さわやかサバイバー

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新九郎、奔る! 第14集感想

新九郎、奔る!(ゆうきまさみ 小学館)の第14集感想です。

 

 応仁の乱終結し関東も和睦にこぎつけ、やっと戦をしないでいい世の中になったんだからみんな穏やかに暮らせばいいのに…と思ってしまう第14集。あちらにもこちらにも不穏の種が。

社会システムが機能して上司がそこそこの人間であれば新九郎は以前盛定父上が言っていたようにいっぱしの小役人として終えたんじゃないかなと思います。もともと野心があるタイプではないですし。

本来あった筋が通らない世の中になった結果、新九郎が通す筋がこれまでの枠に収まらないものになる予感が芽吹いてきました。ダーティーな手も使うようになるのかい…?無理に美化しなくてもいいけど引いてしまうくらい変貌しないでほしくもあり。ゆうき先生なので舵取りは信頼してますがちょっとドキドキしています。

 

とはいえ、まずはめでたい話題から!

 

続きからネタバレ感想

 

 新九郎、ぬいさん、ご結婚おめでとうございまーす!いやーよかった!性格が違いすぎる点は大丈夫なのかと思っていましたが「足りないところは誰にでもあるので補い合いましょう」という新九郎の一言で包み込んでくれて安心しました。自身はきちっとしてるけどそうではない人を受け入れられる度量があるんだな新九郎は。

新九郎の申し出に即答したぬいさんだけど、深く考えてないわけじゃなくて他人と暮らすうえで大事なポイントを自分から確認し、新九郎の答えに心打たれた様子が入っていたのは、短いながらも二人ともが歩み寄ろうとする姿勢を持ち、そうなっていくことを感じさせてくれるいい場面でした。

でも正直なところ自分が掃除したあとにそのつど硯箱の位置微調整されたらちょっとウザくな~い?どう?ぬいさん。文句言わず自分でやるのはえらいけど。笑。

 

太郎が「新九郎がみんなのためを思って真面目にやってくれているのはわかるが息が詰まる時もあったから、ほがらかなぬいさんが来てくれてよかった」と正直に打ち明ける場面もよかったです。太郎のほかにこういうこと言える人いないもんね。そう思っていたから家臣を連れての花見を勧めてくれたりしたんだろうな。しかもそこでぬいさんと出会えたのだから太郎の功績は大きいですよ。ねぎらってあげて。おかずやおやつたくさんあげて。

 

いまの御所に勤めてもぬいさんどころか誰も幸せになりそうにならないから、その面でもよかったです。

今回、既存のやりかたに疑問を持ち、自分の道を模索していくのは同じでも義尚と新九郎の違いを浮き彫りにするように描かれているのかなとも思いました。

戦の実情を知らず、安易に荒っぽいことを起こし自分の力を誇示しようとする義尚。金という誇りとか名誉ではどうにもならんところで長年苦労し、現実的にいまの制度に向き合ってきた新九郎。超リアリストの師匠を持ち金策上手な親類の手腕を間近で見てきた新九郎が、いまの制度がどん詰まりになり新しい道に自分の筋が通った時、あくまで必要にかられて画期的なことをしでかす、のかもしれない。もういまの時点で自分のことばかり考えてる義尚より本来そんなことを望んでいなかった新九郎のほうがスケールでかい変革起こしそうだし成功するだろうなと感じられるのが面白いです。

 

 

一時代の終わりを象徴する事件が最後にもうひとつドカンと来ました。有名なので知ってはいたのですが『新九郎、奔る!』ではどのタイミングで来るのかなと思ってたら帯~!そこは読む前にバラさないでほしかったー!

定正は以前から道灌の扱いに困っている様子だったので最後はもう見切る形になるのかなと思いきや、最後まで情が残っていたのが印象的でした。手綱を捌き切れなかったからこういう最期になってしまったとも言えるのですが、才能を認め擁護してくれていたから道灌もここまで活躍できたのかもしれず、しかしそれが他人からは増長に見え、道灌も周囲の評価を軽く扱うようになり…となにが正しかったのか悪かったのかはっきり言えないのが後を引きます。道灌本人が最後やる気と希望に満ちた一歩を踏み出した直後に切りつけられたのが切ない…

 

予告では龍王帰駿の文字が目に入り、おお、こちらは新時代到来かと思ったのに龍王~!?おじちゃんそのためにメチャクチャがんばってたのでそんなこと言わないで~!

 

先行き不透明ながらも時代は着実に移り変わっていっているようです。道灌のみならずビッグネームが退場する中、第一集から変わらず畠山政長を狙い戦い続けてる畠山義就…まだやっとったんかい!!元気だなー!!