さわやかサバイバー

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コンクリート・レボルティオ~超人幻想~ THE LAST SONG 第14話感想

「十一月の超人達」

 

えっ、爾朗その恰好でスーパーとか行ってんの、からの

立場の違う組織が一堂に会して足並みの揃わなすぎる対超人訓練を行う

意外にもコミカルな始まりとなったコンクリート・レボルティオ第2期の初回ですが

その後は石頭ロボット刑事、柴来人の苦悩へ焦点が合わされ

その姿を通して新宿擾乱後の変わってしまった神化世界を描く

重く心に残るものとなりました。

 

続きからネタバレ感想

 

 

私、柴さんの眼鏡掛けてるデザイン好きなんですよ。ロボットなのに眼鏡という。

あのロボロボしい目をカモフラージュするとかいう役目があったりするのかもしれませんが、

人であった時の自分を忘れないために必要でないはずの眼鏡を掛け続けているようで、

人と機械の間で揺れる彼を象徴しているように感じられて好きなんです。

 

人であり機械であるという彼が抱える矛盾とその悩みは第3話でも描かれ、

石頭刑事からテロも辞さない指名手配犯に変わるきっかけとなる出来事があったこと自体は

分かっていましたが、その詳細がここまで重く辛いとは。

 

知ってから思い返すと第3話の色合いもまた変わってきて、時系列をシャッフルし

その隙間を埋めていくコンレボの描き方の面白さも感じてはいるのですが

「柴っちったら言動もアレだけどパツキンになんかしちゃってー、

そんなに振られたのショックだったか失恋からのイメチェンか」とか

軽く思ってた頃には戻れないなと。

 

もともと正義感は強かったのでしょうが、

あそこまで苦悩し、行きつく所まで行ってしまったのは

彼が「人であろうとする機械」だからこそなのでしょう。

この作品では「変わる人」と対照的な「変わらない機械」の純粋さが度々描かれてきました。

超人というだけで処分をするようになってしまった神化世界で

人のように時代に対応し変容することもできず

まっすぐに人らしさを追求する機械であることで軋んでいってしまうというねじれた苦しみ。

その末にかつての自分を取り戻そうと、

迷いなく「一つの正義」を語る鷲巣の部品を奪い自分のものとしましたが、

ちっとも苦悩が晴れたように見えないのが辛いです。

迷いなく正義を貫いていた(ように思えた)かつての自分に戻れたとは言わない。

その似姿である鷲巣を「壊してしまった」と言う。

原点を破壊してしまったこと、それを自覚していること、きっと今の自分の歪さも知っていること

(でなければ爾朗にわざわざ自分が間違っているか問いかけたりしないだろうし)

自分を保つために「己こそが正義」という一つのスタンスを手に入れた今後も

彼の苦悩は続くのだろうと思えて重苦しい気持ちになります。

 

第14話冒頭とラストの2週間前が

メガッシンを巡って爾朗と対決した第3話ラストの時系列になるんですよね。

苦悩の末、機械のような迷いのない正義を手に入れたはずなのに、

機械に「あなたの目的は悪だ」と言われ、「機械になにがわかる」と返してしまう。

望んでいた真っ直ぐな正義を持つ存在から現在の自分を否定され

「人」の立場からそれを貶めるように対抗してしまう。

経緯を知ってしまった今となっては、この場面のやりきれなさが一層際立ちます。

しかしそうなってしまう心情が痛いくらいに分かるように描かれているので

その矛盾も歪みもキャラクターへの愛着となります。

だからこそ、光が感じられる方向へ向かってほしいと願うのですが…

悩むからこそ人、と言えるとも思いますが、容赦ないわあ…重い、重いよ…

EDでもえらいことになってるし…

い、生きろ…!でもあんまり世間と人に迷惑はかけるな!

 

 

指名手配犯となった柴をも「超人だから守る」と爾朗は言います。

「所詮は機械」と言う人吉博士とは違い、「腹が減ったのか」だとか「友達」だとか

「人」であろうとする柴の心に寄り添った話しかけ方をしています。

あんな風になっても柴の奥底には、のたうち回ってでも「善き存在」であろうとする想いが

あるから爾朗も守ろうとするのだと思うのですが、

それでも自分の容認する正義以外を掲げる存在をも守ろうとするようになったのは

超人課の真相を知り、クロード/神との問答を経たからではないでしょうか。

しかしそれはとてつもなく困難な道であることはたやすく想像でき、

普通に考えれば不可能であることは目に見えています。

相手が受け容れてくれるとも限らないでしょう。

柴はなんだかんだ言ってコンセント貸してくれたり付きあってくれるんだろうなって

感じはするんですが、実際この後弓彦/大鉄には「クズになりましたね」と言われてる訳だし。

 

柴の苦悩を真ん中に置き、

それが浮き彫りにする新宿擾乱後の超人やそれに対する世界の変化を描きつつ、

主人公の爾朗のこれから歩む道もうかがわせる、

第2期初回にふさわしい素晴らしい回でした。かなりヘビーだけどな!

きっとこれから3ヶ月、それぞれで十分噛みごたえのある食材がてんこもりになってるのに

いち作品として魅力的に仕上がってるこのアニメを

「味わいきれない…口から出る…」となりつつも

「でもやめらんねえ…」ってどこか恍惚として夢中になって咀嚼していくんだろうなあ。

 

 

以下箇条書きで色々。

 

・あれだけの苦悩の果てに「刑事柴来人」から「鋼鉄探偵ライト」となることで

自分を確立する道を柴は見つけました。

名前がその人を表すと言うなら、現在、弓彦と大鉄の呼び名を「どっちでもいいよ」という

彼の悩みはこれから始まるのではないかという気もします。

とりあえずそのヘルメットは絶対体に良くないから取りなよー展開的に無理だろうけどー。

 

・輝子が自分に対して好意を持っていることを自覚しているからあの作戦が取れた訳で

「なにしてんだ」の頃から思えば成長したと言える…わけあるか!

あやまれー!後でちゃんとあやまれー!

 

・作戦と言えば白田さんが捕まることを織り込み済みであの作戦立てたのか、

捕まったことを逆に利用して潜入することにしたのか、どっちなんでしょう。

捕まること前提だとしたら公園のシーン、

「誰かに見られてるかもしれないので、『俺の制止を振り切って白田さんが飛び出してしまう』

 という段取り踏んでおきましょう」

「了解」

みたいなやりとりがあったのかなとか。

こんな芸当もできるようになった…(こういう時使う台詞じゃない)

 

・もうね、人も世界もこんなだから風郎太のてらいのない気遣いや優しさが沁みるよね…

BDのオーディオコメンタリーで風郎太は存在自体削られる可能性があったと

語られていたんですが、本当、彼がいてくれて良かったなと思います。

いなかったらだいぶ辛いよ。

 

使者からの連絡が途絶えて、宇宙の平和連合は何も言って来ないんですかね?

破壊される際に信号でも出てたら後々面倒なことになりそうなんですけど。

そのネタで続き作ってくれてもいいんですけど。

 

アルクス起動時の画面見ると「アルクス システム ノーマル モード」って出てるんですよね。

エラーとか起こってない正常な状態という意味のノーマルなのか、

エクウス暴走時みたいに別のモードになるのか…なに仕込まれててもおかしくないからなあ。

 

・爾朗の左腕の力は今まで何かを破壊したり攻撃したりというばかりでしたが

捕まった白田さんへ向けていた時は拘束を壊すというより、

エネルギーを注ぎ込んでいるように見えました。

モチーフとなっている力のことを思えば大きなエネルギーを生むこともできる力という

ことになるのでしょうか。

 

・笑美が柴のことを「本当は自分が正義の存在になれるって信じてた」と語る所、

「超人幻想 神化三六年」読んでると

「横にいる人も割り切っているようで結構そんなナイーブな願望持ってるんですよ…」

と言いたくなってしまいました。

あそこにいる兵馬さんは小説とは直接地続きの存在ではないのかもしれないけど、

根っこの所は同じだと思うんですよね。

彼は今の自分の仕事をどう思ってるんだろう。