1年生の精悍な顔も、始まる前は予想できなかった。この試合がもたらしたものだね…

 

六弦の屈託のない笑顔、そこに至るまでの道筋を思えば、不器用ゆえの後ろめたさも抱えながら歩んできた道が仲間に認められて、自分を受け入れ新しい道を見つけることができた、という良い悪いを超越した六弦の生き方まるごと祝福された光に満ちてて胸が潰れそう。何言ってんだ?

よかったねえ!なんだけど、そこまでにいろいろなことがあって六弦歩という人の根幹を塗り替えるような大きな出来事が起こったのに、それまでの六弦歩がちゃんと芯になってる素晴らしい門出だったので、よがっだねえええ!になるというか。何言ってんだ?

 

第136話の過去回想でずっと違う色の地面に立っていた六弦と王城の二人は、今回も違う色のコート上に立っています。二人を分けるラインを越えて握手する様子はカバディ好き同士としての新しい関係が始まったようで、ここも見ててうれしくなる場面です。

 

一方で緒方くんは差し出した手を自分から引っ込めるんだなー!こちらは勝負の世界に足を踏み入れた以上、宵越に対して憧れの人ではなく対等なライバルとして向き合っていく将来が見えるよう。

認められて一瞬口がゆるみそうになるコマが入るのがすごいよね…人間、簡単に変わるわけじゃないって生々しさがあります。こういう細かくて深い分析と描写が灼カバキャラの厚みになってるんだなあ。同時に過去と今のコントラストで変わっていく意思が鮮明に残るという。はー漫画うま王…

 

粛々とパチパチし続ける高谷ファンクラブの子たちいい子だな。
「ゴリッ」わかったわかった。

 

練習試合終了後の「追っておいで」、今大会試合前の「先輩って呼べよな!!」
幾重にもレイヤー重ねたリフレイン出してくるのが憎いんだわあ!これだから追っかけるの止めらんない。読者より作品読み込んでる人だよ武蔵野先生(作者だよ)

「追っておいで」から繋げて考えると「追いついた」宵越の成長を比喩的に表した場面とも取れます。単純な賞賛だけでなく、どうだ、という誇示が含まれているような。勝気な宵越らしいし、高谷にとってはそういう相手が一番うれしいだろうなという意味でもすごくいい場面。

 

よっしゃ勝ったー!だけで終わらせない灼カバの試合は後を引くものがあります。だけどそれは続いていくからこそなんですよね。悔しさ、ふがいなさ、いろいろ抱えていくその先の道を光で照らすような、さわやかなエピローグでした。

 

第179話

 文化祭!?そういう楽しげなイベントは事前に知らせてもらわないとー!と思ったら、なんかすごいことになってる。なんかすごいことになってる。

 

大会があったから宵越たちカバディ部は準備免除してもらったのね。はいはい。納得だけど、同じく準備に関わってないはずの2年生クラスがなぜ筋肉に染まっているのか!学校全体がスポーツさかんって前出てきたけど、みんなこんなノリなの?バーという建前と余興の内容が事故起こしてない?

マッチョがつぶしたリンゴをマッチョがおいしくいただいていくマッチョ永久機関

準備に関わってないはずの3年生クラスがなぜ部長ありきのシステムになっているのか!まあこっちは井浦が直前で手を加えた可能性もあるよね。できちゃいそうだし。しかし才能の無駄づかいだよバカだよー(ほめてる)

「当然そうなるッ!!!」もうダメお腹痛い。人見ちゃんのなじみっぷりに油断してた。やられた。かわいいよ!堂々たるリーゼントにミニスカからのぞくムキムキの脚が日本一かわいいよ!!

 

剣道部ー!?元気そうだね!?モブまで大事にしてくれる武蔵野先生大好き。悲しみ(モテない)を乗り越えて、文学的な言葉で立派に司会こなしておる…その才能伸ばして小説でも書いたらどうだろうか。なんで私剣道部についてこんなに語ってんだろうか。

はー楽しいコスプレ回だった…で終わらなかったあ!?え、なに恋愛関係のドロついた話が始まってしまうの?ウワーこれまでになかった展開!