さわやかサバイバー

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プリンタニア・ニッポン 第4巻感想

(旧)twitterに上げたプリンタニア・ニッポンの感想をまとめたものです。

 

続きからネタバレ感想

第47話

 荒期とはおそらく天候かなにかが長期的に荒れる時期で、その影響で残兵も少なく採掘人は普通帰ってくる、のにいままでそうしなかった向井さんのワーカホリック具合…など読者が知らない世界の「いつもの」がごく自然な会話からうかがえるところ、やっぱり上手いよねえ。

コミュニケーション苦手同士の連帯感が生まれている佐藤向井コンビのおかしみ。コミュニケーション苦手同士なのに。交流で築けた関係を交流をスルーするために使うんじゃない。


塩野がピザを買ってきた屋台「Newあじや」って書かれてます?訓練施設の「クリーム焼き」「甘茶」とか、猫の食べ物に関するネーミング、わりとそのまんまでおかしい。でも「小判屋」はかわいいな。「猫に小判」の意味はこの世界にも残ってるんだろうか。

 

プリンタニア、ほのぼの日常回に見えてもその後の展開に関わる情報がお出しされてるので新シリーズはどのあたりがふくらんでいくんだろうとワクワクします。「巨大な情報集積施設」は期待しちゃいますね。

あと「猫が長年探していた宙技術のキー」旧人類はやはり宇宙に脱出したのかな。猫はそれに繋がる技術を探してどうするつもりなんだろう。追いかける?連れ戻したい?
切ないのと、深追いしても幸せにならない気がして胸がざわつきます。

 

第48話

 永淵さん、明らかになること以上に謎が増えていく人だな…
彼岸に渡る前の永淵さんの声に反応しているように見えるすあまめコンビ+
プリンタニアによく似たものを知っているよ発言=何!?
プリたちのモデルとなった存在に永淵さんは関わっていたの…?

そんな永淵さんによるとレベルとは元は情報開示の許容目安だったとのこと。開示される基準となるのは「信頼に足る」「裏切らない」こと。登場人物の中で高レベルといえばやはりあの所長なので、頭がいいとか仕事ができるとか社会に有用な人がそうなるのかと思っていたんですが違っていたようです。

私の印象ですが、アグレッシブに進歩や躍進を求めるよりもまずこの社会を壊さない、守ってくれると確信できる人が高いレベルになり、情報が開示されるのかなと感じました。その方針は一度旧人類を失った経験から来ているのかもしれません。またそうなることを恐れている切なさを感じます。

永淵さんが佐藤にこの話をしたことはどう関わってくるの~?
佐藤にはその気はないみたいだけどもっとディープなところに踏み込んでいくの~?
読者的には楽しみだけど不穏さが増す気配もするよ~!

というか、あれだけ好き勝手やってお叱り受けたりしても情報は開示されたままの所長ってやっぱり相当したたかなんだな…自分の能力の売り込み方と引き際が上手いんでしょうね。

 

永淵さんのコンサル、ぽきゅぽきゅ歩行音ともこもこボディがかわいい。このコンサル、佐藤たちが初めて夢売りに来たとき「効>」看板の下にいました?永淵さんのこちらの姿があれだし、この人も「人」なの?なんなの?と混乱した思い出が。

 

第49話

 健康診断や体力測定はともかく、自分との対話はやだなあ…
外部からの質問ならまだ警戒したり予防線張ったりできるけど自分との対話って取り繕うことが難しそう。

佐藤の相手も佐藤なのでそれほどきつい言葉では問われなかったけど、そういう“ことなかれ主義”的なところを自己批判させるかのような流れはちょっとウッとなりました。動じないようで佐藤自身でもそれは逃げじゃないかとか思ってる部分があるからなんでしょうね。

それでもプリンタニア達が大切にしたものを自分も共有しておきたいと、これまでの佐藤にはなかった言葉が出てくる。根を曲げなくても、伸ばすことで変わることはできるんですよね。無理してではなくて、そうしたいという気持ちで変わった佐藤が見られてよかった。

 

猫たちの技術はすさまじいけど、それでも人類自身の力で進化させたいのかな。

これまでに語られた
「精神テストには彼岸の深部が利用されている」
「コンサルの自我がひっぺがされるような深部でも人間の自我は保たれる」
あたりからすると精神の進化には猫たちの技術も及ばなくて、サポートはするけど人間自身の力でどうにかしてもらわなくてはならないのかも。

 

今回の向井さん、すあまに「ぽむ」ってはげまされたりメレンゲに「うちの向井がお手数かけまして…」みたいな顔をされたり、よわよわで和みました。見た目あんなに頼りがいあるのにな。

 

第50話

 祝50話!プリンタニアのことを「連れ立つ者」と表現していた所長の言葉を思い出しました。世界に対して自分の存在が重すぎたり吹けば飛ぶよう(おまけ漫画)だったり、ちょうどいい塩梅で立てない人間をちょうどよくしてくれるのかなと。

知らなかったとはいえ、過去の行動の重さをずっと背負い続けている待屋さんには「自分はプリンタニアのおまけ」と認識することで軽くし、自分に重きをおいてなかった佐藤には「自分を頼ってくれるプリンタニアの気持ちは尊重されるべきだ」と重さを与える。

精神テストの際コンサルは佐藤が自分を大切にできないからといって他者も同じように扱うとは思えないと言っていましたし私もそう思うのですが、プリンタニアたちと暮らすことがいい形で佐藤にこの世界にいる意味を与えてくれたように感じます。

すあまやそらまめにできるだけ幸せに生活してほしい、そのために自分にはできることがある、という流れは佐藤が「自分も大切」と思うきっかけになってくれたのではないでしょうか。

シンプルな顔や形でおだやかなコミュニケーションができる(そらまめ除く)プリンタニアは劇的な効果をもたらさないけど、そのぶん「連れ立つ者」として広く様々な境遇の人に寄り添える存在なかもしれません。所長がどこまで狙ったかはわかりませんが。

 

瀬田くんが佐藤に「も~…約束ですよ!」とか軽口言えるようになったことにキュンとしました。瀬田くん、大抵の人なら人当たりよく接することができるだろうけど、こういう気安いやりとりできる関係は少なそうで。よかったね…!

 

第51話

 おお、巻き込まれ型主人公の道を進んでいた佐藤が自分から新しいことに挑戦しようとしている。しかも「外」にかかわることですよね。なにを思ってそうしたんだろう。読者的には気になるけど塩野は即「じゃあ俺も!」なんだなー。それも塩野のいいところ。

なにか引っかかれば塩野も訊くでしょうし。友人が新しいことに挑戦しようとしていて、いいことだと思えたらすぐに自分も飛び込めるフットワークの軽さと屈託のなさは塩野の長所ですよね。

そういうところが以前は考えなしの行動に繋がってしまうところもあったけど、素直に反省できるし向井さんと話している場面を見ても自覚して変わってきてるのを感じます。えらい!特性が長所として表れて受け入れられるのは幸せなこと。

 

遠野さんの件に関しては天真爛漫がまた発揮されて佐藤ひとりがやきもきする羽目になってたけど。部屋の主の向井さんが気にしてないんだからいいんじゃないかな(適当)
私服はビッグキャット柄(しかもアクが強い)だとか、寝起きのぶっきらぼうな話し方とか、ふだんとのギャップに萌えました遠野さん。

ふわふわの権化にお誘いされたらお昼寝不可避に決まってる…!ていうかうらやましいよ!でも遠野さんは徳を積んでるからな。もなかちゃんにお誘いされて背中でお昼寝できるだけの徳がある。

そして遠野さんのワンちゃんが元気で人懐っこくて全方位に幸せまき散らしてくれてるのがとてもかわいかった…!すあまたちとの絡みに幸せしかなかった!すあまたちどころが部屋の全員に絡んで行ってるなこの子。落ち着きがないのとてもいい。静止画なのにちょこまか動いてるよー。

 

スクールの子を連れていくくらいなので案内人が行く場所には危険はなさそうですが外は外。すあまたちはどうするのかなと思ったのですが、残兵に認識されにくいならむしろ同行を推奨されるのかもしれませんね。

佐藤もすあまもそらまめも、外を知らないものたちが外に出て何を見るのか、どう感じるのか楽しみです。

 

第52話

 スクールの子と外に行こう!の前に面談でした。プリンタニアに前のめりな矢浦くんをしっかりと、しかし柔らかく断る佐藤、えらい。すぐは難しくても行動を改めようとする意志と努力を尊重するところ、すごくえらい…!

予想以上にちゃんと対応できてる…!いや対応できるようになったのかな。すあまたちと過ごして。

スクール管理区域接続棟では不審な行動を取ると強制退去になるそうで、子供を守るよう社会のシステムが作られているのはいいなと思いました。管理の度合いは検討が必要だろうけど、この社会は子供を守りますよと意志表示されてるのはうらやましいよね。

あれだけ管理されてても不審な行動を取るような不届き者がいるんでしょうか。猫たち、現行人類に対して「こうなってほしい」も「自分たちで歩んでほしい」も両方あるような気がするので反社会的な意識や行動もある程度容認されているのかな。

スクールまでの子供とそれ以降の大人は普段関わらないようなので単に子供との接し方が上手くいかない大人がいるってことなのかもしれません。なので指導をしながらもいまの矢浦くんを否定しない佐藤はやっぱりえらい。ローテンションだけど。そこはそのままなんだ。フフッ。

 

第53話

 初めて訪れた矢浦くんと一緒に施設の説明を受けながら「へえ~跡地ってそうだったんだ~」と思う読者。結構長い間読者やってるのにね。住人にとっては当たり前なので詳しく説明されない世界に放り込まれてなじめちゃうのがこの作品の面白くてすごいところ。

深掘りしなくてもドラマを楽しめるし、深掘りしてこの世界について想像広げても楽しい。すごい。

そしてあらためて私たちプリンタニアについてなんも知らんな…と思い知らされるなど。事故で生まれたプリンタニアはあの世界の住人達にとっても「当たり前のもの」ではなかったはずなのに。詳しく説明されないままふわっと世界になじんでる。

あきらかに所長や猫たちの意図でそうされているわけですが、管理者側が隠蔽している事実に今度どこまで突っ込むのかは地味にずっとドキドキしてる部分です。

 

私たちの世界とシステムが大きく違っていても職場とかに子供が来てワッと明るくなる感じは同じなのな、と和みました。お菓子いっぱいあげたい遠野さん、いっぱいもらってニコニコの矢浦くん、平和の権化かな?

食べかすいっぱいつけて目だか口だか食べかすだかわからなくなってる顔で「そう、それがそらまめ」みたいに堂々してるそらまめ、すごくそらまめ。

 

人当たりのいい瀬田くん&遠野さんコンビの跡地訪問の次はコミュニケーション限界ズの佐藤&向井さんコンビで見学に行くらしいですよ。大丈夫かな!(ワクワク)

 

第54話

 なんで佐藤は向井さんと友人づきあいできてるの?の理由は佐藤がグイグイ行くタイプじゃないからだろうなあ。もちろん佐藤がプリンタニアを飼い始めて自分からいろんなことに関わろうと変わったから、自然な感じで距離が近くなれたんだと思います。

コミュニケーション限界ズ同士波長が合ったんでしょうね。ただもともとの佐藤の感じだと平行線だったんじゃないかな。お互い近づこうとしないから。「こういうところで苦労してて…」「わかるー」みたいな会話できるくらい仲良くなれてよかったね~。

そんなふたりが矢浦くんを案内できるかな?とソワソワしてましたが、予想外のお客さんが来たわりにつつがなく終わってました。そうね、コミュニケーション苦手人間でも仕事とかテーマがある話は結構できるんだよね(身に覚え)

 

すあまって控えめに寄り添うタイプだと思うんですが、佐藤が矢浦くんに指導するような立場だからか、上から頭なでたり年上ムーブしてるのがめずらしくてかわいい。「チーム佐藤の一員」みたいな自覚があるんだろうか。いとおしいな。

 

第55話

 猫は現行人類を従順で管理しやすい存在にしようと思えばできそうなのに、そうしないのは愛…?とかロマンチックに考えてたんですが、ただ単に無理やり直してもうまくいかないからって合理的理由かもしれないんだな。それはそれでアリ。

精神テストで佐藤に不当に扱われたら怒る力を引き出させたじゃないですか。管理体制への反抗に繋がるとしても自分を尊重させるのは人類を大切に思ってるからでは…?と人類以外から人類が好かれる描写好きな私は勝手な願望抱いてたんですよ。

でも「できなくもないけど難しいからやらない」くらいの合理性で人類に自由が許されている、というのも人類とは違う存在なんだ、そんな相手に管理されてるんだというゾワゾワ感があって、それはそれでいいなとも思ったんです。

実際のところはまだ謎も多くてわからないし、旧人類と現行人類に対して同じように思ってるはずもないし、どこに転ぶのかのスリル味わいながら読み進めていくの楽しいです。

 

「精神テストには彼岸の深部が利用されている」
「コンサルの自我がひっぺがされるような彼岸深部でも人間の自我は保たれる」
そんな彼岸の管理人永淵さんは「夢売り」として思想矯正もやろうと思えばできる…

夢売りも彼岸の技術を使ってるとか、どこか繋がりがあるのかな。
そうだ、夢売ったお礼に佐藤がもらった草原の夢の中でもすあまが彼岸と同じように話してた。すあまに干渉されたってあとで言われてましたね。
だいたい「脳がピリッと」してる時点でヤバイよな。ハハハじゃないよ塩野。

 

個人データの保管庫、どころではないすね彼岸。精神テストにも利用されるくらいだから人類全体の精神にアクセスできるし。旧人類の残滓はあるし。そこの管理人やってるって永淵さん本当に何者なのー!?

彼岸に渡る前の永淵さんの声にすあまめコンビが反応しているようだったのも気になるし…旧人類に関して語る場合に皮肉っぽくなる永淵さんの態度も合わせて考えれば考えるほどヤバさが増していくのに背景はプリプリアイランドだしむきまとビッグそらまめが見切れている。シュール。

永淵さんと旧人類と猫まわりでどんどん想像がふくらみそうなネタが投下されたのにそのうえすあまが「うえがぐるぐるしてる」「くるのかも」とか言いだしてもう!ふたつ同時に来るの?平行で来るの?抱き合わせで来るの?

今回は矢浦くんを案内する形でプリンタニア世界やそれぞれの仕事を紹介するシリーズになるのかな、平和だなと思ってたのに!直滑降で深いところ行くじゃん!でも正直ワクワクしてます!ウホホイ不穏!

 

第56話

 塩野、反応が薄い子に対して自分の基準を押し付けないし、どうしていいかわからない不安を本人には見せずに明るくふるまっているし、十分気遣えていると思うよ…!そんな塩野をなでてあげるすあまにもキュンとします。二人ともやさしい~!

情熱の押し売りには反抗してびちびちしても、相手を思って努力して悩んでいればおとなしくだっこされているしなぐさめてあげるすあま、心が広い。

 

プランには矢浦くんと弓立くんも一緒に行くようですが、前回のすあまの「うえがぐるぐる」を報告する場に立ち会うのかな。大人たちは巻き込まないようにするかもしれないけどメタ的に考えてなんの意味もなく案内人イベントとぐるぐると同時進行してるとは思えませんよね。

管理社会だから猫たちが子供が傷つくような状況にはさせないと思うけど、ぐるぐるに子供たちが関わってくるとしたらどんな形になるんだろう。これまで大人だけで対応してたし、みんな物分かりがよくてできる人だったから予想つかないな。

ほんわかやさしい無害なペットです、って顔して出てきたプリンタニアが守るべき存在などころかかなり丈夫でいろんなことができるってことがあらためて尋常じゃないって浮き彫りになりますね。

 

第57話

 「うえがぐるぐる」の件はひとまず様子見。大変だー!とアワアワしてたら当事者プリが「来てみんとわからん」構えだったのでこちらも着席しました。彼岸の一件とかもそうだけど、どえらいことが起こっててもどこか静かな空気が漂ってるのがこの作品の味ですね。

静かだけど退屈ではないんですよね。とか思ってると突如むきまが出てきて腹筋やられたりするんですが。

じゃあ予定通りプランのワクワク見学会かな、壁のプリフェイスは洋館にある鹿の頭の飾りみたいで怖いな所長の趣味が相変わらず暴走してるなと読み進めてたら火サスで終わった。予想外すぎるよ!

ダイイングメッセージが電子化されてるわ。というか、この世界に正しく伝わってるか謎なのであれがダイイングメッセージかどうかもわからない。第一、常日頃からプリンタニアまみれだった所長のメッセージが「プリンタニア」だったところで「そうだろうな」以外の感想浮かばないし、なんもわからんのよ。

火サスはおポンチ展開の結果でしょうねえ。弓立くんが泣いてるのは心配ですが。この子ずっとなにを抱えてるんだろう…


あと気になるのは初登場の黒プリ。彼岸の黒化した個体では?という意見もありますね。ウワーそうかも!

とりあえずニコ!ってしてくれたし、すあまも穏やかな顔してるのでよかった。プリンタニア、共感能力が高いぶん周囲に寄り添って自分まで辛くなるの見てて切なくなることあるのでニコ!ってしてくれてると安心します。

 

第58話

 私も周囲の人が騒いでるブームに自分はのれない時そんな気持ちになるよ弓立くん…(いっしょにしない)
けど弓立くん誰を責める訳でもないし、勇気を出して気持ちを伝えたらちゃんと受け止めてくれる人がいるこの作品のやさしさが好きだ…しかもそのきっかけが佐藤っていうね…!

ダイイングメッセージもどきに事件性はないと思ってはいたけど、顛末が明らかになってみるとこれむしろ所長のほうが心やさしい少年にいらん心配させた罪でペナルティがあるべきなのでは?

けどその後の大人組はよかったですね。叱ったりとりあえずプリンタニア渡して一時的に取り繕うのではなく、弓立くんの本当に求める所を引き出して、どうして渡せないのか難しい言葉でも大事なことを伝えようとする。ちゃんと彼を尊重した対応でした。この作品のそういうとこも好き。

自分が苦手だからか、むやみに他人に立ち入ったりしない佐藤が悩みながらも助言するの感慨深いですねえ…向井さんと遠野さんとか、ちゃんと伝えられずにすれ違う人たちを見たり自分もそこにかかわった経験をしたからこそなんでしょう。

あんまりグイグイ行かない佐藤だから相手も助言を受け入れられるというところもあるのかもしれません。草スキルってこういうこと?

 

第59話

 本人の前でお礼状堂々棒読みスタイルの矢浦くん好ましいことこの上ない。素直だし悩みを人に相談できるし行動力あるし友達思いだし、このまま大きくなっておくれ…
そしてついにこの世界でなにが起こったのかわかる、んですかね?

個人個人で世界に関する情報開示レベルが異なるこの世界である程度の年齢までみんな一律に過去を学んで世間に向けて「私たちはこれらを知っている段階に来ましたよ」と発表するの、こちらで言う成人式だなあ。

大人たちが「自分の時はこうだった」と盛り上がるのも成人式っぽい。遠野さんが劇でハリス役を掴んだのもそれをいつまでも自慢げに話すのも、普段の遠野さんが前に出るタイプじゃないだけにかえってハリス様ガチ勢っぷりがうかがえて楽しい。

ここケンカしてるっぽいプリンタニア押さえてニコニコ話してるのも妙に迫力感じるんだよね遠野さん…そのあと恥ずかしい過去ばらされてかわいくなるけど。推しを崇拝しすぎるファンじゃないの。思春期だな~。

 

一方なにやら永淵さんに意味深なこと言われてる佐藤。佐藤はプリンタニアと暮らすなかで昔と比べると他の存在やできごとに心動かされるようになったように見えます。同時にそこで培った経験で佐藤なりの関わり方をどんどん学んでいると思うんですよね。

めちゃくちゃ活発に友好関係広げるわけじゃないけど、たとえば悩んだ末に自分の思ったことを伝えてみるとか少しずつそれまでならしなかったような新しいことを始めてる。だからいろいろ起こるかもしれないけど最終的に佐藤は大丈夫だろうという信頼がなんとなくあります。

なんせ草って言われてるくらいなので。見てるこっちも落ち着くしかねえっていうか。草だし…

 

第60話

 猫にとってのハリス、マリヤはかさぶたになっている傷のようなものだと思っていたんですが、まだまだ生傷じゃないですかあ…残兵も復興のための障害ってだけでなく、存在意義を与えてくれた人をさらった相手なのか。こんな状況で思考力持たされて人類見守り続けてるの?猫…泣くよ…?

一度人類が終わった後、細々と再興しつつある状況の話だと思ってました。全然違った。続いている話だった。残兵も活動を終わらせられればいいというわけではなかった。その先に守れなかったもの、託されたものがあるんだね、猫。

人間に置き換えてみると無理は承知でも取り戻しにいくか、残された現行人類を失うのを恐れて強固に囲い込んでしまうかしそうです。そのどちらもが失敗する事実を見せられて、これからも間違い傷つくことを承知で人類を外に向かわせつつ見守ってきた猫のことを思うともう…

理性的な選択は(おそらく)機械として正しい。けれど思考力、それによって生み出される感情を抱えながらその選択をしている猫のことを思うとその正しさが切ない。オリジナルハリスに対する愚痴なんか、置いていかれてさみしい感情の表れだったじゃないですか。

これまで描かれてきたいろんなことの印象がガラッと変わる回でした。とりあえずギューンと来た猫のことだけ。そのほかはこれから。

 

第61話

 「迷うくらいなら行かなきゃいいじゃん…」と思ってくれる人がいても過去も今も行かずにはいられない人類たち、というまとめだったのかな。でも塩野が心配してくれる佐藤の気持ちも大事にしつつ先に進むのを決めたように、人類全体がいい方向に向かえてるといいですねえ。

佐藤みけんのシワすっごい…!そんなに表情筋うごいたんだ…!
塩野はやらかすかもしれないし(信用がない)人類はこれからも間違うだろうけど、凪の劇のしめくくりにあったようにそれでも進むことをこの作品は肯定してくれるんじゃないかと思います。

最後のコマで塩野や向井の行き先をプリンタニアたちが見守ってくれてるのはひとつの祝福の形じゃないかな。プリンタニアがついてるからね、みたいな。

事実、塩野は頭脳優秀だし外のことがもっとわかるのかもしれないと思うとワクワクしますね。断片的には描かれてきたけどプリンタニアやデコイの普及で変化があるのかな。
ハリスやマリヤのことも気になるけどまだ衝撃を引きずっているのでゆっくりでいいです…

 

遠野さんが向井さんに対してだいぶ遠慮ない感じになってて笑いました。そうやって今までのアレコレぶつけられるくらいが健康的でいいんじゃないでしょうか。向井さんはそれを引き受けるのが友人のつとめだと思って困り汗かいてて。

というか、はぐらかすより冗談交じりにでも責めたり不満をぶつけてくれるっていうのは一種の優しさじゃないかな。向井さんが自分で自分を責めないように。ほっといたら内に内に気持ちが向かってまた勝手に離れそうだものなー。

 

永淵さん、彼岸の件で出てきたときはミステリアスで浮世離れした人の印象だったんだけど、だんだん構ってほしいおじいちゃんに見えてきたな…意味深なこと言うのに自分のタイミングで切り上げてしまうのもおじいちゃん的。