さわやかサバイバー

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新九郎、奔る! 第15集感想

新九郎、奔る!(ゆうきまさみ 小学館)の第15集感想です。

 

 次巻予告時点では「龍王ー!おじちゃんの言うこと聞いてあげてー!!」と思ったのですが、第15集を読んでみたらいじらしくてけなげで別の意味で「龍王ー!」と叫んでました。

 

続きからネタバレ感想

 

 怖くてしかたがないのに「なら、どんな支えがあれば大丈夫だろうか」と自分で考え、他の人をよく観察して答えを出し行動に移した龍王はえらい。おぼろげで、だからこそ記憶の底に居座っている恐怖に立ち向かうなんて勇気があるじゃないですか。大人でもむずかしいし、かえって酒に逃げたりしそう。新九郎が作った仏像をぎゅっと抱きしめてがんばる龍王を抱きしめたい。

 

正直、フラフラしっぱなしの龍王を領主にして大丈夫か?とは思ってたんですよね。印象が好転したいまでも「時代が許せば領主なんかより自然研究のんびりさせてあげたい」という気持ちがあります。でも小鹿孫五郎との会話を通してあの性格が領主に向いてないと言いきれないんじゃないかと考えが変わりました。

武勇に優れ家臣たちからの評判もいい、周囲に推されて本人もやる気十分な孫五郎には勢いがあります。では逆風にさらされ支持を得られず、やりたくないけどやらなければならない事態になったとき孫五郎は上手く立ち回れるんだろうか?感情のまま不満をぶつける形になった龍王への挨拶を見れば疑問符が浮かびます。席を立ってしまったのはよくはないけど、泣きたい気持ちをなんとか抑えあの場を保ち役割を果たそうとした龍王のほうが困難が多い領主の務めを果たせる、ということもあるんじゃないでしょうか。

うーん、龍王がいじらしいから肩入れしすぎてるかも。向いてない人間がトップに立つのは悲劇だし、ましてや生き死にが関わるこの時代ならシビアになって当然ですしね。でもイケイケドンドンな義忠のせいで崩壊しかけた駿河がまたイケイケドンドンな領主になるのはやっぱり怖い。龍王を理解してサポートしてくれる体制が早くできたらいいのになあ。

 

しかしイケケドンドンな義忠が父でハツラツとした伊都が母とは思えない性格だよね龍王。姉のかめちゃんもおっとりしてたし。遺伝子の不思議。

 

そんなごたごたの中命を狙われる新九郎。刺客が素人同然で失敗したためか、なんだかのんきな空気で取り調べが進んでいくので救われます。主人公側が正しくても拷問とかきついよね。失敗して新九郎も刺客も命が助かり運がいい、と言う多米権兵衛の考えかたが素敵だ。ゲリラ戦得意ってことは非情な現実もたくさん見てきただろうに、この軽やかさはしたたかでかっこいい。あと彦次郎を彦さんって呼ぶのもいいよね。

この刺客の故郷の話、どう繋がっていくんでしょうね?荒らされた、という証言をもとに今川新五郎が問題なく領主代行を務めていたわけではない証拠を見つけに行くとか?

 

そして駿河の領主問題だけでなく、時期将軍のゴタゴタにも巻き込まれる新九郎。読者としてはわりとゆっくり進んでいるように感じる作品なんですが、新九郎の次世代の話が出てくると「えっもう!?」と驚いてしまいます。新九郎が苦労ばっかりで中心世代として世の中回してるぜ!って感じないからかもしれない。ごめん。

とはいえお子さんの誕生はめでたい!ほっぺつつかせてもらったり、ぬいさんとナチュラルにイチャイチャしてるのも和みました。ベタベタしてなくても「そなたの身体も腹の中の子も大事だからなぁ。」とさらりと言う新九郎から愛情が伝わってきます。伊勢備前守家と家臣がずっと仲いいのは本当にホッとできるところです。職場に赤ちゃん連れてくる三郎のとこもお気に入り。

 

業を煮やして武力をちらつかせる新九郎、自ら今川新五郎に会いたいと言う龍王、どちらもこれまでからしたら「らしくない」行動ですが…できるだけ荒立たずおさまってほしいな…