さわやかサバイバー

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GIANT KILLING 単行本第59巻感想

新システムが根付いていくかの試金石…にしてはやっかいな相手、倉茂監督率いる磐田との曲者監督対決が始まりました。 

 

続きからネタバレ感想

  の前に大分戦の続きから。ETUはきっちり勝利し、大分は降格が決定。相手クラブながら降格決定の瞬間を見てしまうのはやっぱりきついのですが、小松監督の前向きさが真価を発する状況になったことと、椿の復活の印象で心配したよりさわやかな結末になってくれた感じです。

多田は雰囲気から勝手に余裕のあるタイプだと思っていたので、グスグス泣くの意外に思ったんですが、まああの状況なら泣くか…ごめん、泣き顔と「なにも今日じゃなくても良かっただろとは思うけどよ」はかわいかった。かわいそうかわいい。

 

 

 そして磐田戦です。新システムをものにできるか、開幕戦ボロ負けのの悪夢を払拭できるか、という意味があるのはわかるんですが、なんとなく「わざわざ一試合まるごと描く必要あるかな」とも感じながら読んでました。大分戦で「弱いETU」のイメージからの脱却や新システムの成功、そのうえ椿の復活も描かれたので、このままいい感じで鹿島と対戦になってもいいんじゃないの?と。いやもちろん試合が見られるのはうれしいんですが!

あっ、と思ったのは倉茂監督の「あの小僧の作り上げたチームは すでに学ぶことに喜びを見出しとる」というモノローグ。新システムだけではなくて、常に積極的に、変わり続けることをいとわない姿勢そのものがETUには根付きつつあることを描くための試合なのかもしれません。それそのものは喜ばしいのですが、つまりイコール達海がいなくなっても成長していけるレベルになった、ってことだとしたら…や、やだー!

 

いや勝手に想像が暴走してるだけかもしれないんですが、試合前の海外選手のプレーに奮起する椿の姿とかも合わせると、二人とも巣立っちゃうフラグに思えてきて。特に椿は一度日本を離れたほうがのびのび成長できるかも、とも思うので新たなステップは歓迎すべきなんですが…

 

 

長期政権は信頼の証であるとともに、実際は戦術以外のところでも硬直していくことが多く、なかなか難しいですよね。だから倉茂監督の10年という期間に驚いたんですが、どんどん血を入れ替えていくなら可能なのかも。なにより倉茂監督自身が常に変化に対応していこうとする人だから成せるんでしょうね。

一本筋の通った理念を持ち続けることと、変わり続けること、両方を実現する形の違うモデルとして磐田と次に対戦するらしい鹿島、そしてETUそれぞれを対比させていく流れなのかなと感じました。クラブ創設期の象徴的人物の教えを引き継ぐ鹿島、現監督の特色が出ている磐田、と2チームがそれぞれ個人を柱にしているだけに、ETUは違う道、たとえばクラブ全体で理念を引き継ぐ道を選ぶのではないかという予感も達海がいなくなる空気を感じさせてね…いやこれもただの想像なんですが。

 

 

この試合いる?とか失礼なこと書いといてあれなんですが、磐田戦自体はフルコートのマンツーマン、しかもイレギュラーが起きやすい雨、と第59巻になってもまだこんな新しいシチュエーションが見られるのかとワクワクしました。マンツーマン、実際見ないし、選手は大変そう…序盤はうまくいきかけたものの、ETU側の落ち着いた対応もあり、徐々に苦しくなっていく様子にもシナリオ上の都合というより、納得感がありました。それでもETUが動揺すれば結果に繋がったかもしれないというバランスが上手いんですよね。

あと松ちゃん劇場。意外にハマってる…!「日頃からストレスたまってんだねぇ」達海が言うなよ。一斉にスーッと解散していくみんなに笑いました。フフ息ぴったり。いまJリーグで採用されてる給水タイムだって本当は指示とかしちゃダメらしいですね?みんなしてるけど。作中でも言われていたように「誉められたもんかどうかはさておき」なんですけど、焦っていがみ合うのではなく、そういうしたたかな方法を取ってでも意思統一を図るようになったのはタフさを感じます。

 

 

「自分のクオリティを高められるのは 自分達自身だってことだ……!!」大分戦で思考がおぼつかない状態で試合に出て、自分の中に積み重ねられた力を実感した椿が一段階上に上がったことを感じるモノローグです。自分を信じられるようになったことは迷いのないプレーに繋がります。思考のスピードがプレーのスピードに繋がり、磐田キーパー、ストッフの守備力を上回れたのだと思います。

 

ここまで椿やETUが成長見せてくれたら最後のゴローさんの場面はもう逆フラグでしょ!と思うんですが…だよね?