さわやかサバイバー

好きな作品の感想を書いています。カテゴリー一覧は50音順で並んでいます。

新九郎、奔る! 第16集感想

新九郎、奔る!(ゆうきまさみ 小学館)の第16集感想です。

「あのヤクザのカチコミみたいなのが俺の初陣かぁーっ!!」
自分で言わんでも…!しかも2回遅れて。いや、この適度に肩の力が抜けてる感じが新九郎らしくていいんじゃないでしょうか。本編ではこんなことしてる場合ではないわけですけども…

 

続きからネタバレ感想

 こうなる前の今川範満は好きなキャラでしたし、もちろん新九郎は好きだし龍王のがんばりも応援したくなるしで多方面にしんどかったです…!ゆうき先生がX(Twitter)でこの家督争い終盤の展開には悩んだというようなことをつぶやかれていましたが、読むほうもつらかった…

誰が、とかどちらか一方が悪いのではないんですよね。関わるみんなどこか力不足だったりタイミングを逃したり予測が甘かったりということが重なって行き着くところまでいってしまったという印象です。

 

私の単なる想像ですが、龍王が不在のあいだ駿河を問題なく治めた今川範満を単に悪役にするのではなく家臣にそそのかされた愚か者にするのでもなく、この事態に持って行くには病による不安定さを絡めてこうするしかなかったのかな、と思ったり。

とはいえ、倒れた今川範満の「おやかたさま」という寝言を見下すように聞いている福島修理亮は怖かった。こうなったからには強引に動いても構いはしまいと冷酷に計算してるようにも、結局あなたの器はそんなところかと見切りをつけてるようにも見えました。

ただこれが彼の独断ではないところがうまくて。今川範満にも家督を自分の家に継がせたい思いがあったのは間違いないでしょうし。でも二番手くらいが本当は性に合っている立場で、家臣の訴えでも夢のお告げでも理由…言い訳と言ってもいいかな、がなければ動けない人だったから手を打つのが遅れてこじれてしまったのでしょうし。

 

では単行本の帯で「似た男ふたり」と書かれている新九郎がなぜ割り切って動けてるかというと「ひとんちのこと(伊都さま談)」だからいくぶん気楽…という冗談はさておき、「生真面目で真っ直ぐで慈悲深いだけではダメなのです、きっと」(第3集)ということが小さいころから身に染みてたからかもなあ、と思います。

基本的には読者が苦笑してしまうようなカタブツでも領地経営などを通して筋が通らない事態の切り抜け方を知っている。私は政治的かけひきの描写には興味がないと思っていたんですが第15集で地味に描かれていた調略が効いてきた場面にはおおっとなりました。地味とか言わないの。
ここ、使いに出されている家臣のキャラの違いも楽しかったですね。多米さんは裏工作に手慣れてる感じで太郎はにこやかさで押してて、それぞれ「らしいな~!」と思いました。

 

 

龍王と竹若のなかよし場面は数少ない和みポイントだったので、衝突は避けられないとしてもこの二人が力を合わせていける未来はないかと考えてしまいます。親の代の分断をこの二人の代でもう一度繋げないかと。孫五郎を討ち取れという新九郎の判断は厳しいけど間違ってないと思うし、その後にも火種を残すまいとすれば竹若を龍王の元で取り立てることは難しいでしょうか…

歴史には詳しくないのでそのあたりもハラハラしながら見守っています。次は秋か~!

 

 

そういえば堀越殿、頼れるナイスミドルで好きだったんですが「ああっ、やられた!いやでも捕虜とか…」と考える暇もなく首桶でショックでした。なのに「おなじみ首桶!これも大河ドラマ化フラグでは!」とか考えてしまう自分がやだ。なにそのフラグ。