さわやかサバイバー

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プリンタニア・ニッポン 第2巻感想(第26話~)

Twitterで書いたプリンタニア・ニッポンの感想まとめです。感想を書き始めたのが第26話なので、それ以降のもののみです。ご了承ください。

 

続きからネタバレ感想

第26話

 おっ不穏になってきましたな!と読んでたら後半それどころじゃなかった…
他者の目的のために友情が利用されたなら恐ろしいし、純粋に「いいもの見つけたからあいつにも見せてやろう」という好意の結果ならただただ悲しい。

 

第18話で新種発見のニュース
生存試験区域で栽培開始
種が送られる(黒髪の彼が壁ぎわに植えた?)
生存試験区域で事故発生
回顧祭
見回り調査開始
花発見

だいたいこの流れかなと思うんですが、それぞれの期間がどれくらいかわからないので、もし花の成長がめちゃくちゃ早いとしたらさらに怖いよね。


回顧祭終わってすぐ種が発見されて警戒態勢になったので、黒髪の彼の友人が回顧祭に帰ってきて種を渡してそれから植えて、今回もう花になってるとはちょっと考えにくい。だから友人とは別の存在が持ち込んだんじゃないかな。

そうすると黒髪の彼と友人は本当に好意だけで花を咲かせて、形見がわりのようなそれが失われてしまったんだとしたら、もう切なくて切なくて。

 

そんで明らかにされたプリンタニアの性質よ。またあなたか元CEOよ。個々の性格ではなく、そうするよう作られているのなら人に寄り添ってくれる行動を「いじらしい」では片付けられないじゃない…

でも、すでに生まれた命に対して、あなたの行動はあらかじめ形作られたものだから自然じゃないって言うのも傲慢な気がする。人間だってどれほど自分の意志ってものがあるのかわからないし。うああ乱れる…心が千々に乱れるよ…!

だけど実際にあの場にすあまちゃんたちがいてくれて、寄り添ってくれた行為は読者をなぐさめてくれたじゃないですか。たぶんあの彼も。経緯はどうであれ、あの風景にはあたたかさがあって、それは得難いものなんですよ。なんだかんだいって私もつらい時あのもちもちにいてほしいしなぁ。

 

そんな真面目な感想を思っている間も脳内では「向井さんプロフェッショナル」「スタイルいい」「かっこいい」等の輪唱が止まなかった。好き。

 

第27話

 飛び出す塩野の \ あそんで/ 久々に見たよこの表現フフッ。

向井さんまでそんなしょんぼりしなくても…大きい体丸めてるの、かわいそうだけどかわいい。仕事はスマートにこなしてそうなのに、プライベートでは結構オロオロしてるよね向井さん。なに?なんなの?好きですが?
もなかちゃんを一生懸命ケアしてあげてるメレンゲちゃんやさしい。


佐藤が淡々として見えるタイプだから、これまでそう思わなかったんだけど、この世界の人たちは案外すぐ弱っちゃうのかもしれない。

「できないことがある」という事実にダメージを受けがちな瀬田くん、ペット絡みではオロオロする向井さん、元気な反面なにかあるとべそべそ泣く塩野。
守りたくなるコンサルの気持ちが分かるような。

これまでどちらかというとコンサルは個人のために働き、猫は公共のために働いているイメージだったから、今回猫がすあまたちの心情を気遣っている様子になんかホッとしました。

私たちとは違う感覚で回ってる世界にギョッとすることもあるけど、守りたい、大切にしたいという思いが基盤にあるとうかがえる、怖くて優しい世界。このへんのバランス、ほんとプリンタニア・ニッポン独自のものですよね。

 

塩野Tシャツの1024の元ネタはなんだろう。1MB=1024KBてきな?ビッグキャットブランド(ブランド?)以外着てるのめずらしい。

 

元ネタといえば第26話の花、エンジェルストランペットがモデルじゃないかって言われてるんですね。えっ、黙示録の天使のラッパ?ちょっとこの先なにが起こるの…もちもちほのぼの成分も維持してもらえますように!必要なんです!

 

第28話

 しおのー!!!大丈夫なのそれ!?「ぱやっぱ~」出してる場合か!?元気担当の塩野が今後しんどいことになったらダメージすごいんですけど…(想像ですでにダメージ)ホンワカ部分を堪能したいのに不安の種がチラチラして落ち着かない!種関係なだけに!

 

やんちゃなそらまめが向井ファミリーにのんびり遊んでもらってるのとか、近所のお姉さんお兄さんになついている感じで和むし、トリミングもなか&メレンゲのフワフワごこちも体験してみたい新たな魅力なのに…心配…心配だよ…

もなかちゃんのトリミングに太字フォントで感動する向井さんの溺愛っぷりもほほえましい…と思ってたら意外なところから過去の交友関係が。もなかとメレンゲだけでなく飼い主まで新たな一面見せちゃうのか。登場以来一貫して穏やかだった遠野さんの含みを持った言い方…なにがあったのなにが始まるの。

 

回顧祭の種って黒髪の彼が咲かせた花から採取されたものだったんですか…種を取るために何者かが栽培させた、と見ていいのかな。彼の友人がそうだったとは思いたくないけど。

この世界、管理されているといっても人類の庇護を目的とした善意から生まれた仕組みだと私は思っているんです。正しいかどうかは別として。そこに初めて「自分の目的のために他者を利用する」悪意のようなものが紛れ込んだ事態が胃にズンと来ます。

残兵の「回収」はえぐいけど、あれはプログラミングされた行動みたいだしなあ。

 

犬になりたし、デカくなりたし、背中に佐藤を載せて馳せたし。
すあま、夢は尽きぬ。
全部佐藤のためにとか佐藤といっしょに、から来てるっぽいんですよね、すあま。うっ…

 

公開年が決まってるってハリスさま秘仏みたいだな。

 

第29話

 こんな話読んだら管理者側にも肩入れしてしまう…「難儀な」という表現は自分でもどうしようもない思いを抱えているってことでしょう?もっと合理的に仕事するだけの存在だと思ってました、猫。

個人についているコンサルより全体を管理する猫の方が普段は冷静だし権限も大きそうなのに、今回は猫の方が「自分たちを置いていって」とすねているようだったり、コンサルが「私たちの中に引き継がれているから充分」と悟ったようなこと言っているのが印象的でした。

でもこれコンサルが個人についているからこそ、って感じもします。成長し変わっていく人間を間近で見ているから生まれた考えなのかもなと。

 

コンサルの「核は私たちに引き継がれていますよ」の言葉と共に描かれた食卓の風景やプリンタニアたちをあやしている風景、第18話で出てきた「人を助けるのが命題」を合わせて考えると胸がキュッとなりますね…

現行人類、確かに管理されてはいるんだけど、管理者側の守りたい、よりよく生きてほしいという願いがあまりにも透き通ってるんですよね。支配ではなく庇護。それがこれまでは両者にとっていい形で進んでいるのでディストピアもの、とは言い切れないんですよ。

 

だけど全部が全部このままでいいのか?って疑問を抱かせるのがまた上手いところで。管理と共に奉仕を核とする存在を誰かが作り出したのなら、罪深い気がするし、人間はそんな存在に奉仕され続けてていいのか、という思いもあります。

今回の種の騒動は何を目的としているのかまだ分かりませんが、この社会を壊そうとする行動が私の違和感とシンクロします。同時に佐藤たちやプリンタニアにこのまま平和に暮らしてほしいという思いもあって、そちらは種の騒動を「やめろー!」って言っているんですよね。

 

それはそれとして!向井さんと遠野さんの過去は持越しですかー!何があったのよおー!

 

第30話

 え、えらいこっちゃ…!不思議生物とほのぼの生活のガワがどっか行きよったで!?いろいろ起こりすぎてどれから触れれば、なんですがプリンタニアたちに対残兵用の行動が組み込まれていることが一番の衝撃でした。お願いだから平和にもちもち暮らしてぇぇぇ!

組み込まれてるとかではなくて、とっさの連携だったのかもしれないけど、それができるように作られていたというのが分かってしまったことが心にのしかかってくるというか。

 

美しいハリス様デコイに「塩野を害した残兵許すまじ」の炎を燃やす塩野コンサルが入ってるとか、念入りに潰してるとか、好…怖…好…
ていうかコンサルにそんな攻撃的意志持たせていいんですか評議会。

 

元気さを表す効果音みたいなものかと思ってたけど、ヘナヘナになっても「ぱやっぱ」なんだな塩野。なんなの鳴き声なの。ぶっ続けでよくがんばったねえ。

 

向井さーん!!とっさの対処カッコいいんだけど、口笛で飛びかかるメレンゲも合わせてかっこいいんだけど、大丈夫なのー!?噛まれた塩野以上に傷がついてて今後が心配。どう見ても軽傷じゃないから平気そうにふるまわないで…

遠野さんが叱るのも当然だ。こういう感じのすれ違いが過去にもあったのかなと思わせる場面でしたね。

 

これから不穏方面の展開が多くなるんですかね…ばらまかれてる世界観のヒントを繋ぎ合わせていくのも
この作品の魅力だけど、そっちに舵が切られると腰が引けてしまいます。
ほのぼの生活も大好きだから…!

 

第31話

 もう向井さんもうー!真面目で潔癖な人なんだな…
約束も友情もすごく大切に思っていて、全うすることができなければ手を引くべきだと考えてる。だからって自分を軽く見積もっちゃ相手にとって失礼だよー!あなたも大切!個人的にはそういう人は大好きだけど…!だけど…!

向井さん自身もわかってるし、今回の再会を通して身に沁みたみたいで、少しずつ変わる様子が見られたのがよかった。

一方的に…そりゃ遠野さん怒る。そして普段温厚なだけに一旦怒ったら根深いタイプだろうなっていうのもわかる。糸目だし(偏見)裏を返せば簡単に無かったことにできないくらい、遠野さんにとっても大事なことだったんだろうな。

 

佐藤がんばった!あの佐藤が人間関係修復に働きかけるようになるとは…もともとコミュニケーションが苦手という共通項がある佐藤が「気持ちはわかるがよければ」みたいな感じで申し出たのもよかったんじゃないかな。

それだけじゃなく、二人ともプリンタニアを通じて完璧でなくても誤解があっても寄り添いあえる存在がいるのはいいことなんじゃないかと思い始めたタイミングだったのが幸運だったと思います。
すあまの「よかったね」って感じのバフッがうれしい。かわいい。

 

花の彼に対しての向井さんの態度も、大切な関係や思い出に部外者が軽々しく口を出すべきではないと思ってるからだろうな。はねつけているようにも聞こえてしまうのが向井さんの不器用なところ…ほんとにもう…

ハリス様見学時の猫の言葉を思い出せば、自分でどうにもならない厄介さを抱えている猫が「捨てなくてもいいのでは」と語りかけるところが切なくもよかったです。ままならない部分を含め、共に生きた事実を愛おしく思っているようで。

猫の技術レベルならきっと効率的に人間を管理することもできるんでしょう。それでも佐藤の精神テストのように、不当に扱われた際の怒りなど、反抗の芽になりそうな感情ですら、あることをよしとしている。

そもそもそれを管理するのがどうなんだ、って面もあるんですが、足を引っ張る余計なところも含めて人と人が関わり合って生きていくこと、という猫たちの考えに優しさを感じて、どうにも好きになってしまいます。