さわやかサバイバー

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灼熱カバディ 単行本第14巻感想

twitterに上げた灼熱カバディの感想をまとめたものです。

  

続きから第14巻ネタバレ感想

 

第128話

 意味ありげに新キャラが出て、結果頭脳派ではなかったから「奏和に頭脳派はいない」と思い込んでいたんですよね。やられた!しかもこんな出し方、次の試合もだけど将来が気になって仕方ないじゃないですか。絶対連載長く続けてほしい。それを見たい。

大興奮の試合が終わってね、個人的にも大興奮のメタモルフォーゼがあってね、面白かった…って余韻に浸ってたら別方向の面白さが押し寄せてきたよね。なにこの「一旦疑いが晴れた容疑者は再度疑われにくい」心理利用したミステリみたいなの!息もつかせぬ面白さってこういうの言うんでしょ?

井浦は3年だし、卒業したら能京に頭脳派いなくて奏和にはいるという、状況の逆転が起こるかもしれないんですよね。そうなったら互いにどんなチームになるのか、それとも新しい人材が入るのか、めちゃくちゃ楽しみじゃないですか。

 

選手としては見せ場を高谷に譲った形の六弦が、裏できっちり主将の仕事果たしてるのもよかったです。大胆な起用で器の大きさも見せてくれましたし。活躍は能京戦までお預けかなと思ってたのでこれはうれしい予想外でした。

敗戦直後に疑問点確かめに行くだけで十分すごいんだけど、それでも顔に悔しさにじませたヒロが「早く見たくてたまらない」って思えるようになったのも、六弦の器がそうさせたんだと思います。ここ、日陰から日向に出てくる演出でもヒロの心情表してあるんですよね。

六弦、機微に疎いところはあっても(例:井浦の過去エピソード)表裏のない人のよさと真っすぐな闘志には人を導く力があるんですよね。ある意味容赦のない通過点宣言と、その上を目指す強烈な意志を示したからヒロもふっきれたんじゃないでしょうか。

 

にしてもヒロ、合宿では佐倉くんに「王城さんはケガぐらいで恨まない」とか言っといて、自分は思いっきり相手の負い目利用しますやん。いい根性してんな。

そしてついに!能京と奏和が公式戦でぶつかる日が!ギャー来ちゃうんですかもう来ちゃうんですか!これも楽しみだけどどっちにも負けてほしくない試合ですよ…!

 

第129話

 試合の前に実家に帰る能京メンバー。家族もチラ見せ。チラ見せなんだけど情報量が多い!感情が忙しい!似たもの家族にニヤニヤしちゃう。

水澄のお母さんは前も出てきたけどかっこいいよなー。
伊達のとこは…もうやだこのコピペ家族。笑かすな。野球辞めたのに寮に道具持ってきてたのはそういう理由だったのね。相手のことを思いやれる性格もよく似てる。だけど筋肉を根拠にするせいで、いい話がちょっと面白くなっちゃってんじゃねえか。

さすがの井浦でもね!お姉ちゃんにはかないませんよね!めずらしいものが見られて愉快愉快。「なーんで!呼んでよ!!」この、弟は言うこときいて当たり前、な言い方がすっごくお姉ちゃんだなあ。ぱっつんショートかわいい。灼カバ女の子少ないけどみんなかわいい。

王城部長のとこはそうだったのか…水堀さんが言ってた「似すぎてて心配になる」が重く響くな…共に過ごした時間は少ないようだけど、部長にとってお父さんは尊敬する選手であるように見えたことが救いでした。複雑な関係なのかなと思っていたので。

 

 一方宵越と畦道は紅葉の二人と会ってました。まさかの登場に加えアロハの衝撃。今回どこ読んでても脳の3割佐倉くんが占める羽目になったじゃないですか。着させられてる感ふくめ大変かわいい。目が死んでてもかわいい。というか全体的に感情表現が豊かになりましたよね。よろこばしいことだよ。

連載ではそれなりに経ってるけど、作品内時間ではついこないだエースの自覚をしたばかりの佐倉くんが、すでに導き手になっていることに感動します。自覚から得た自信と自負を土台にその先へ進んでいる。瞬きする間に変化していく様子がもうまばゆくって。

初めて考えた自分のしたいこと、面白そうなことが、宵越に技を教えるというのが佐倉くんらしいなと思いました。これもある意味相手と競うことじゃないでしょうか。相手を引き上げながら追いつかれないよう、自分にもさらなる成長を課す競争。高谷の場合はケンカふっかけてやりあうって感じだけど、高谷から影響を受けても違う方向へ進んだんだなと。

合同合宿での外周レース後、ヒロから宵越に追いつかれて嫌だったか?と訊かれて、いや、むしろ…と自分に追いつく人がいて、競い合えて嬉しかったというような表情が描かれてましたよね。あれはあの時点では、本気で悔しいと思えない甘さの表現だったのかもしれないけど、一山越えた今では、勝負をしながら高めあい後輩を導けるスケールへと変わっていると思います。そんな風にもともと持ってた資質を否定せず成長や変化を描いてくださるから、安心して登場人物好きでいられるんですよね。

 

第130話

 最近やっと先輩には敬語使うようになったけど、この「ありがとうございました」は本心から出た言葉だと伝わるのがいいじゃないですか。
師弟より立場が近い兄弟弟子だからわかる、託す悔しさ汲んで応える言葉。

佐倉くんが王城部長の弟子だと分かった時、宵越と彼は部長を頂点とした正三角形の残り二点のような関係になるのかなと予想したんです。しかし宵越が佐倉くんを先輩として一目置いたことで、対等で平面的なライバルより多層な面白い関係になったなと驚きました。

基本的には宵越と佐倉くんってかけ離れたタイプですよね。感謝で努力を努力と思わない姿勢は不合理で理解できないって言ってましたし。それでも自分と同じ情熱を持つ人間だとわかれば敬う器の大きさが宵越にはあります。

それを言葉でなく走り方や表情を通じて響きあわせたから、外周レースは強く印象に残りました。スポーツ漫画の真骨頂じゃないですかこんなの…今後もたびたび話題にすると思いますが、こいつ外周レース大好き人間だからなと思ってあきらめてください。

 

今回佐倉くんが技を伝えるだけでなく「何のために」を考えさせたのはなぜだろうと思ったんですが、他競技から来た高谷に自分の「何のために」を揺さぶられたからというほかに、宵越に自分と同じ危うさを感じたからかもしれないと考えたりしました。

宵越が外周レースで佐倉くんの情熱や、それを持っていてなお離れざるを得なかった事情の深刻さを察したように、佐倉くんもまた、単純な勝ちたいだけでは行き詰まる可能性を宵越に感じたのかもしれないなと。

今目の前に見える「誰かのために」「勝ちたいから」という動機より深く、なぜ自分がこの競技をするのか掘り下げる行為は、その人に揺るぎない根を作ってくれることになると思います。一旦競技から離れた過去を持つ者同志として、後輩がまた同じ道をたどることないよう導くっていうのはまさに兄弟子じゃんね…

宵越と佐倉くんの「王城部長との師弟関係」「一度競技をやめた者同士」という相似形、宵越と高谷の「他競技からの転向組」という相似形。鏡のように相手を映しこみながら、それぞれの違いが放つ光が彩っていく新しい関係がまぶしくって仕方ないんですよ。積み重ねで人物像がどんどん深く、魅力的になっていく。

 

 胸がいっぱいになりながらちゃんとアロハ回収して着て帰っていく佐倉くんにフフッってなりました。着せられてた感満載だったのに。律義。

今回一番のニヤニヤポイントは「あ~…」って言う宵越かも。あの宵越が!人を気遣ってる!高谷に対してアイツとか名字呼び捨てとか、佐倉くんにしてはきつい言い方してるのもニヤニヤしました。

 

その頃、奏和では高谷が死ねぇッ!!!とか言われてた。あれ、木崎も室谷ももっと穏やかな顔してたよね…?笑ったけど、この状況意図的に作り出してるらしい奏和の例の1年相当食えない奴だな。どうする井浦、お前よりひねくれてるかもしれん。

 

第131話(前編)

 応援団が次々到着して大一番の雰囲気出てまいりました!
困ってる人を放っておけない若菜は本当に正統派主人公タイプだよなあ。ろくでもないカテゴリでジャンル:ヨイゴシを形成している場合じゃないぞ主人公。

八代はあれよね、おしとやかに見えて積極的につっこむよね。唯一の正解って。でも2年生と宵越以外の1年生は普通にいい子だと思う。いや、広い意味で言えばいいやつばっかりなんだけど、穏便に社会生活が送れそうかで言うと、その他のメンバーは難がモゴモゴ。

 

星海は早々にブロック突破決めてましたが、早乙女の状態、これなんだろう。計量のための減量であればもう済んでるから必要ないはずだし。不利な状態続ける狙いが見えなくて不気味だ。わざと節制つづけて決勝近くで爆発させるとか?怖そう。

あっ減量の影響が抜けてない可能性があるのか(コメント欄読んできた)神畑が減量真っ最中にあんな試合するから、頭からすっ飛んでた。確かに骨格から立派だから大変そう。それはそれでフラストレーション溜まってそうで、どちらにしろ怖いな…

 

第131話(後編)

 出ました奏和の司令塔!秘蔵っ子って呼び方がいいなあ。紅葉戦の前に高谷に話しかけてた選手ですよね?ってことは本人には「かっけーっすね」って言っておいて、他の選手に「死ねぇッ!!!」って言わせるくらい、高谷に対する闘志あおってたの?お、恐ろしい子…!

「どうせこれ以降バレちゃう」ってことは、今までとは指示の出し方を変えるのかな。それとも選手として試合に出る予定があるとか。カバディ経験者ではないようですが、他競技からの転向組なんでしょうか?司令塔だしスポーツ以外から来てても面白そう。

宵越、先輩指して「小賢しい」って。頭が切れるとか言ってあげて。そんなやつが「佐倉先輩」ですよ「佐倉先輩」ウフフ…もっぺん言って…何べんでも言って…普段生意気だけど一度心服した相手は素直に敬うんですよね。そういうとこまっすぐなのとてもいい。

 

「たった三か月前だが、待ちわびた再戦だ」見開きサイズ勢揃いの決めゴマですよ。超いい絵ですよ。初めて見る人はまさかプレゼンテッドバイ サッカー部の顧問だとは思うまい…もう関係者でいいよ。晴れ舞台では関係者席に座って応援してほしいよ。

応援席、サッカー部以外にも「しばらく顔も見たくないと言ってたのにさっそく見に来たんですか亜川監督」「伊達家水澄家の並びは偶然なんですかお誘い合わせの上なんですか」等ワクワクポイントがいっぱいで試合とあわせてこちらの反応も楽しみです。

 

第132話

「俺カバディあまり好きじゃないかも」
「じゃあこれから好きになればいいじゃん!」
傍から見ればそれ言うんだ!?受け入れるんだ!?の応酬だけど、お互い噛み合ってるんだな。なにこの関係。新鮮…

能京がそうであるように、主将副将ってタイプの違うキャラが補い合う関係で描かれること多いですよね。奏和は両方ともまっすぐで、一方に屈託があったりひねくれてたりすればこじれかねないところが、同じタイプだから上手くいってるっていうパターン、覚えてる限り見たことなくて驚きました。

六弦はキャプテンとしてよりプレイヤーとして力を発揮する選手だと思っているのですが、だからといって責任感がない訳ではないので、紅葉戦でひとつ仕事を成し終え、片桐の言葉で懸念も払拭した今、どれだけ解き放たれるのか、期待と怖さが同時に湧きあがります。見たいのは見たいのよ。見せた上でいい感じに競って能京が勝ってほしい。みんなのかっこいいとこ全部見たい(わがまま)

 

伊達家水澄家の並びは偶然だったんですね。どんな交流になるか想像がつかないので、応援してるうちに気付いてほしい。
そんで亜川監督席そこだったんすか!その並びだと保護者枠みたい。久納コーチの保護者かな?

ブロック決勝戦とあってとうとう不破もお出ましですか。冴木との解説陣はこれまでになく詳しくて安定感あるんだけどやっぱりっちょっと怖い。常にゴゴゴ…って効果音流れてそう。冴木のすね毛で癒されよう。

 

せっかくなので前回の奏和との対戦、練習試合のところ読み返してたんですよ。そしたら試合後、高谷は宵越に「勝ちたい、だけでいいのか?」と、この前の佐倉くんのような問いかけをしてたんですね。そういやそうだった!これだから灼カバやめらんねえ…

高谷はすでに1番を経験してその場所の景色を知っている。そこに立った時、充足感だけでなく、虚しさを覚えることも知っている。口は悪いけど確かに言うだけあって、その点では宵越よりも佐倉くんよりも先を行く人ではあるわけです。だからこの時点でも宵越はちゃんと考えるべきだったんだろうと思うんですが、まだ受け入れられるタイミングではなかったんでしょうね。いろんな人と関わって、今は人の言動についても深く考えられるようになっていると思います。あとはあれ、言った人の人柄かな…

 

第133話(前編)

 超攻撃的守備!ギャー怖いかっこいい!能京との練習試合や大会での紅葉戦で奏和の試合はすでに描かれているし、六弦の強みも分かっているのに、ポジション移動ひとつでまた別の強さが現れるとは!

前回冴木が指摘してた「倒す『勘』が人並外れてる」というのは初動で宵越の強みであるスピードを殺してしまうくらいのものだったんですね。ヒェ…

加えて片桐が左角に入ったことで、両翼に一撃必殺級が揃ってしまった恐ろしさったら。これもいままでにはなかった形。律心戦は手が読めなくてじわじわ追い詰められるような圧迫感だったけど、奏和戦は真正面から壁が迫ってくるような圧迫感。大きさが見えるだけに逃げ場がないことを思い知らされます。

 

練習試合の時は井浦が言っていたように異様な攻撃戦で、守備が機能していませんでした。今回、六弦の「守備としての才能」が描かれ、どう攻略するかに焦点が当てられたのは、能京や奏和も守備のステージが上がったからこそなんだなと感じました。

言いかえるなら連携が強固になったということだと思います。個対個の戦いではなくなった。六弦が対王城部長に燃えているのは変わりないとはいえ、最初に攻略に行くのが宵越なのは「チームで戦う」という段階に進んだからなんじゃないかなと。だからなんとか成果をもぎとってほしいところですが…

 

ところで応援席にまた楽しげな一行が追加されてるじゃないですかー!外園と紅葉の二人は普通に仲良さそうでいいな。この組み合わせ斜め後ろ45度の席から眺めてたい。外園さんたら解説役買って出た律心戦よりちゃんと解説してない?

 

第133話(後編)

 指先ひとつでダウンさぁぁぁ!?痛い、見てるだけで痛い。でも倒した後に起こしてくれるのは紳士。いや怖いわ。
パワー型の六弦があそこまで速さに対応できるのって才能もだけど、やっぱり王城部長倒すために研鑽したんだろうな…どうやって攻略すんの…

どこだろうと「掴まれたら終わり」のインパクトが強烈で、線の細い王城部長が捕まったらと考えると恐ろしさが足元から這い上がってきます。そんなこと簡単にさせる人じゃないのは分かっていてもあれ見ちゃうとね…

 

冒頭の宵越の負けん気強いモノローグがいいですね。この漫画、本当に主人公を甘やかしてくれなくて、因縁に割って入れるほど特別な存在でもないし、それをわきまえた上で負けん気ふりしぼって向かってこの結果だもの。でもだからこそ応援したくなる。この試合中に爪痕残してほしいです。

高谷が気付いて警戒したのってなんなんだろう。バックの途中にカット?そんなことできるのかな?たしか合宿中にはぶつかった反動利用するやり方使えるかも、って場面あったけど今回の体勢は違うかな。そちらなら律心戦の終盤で相手の連携利用できた時に成功したと言えるかもしれませんしね。

 

おうおう高谷サンよ、一度佐倉くんに勝ったくらいで二年最強自称は早ぇんじゃねえか?と思ったら本人わかってた。ちっくしょアイツ登場人物も読者も煽りよる。

佐倉くんも分かってました。高谷に対して、殻を破るきっかけになったとはいえ腹立つなあ、って感じかと思ってたら、成長してくるならそれはそれで面白い、みたいなライバル心抱いてたんですね?「わかってるじゃん」ってそんなくだけたしゃべり方アハッフヒッ(新たな一面が見られて気持ち悪く喜ぶファン)

 

第134話

 性格曲がったんじゃないよ!タフで油断できない「カバディの選手」に一歩近づいたんだよ!素直で人のいいところは畦道の長所だけど、それだけでは強くなれないのが勝負の世界。狡猾に貪欲に勝つための方法を求めていく彼をもう初心者とは呼べませんね。

1、2回戦の相手エースはチームだけでなく、畦道個人としても相性が悪いタイプだったんですよね。「演技の上手い男」外園に、キャッチャーの経験を活かし相手を動かせる大和。いかにセンサーが優れていても動きをコントロールされてしまう上、両者とも力でも畦道と同等以上。でもこの先に進めばそんな選手ゴロゴロ出てくるはずで、いつまでも備わった素質だけでは戦えません。それにこの漫画、いくら体格や才能が恵まれててもカバディ選手として成長しないと勝てない厳しさがありますもんね。

最初は王城部長にもお客さん扱いされてた畦道が、練習試合で悔しさ知って、合同合宿で八代から受け身のままではいけないと指摘されて、ここまで来たんだなあ。思い返せば本当、着実に丁寧に段階踏んで描いてある。

そしてその成長はなにより宵越との影響しあう関係があってこそ。成果を出し、認められていく宵越を見ている畦道には焦りや劣等感も伝わってくるんですが、それでも食らいつくように見ているのが印象的で。

それができたのは畦道のまっすぐな性格もあるんでしょうが、経歴に差がある畦道を宵越が対等なライバルとして扱ってきたからではないかなとも思います。今回も「ドロボー!!」って。なんだその身も蓋もない悔しがり方。フフッ。

 

自分が知っていた姿からどんどん先に行ってしまう畦道を、うれしそうに寂しそうに見つめる彼女さんを抱きしめたい…複雑だよね…!でも立ち会えたのも、畦道がその瞬間を見せたいと思ってくれたのも幸せなことだと思うよ…!何様だ私…?

神畑は直接対決した時に畦道のポテンシャルに気付いてましたが、不破は一度ミニゲーム見ただけだから、やっぱり鋭いんだな。紅葉は素質は知ってたけどここまでとは思ってなかった感じ?こういうところでも各校の違いが知れるのは面白いです。

佐倉くんに関しては回転が専売特許じゃなくなることも、次のステップへのフラグだと思っているので心配してません。むしろいつ見られるか楽しみでウヒヒ。

王城部長は高谷が無理に狙ってこないことに気付きましたかね?今後の攻防に影響して来るかな?

 

第135話

 見る人を引きつけ、置き去りにしていく、互いを知り尽くした二人の攻防。数えきれないほど繰り返した濃密な時間がピークに達しようとしていることが、過去と今を重ね合わせた絵で伝わってきて、切なさと興奮のレベルがガンガン上がる…!

そしてなぜか外園の株も上がるという。自分とは違う、と複雑な感情を抱きつつ見守ってきた二人の戦いに「思い残すなよ」とエールを贈れるなんて、どんな器の大きさだよ。列車を出すなよ泣くだろ! 本当にこの人は自分以外の誰かのこと思いやれるんだから…懐の深さ無限大か。

それは外園の性格もあるんだろうけど、世界組同士、ライバルとして仲間として過ごしてきたからでもあるんですよね。高校のチームより前から培われていた絆と対抗心。同じ世界組の外園のモノローグからの流れでそれを感じさせる「世界組№4 六弦歩」「世界組№5 王城正人」の名乗りが最高。

 

第3巻の水澄の守備としての恩返しエピソードもそうだったように、攻撃、守備、その立場だから築けた関係の描き方が上手いんですよ。関わるはずのなかった人たちが競技を通じて濃い関係結んでいくことに納得しつつ、ドラマティックに盛り上がることができる。

 今回、文字での状況説明がなくて、見て判断する、の段階をすでに通り越して「知っている」間柄の二人の動きだけが他の選手より抜きんでて、王城部長対奏和全体の守備のはずが二人の世界になってるのを絵だけで描写されてて圧巻でした。王城部長が先手打てた…のかなあ相手六弦だからまったく油断できない!

 

第136話

 相手の力を誰よりも知っているからこそ、やられるのは覚悟の上で、しかしただでは帰さないと命を取り合う壮絶な戦い。「どれだけ深く理解してるんだ」とページを進めるたびに驚かされる。はーすごいな、面白いな…!

 

回想シーン、同じ道を歩いて帰っていても舗装しなおした上だったり日陰だったり、二人が違う色の道を歩いている演出がいいですね。「同じ誇りを持ち、違う道を進む」か。

この回想時点で二人はかなり交流があるようなんですが、それでも六弦は「自分は攻撃も守備もできるけど、王城には攻撃しかない」と、自分の方が多くを持っているような考えだったんですね。だけど王城部長のできることはなんでも攻撃に結びつける貪欲さを知り、攻撃「しか」と限定された向こうに広がるスケールを理解し、自分と同等以上だと考えを改めたのではないでしょうか。

ここで王城部長に対してもプレースタイルに対しても向き合い方変わったんじゃないかな。六弦ほど体格に恵まれてれば攻撃に力入れてもよさそうに思うんですが(そういうこと普通しないんだったらごめんなさい)王城が攻撃で強さを極めるなら、自分は守備で極めたい、あいつを超えたい、と思ったのかも、と。

ところで「わかってないなぁ」の王城部長ちょうかわいいですね?これは人死にが出るレベル!

 

第137話

 えっ…?これ…えぇっ!?いけるのこれ?公式戦で一度も試してないよね?見間違いでないかと何度もページを行き来してしまった。度肝抜かれたわ…でも成功するかどうかはまた別の話なわけで。いや相手も同じくらい驚いてるはずだ!がんばれ…!

私はまんまと踊らされましたが、背景見るに宵越と畦道も知らなかったっぽい?直前の会話でも宵越は自分が出る気満々でしたしね。味方もあざむいたのか井浦。一人だけしれっと他の方向見てる井浦…

練習試合一度してるし、お互いの攻撃手が似たタイプだし、確かにどこかで意表を突かないと相手を上回れない。さすがに六弦は反応してるけど木崎は視線が宵越に行ってしまっているので、その点ではある程度成功してるように見えます。

ただ伴くんも宵越や高谷ほどではないとはいえ「でかくて速い」タイプだと思うので、反応さえできれば相手は対処しやすいのではないかという懸念があります。伴くんならではの強みが活かせるとか、作戦授けられてるとか、なにかあるのかな。

 

前回まで王城部長と六弦の集大成!って方向でめちゃくちゃ盛り上がって、その上司令塔同士の読み対決も上乗せされるのカツカレー並みの豪華さだよなあ!畦道の成長もあったし!

緒方くんの読みが当たったことに対して、冴木や亜川監督といった他チームの頭脳も反応してるのがいい。外から見てて察せちゃうんだ…すごい…そんで灼カバだからちゃんと今後に活かされてくるんでしょう?ワクワクするな。星海は今後の敵だからまだ出番があるのは分かるんですが、一度勝った律心の監督が顔出しサービス程度ではなく、今後も影響をもたらすように描かれているのがうれしいです。本当、登場人物を都合のいい道具扱いせず大切にしてくれる漫画だよ…

 

第138話(前編)

 憧れの人と同じ技で同じ相手に挑む!

たとえ追い越せる可能性があったとしても、いつまでも追いかける人でいてほしいし、自分は及ばないって思いたくなる誘惑があると思うんです。そこを尊敬しているからこそ先で待ってる、って勝ちに行くのがいいんだよなあ!

もろ意表を突かれたから井浦の作戦だとばかり思ってたけど伴くん発案だったのか…コーチの言葉をきっかけに行動に移して、こっそり練習もしてって、顔に出ないけどちゃんと感じて考えてる伴くんらしさがつまった攻撃だったんだな。

「一番表情が読めない」
(「そこ?」)
のやりとりも、さっそく活かされたんだ。攻撃でとは予想してなかったけど。

反応はしたものの体勢崩した六弦を見て「崩れた!行けるよ!」と思ったし、それも想定済みの奏和の守備には「しまった!」と思ったし、その上でのロールキックの反撃というチャンスピンチ逆転のアップダウンにものの見事に踊らされました。読者のコントロール上手いんだわ。

あれが伴くんの判断なのか、事前に井浦から無理に六弦狙わなくていいと指示があったのかは分かりませんが、よく冷静にターゲット切り替えましたよね。落ち着いてる。いくらあらかじめ決めてたとしても公式戦初めての攻撃では慌てそうなのに。競技は違えど選手の経験があるからかな。

 

今回地味に好きなのは亜川監督の「どうなってるんだこの世代は…!!」という台詞。なんだってー!!とシンプルに驚いても全く問題ない場面ですが、ナチュラルに選手とは違う視線から出た言葉になってるのがいいなと思いました。 あと井浦呼ぶときは常にフルネームの六弦。

しっかし「がっしり」の井浦、い~い顔で笑いやがって…好きなんだろうなぁ、ああいう相手の裏をかく作戦。

 

第138話(後編)

 見上げていた視点が背中へ、そして横顔へと変化していく様子がとてもいい。
灼カバは才能や経験の差をシビアに描く作品だけど、気持ちに伴う努力を重ねた選手は驚くほどの成長を見せてくれることもある。

宵越が伴くんの宣誓を受けて「いきなりどうした」って驚くのではなくて、当たり前だろって言うのがまたいいなあ。結果が出せるだけの選手だとすでに認めてたってことじゃないかな。

宵越は結局伴くんの過去のこと聞いてないんだと思います。それでも熱意や真面目さから、最初の頃の「親の仇のようににらんでくる奴」の誤解は解けて、知らないながらも努力を支えるだけの何かを持っていると感じ取ったのではないでしょうか。よく描かれる試合中の会話イメージなんかも、もちろんテレパシーで話しているのではなくて、プレーや表情から読み取り伝えあっているのだと思います。前も書いたけど、感情を媒介しドラマを作りあげるのがプレーなのは、スポーツものとして花丸大正解なんですよね。

拳で突いてからの「負けん」はお前と俺は対等だぞってメッセージですよね。本人からしたら負けず嫌いから出た言葉かもしれないけど、伴くんにとっては追いかけ続けた人からの賞賛だよね…

 

しかしクマノミって意外と自己イメージがプリティ。いやかわいさではなく立場のイメージだと思うけど。 あと女の子の精神状態が心配になるポシェット。

 

竹中監督、その雛、監督育ててないですよ…すげー親鳥の顔すんじゃん。気持ちは分かるけどさ。ここまで親身になってくれる人ならサッカー部でも返り咲けたんじゃないかという気もするけど、そうすると灼熱カバディではなくなってしまうので…すまんの(何の話?)

 

主人公のプレーを真似する選手が出てくる、って普通学年が上がったりトップになってからだと思うんですが、1年生の時点でそうなるのが面白いですよね。そうなる下地があるから納得もできます。でも2年生になった姿も見たいし、今の2年生の因縁がこの先どうなるかも見たいので長く続いて…!