さわやかサバイバー

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灼熱カバディ 単行本第4巻感想

twitterに上げた灼熱カバディの感想をまとめたものです。単行本第1~4巻分はpixivでの追いかけ連載時のものなので先の展開に触れている部分があります。

  

続きから第4巻ネタバレ感想

 

第26話

 「なぜその競技をするのか」スポーツものだったらメインテーマにしてもよさそうな題材を内容ではなく答えの速度からアプローチするのが面白い。他人からはマイナス要因に見えても思いは力になると描いてきた漫画だから、これが正しい、とは定義しないんですね。

この回から正式に登場する星海メンバー、最強チームだけあってアクが濃いんですが、その分これまでよりマンガマンガしてるように見えてちょっと気がかりだったんですよね。そしたら同時に初登場でいかにもな理系メガネかと思った神畑があんな熱い人だったので星海もがぜん楽しみになりました。

あと六弦が一気に親しみやすく!練習試合の時は六弦!!って感じだったのが歩くん!ぐらいになった。

 

第27話

 最強チーム、星海の様子が少し明らかに。畏怖を抱かせる主将、野獣系、うさんくさい策士、実力未知数の新人、と一見テンプレなんですが、きっとそれでは終わらないんだろうな。

 

家族の話がほとんど出てこない灼カバでめずらしく双方親子でエリートという話題が出てきた宵越と不破はこの方向でも話が広がるんでしょうか?キャラは全然違いますが「勝利が全て」という信条の共通点もある2人の道がどうクロスしていくのか気になります。宵越、普段「他人の事情なんか興味ないぜ」って顔してるけど、共感できるとこ見つけるとすーぐリスペクトしちゃうからね!そこがいい所。

あと宵越は知らないけど実は王城部長も親子でエリートだっていう。家族の話、出る時にはその人の芯にガッツリ関わってることが多いしなあ…前回分ですが「親父さんと似てる」っていうの、悲劇の繰り返し匂わせてて不穏だよぉ!

 

不破とは別方向で高校生に見えない冴木も海外遠征でお腹壊してたのかと思うとちょっと親しみわく。

それから、主人公が他競技のエリートで既に結構強いってだけでも異色なのに、まだ全盛期の力取り戻してないっていうのが面白いですよね。だからといってこの先も楽勝でないし、その理由がちゃんと分かるんだ。

灼カバ、強いヤツがどんどん出てくるワクワク感を出しつつ、強さがインフレするのを避けるようよく練られていると思います。経験が重視されていることと、誰にもその人だけの強くなりたい理由があり、それは他の人にはない大きな武器になり得ること、あたりが上手く作用している気がします。

 

第28話

 旧体育館使用権をかけた体育祭エピソードの始まりだー!ちなみにファンの間では騎馬ディと呼ばれてました。

現実より盛んではあるようだけど灼カバ時空でもカバディはマイナー…ゆえにカバディ部は弱小…練習場所さえピンチ…つらい…

そんな中でカバディ部をバカにされて一番に反論していく宵越の変化がうれしい。宵越も他人侮ったりしがちなんだけど、それでも対象や相手にすごいと感じられる所があればすぐに認めて態度も改められるの長所ですよね。先輩にも敬語使わないし(エリートだったから強制されることがなかったのかも)生意気な一方で、どんなに小さくても勝負事には本気で、全力で挑んだ結果は受け入れる素直さがあるから「偉そうなやつ」というだけの印象にならないんですよね。

あと前も書いたんですけど、この中では血の気の多そうな水澄が突き飛ばされた宵越支えるくらいで自分では突っかかって行かずに、でも冷たい目つきで睨みつけてるの好きです…

普段野郎ばっかだけど武蔵野先生女の子もかわいいんですよね。おっぱいの肉感がとてもいい。

 

第29話

 茶番劇からまさかこんな熱い話になるとは思わないだろがよ!

いかにも嫌なやつという感じで登場した安堂ですが、ただカバディ部を馬鹿にしているのではなく、自分が野球に情熱を注いでいる分、本気の勝負から逃げたように見えるマイナーな部がいっちょまえの顔をしているのが許せないという理由があることが見えてきます。馬鹿にする理由がメジャーかマイナーかの問題であればその違いは現在覆りようがないためお互いの理解は不可能です。しかし情熱、本気度の勘違いであれば通じる可能性が出てくる。そこを野球とサッカーというメジャースポーツを経験した伊達と宵越を通して溝を埋めてくるので説得力あるんですよね。

自分たちが負けるかもしれないのに相手を怪我から守ろうとした伊達の行動を、安堂はたぶん勝利へかける気持ちが弱いためと取っていると思います。しかし本気で挑み諦めざるを得なかった過去から来たものであることを宵越は知っている。それは自分も同じで、だから怒った。メジャースポーツと変わらない情熱を今カバディに注いでいる。それが伝われば通じ合えるという希望が見えた回でした。宵越が直接言葉にするだけじゃなくて伊達が間に入ることで野球という共通のかけ橋もできるし、普段は見せない先輩とカバディへの想いが見られたのもよかった。

物語序盤で自分のパワー不足に悩んだ宵越が伊達の部屋を訪れたちょっとしたエピソードが今回に繋がってくるのとか上手いですよねえ。あと先輩を笑うなと言った宵越を嬉しそうに見上げてる畦道のコマも小さいながら好き。分かるぞその気持ち!

 

第30話

 最初は馬鹿にしていたし、今でもカバディでなければならないという理由もない。だけどそんな宵越だから部外者になぜ情熱をかけるに値するのかを伝えられるということもある。

マイナーだからぬるいことやってんだろうという考えの安堂へ宵越の言葉が届いたのは、宵越も頭からどっぷりな人間じゃないからなんですよね。自分も最初「敵」だったから外と内の橋渡しになれるという主人公像はやっぱり独特で面白いなと思います。

「敵」という立場についてはこのインタビュー参照してください。いいインタビューです。またこんなの読みたい。→ 熱血スポーツドラマ『灼熱カバディ』に大注目! - 電子書籍はeBookJapan ebookjapan.jp/ebj/special/st…

マイナーだから自分だけの道を開拓していける喜びがある。困難もあるけど情熱をかけるに値するもので決して遊びではない。そしてその喜びは競技を問わず根本にある単純な喜びで、だから安堂も「ガキかよ」と呆れつつ共感し理解した。

ここの「新雪の上を歩く」というイメージがまた美しくてね。宵越は学ぶことに優れているけど、それは感覚的なものを分析し自分の言葉にした上で吸収する能力とも言えると思います。こんな詩的な表現でも発揮されるんだという意外性と共に納得もできる場面でした。あとすごいと思ったのは一旦靴の溝に入り込んでから落ちた雪まで描かれてる所。武蔵野先生なのかアシスタントさんなのか分からないけど細かいな~!

 

体育祭のエピソード、メタ的には「灼熱カバディ」という作品自体のことを描かれているようにも見えました。知らない人にはマイナーな競技を扱ってるから色物だろうというイメージで見られてしまいがち、だけど誰もが持っている情熱についての物語なので読んでもらえればもっと多くの人に共感してもらえる可能性を持っている。だから私はもっとたくさんの人にこの作品に触れてもらいたいです。

 

第31話

 高校生!夏休み!とくれば海…じゃないね山だね!?脇目も振らず合宿に入るストイックさ好きだけど、ちょっとかわいそうかなと思ってたら山でもはしゃいでたのでニッコリしました。能京メンバーの何でも楽しむ雰囲気好きだよ。あ、カブトムシに夢中な伴くんかわいいのでチェックしてみてください。

宵越と同じく王城部長を師とする佐倉くんがなぜ宵越に「王城部長の力になること」を託すのか、なぜ尊敬していながら他校にいるのか、勝負事の世界にいる人間にしては違和感を抱かせる言葉に隠された事情は今後描かれるのでお楽しみに。ちなみに私は佐倉くんの一連のエピソード、めっちゃ好きですね…

 

第32話

 始まったよ!合同合宿!戦闘民族がノっちゃったからのっけから練習試合だよ!普段にこやかな王城部長やメガネのいかにも頭脳派っぽい神畑がすぐスイッチ入るギャップがいいよね。

神畑なんかはデータを取れる時に取ろうと冷静に判断してるのかとも思ったけど宵越に話しかけられた時(今…いいのか?のコマ)に闘気みたいなの地味に放出してんですよね。減量中を理由に試合に出なかったけどやる気満々だったでしょこれ。

八代が紹介しているように英峰は体格や能力が飛びぬけて優れた選手が集まる訳ではなく、その中で適材適所の起用やチームワークで上位にこぎつけたチームです。この時点では「ははーん、進学校によくある頭脳で戦うタイプだな」って単純に思ってたんですよこの時点では。安っぽい展開だとそういう頭脳派チームって主人公たちの予想外の根性から生まれたパワーでひっくり返されたりするじゃないですか。英峰は主人公たちを圧倒するくらいの熱い思いに裏打ちされたチームワークで戦うチームなのでこれから読む人は安心して裏切られてください。どんな思いを経てその道を選んだのか知ったら「よくあるタイプとか短絡的に判断してごめんよぉぉ!」ってなりましたよ…

 

あと見開きのスピード感の出し方、あんなの私初めて見た。宵越のモノローグが書かれている右側ページには既に若菜はおらず背景と効果線のみで、左側には詰め寄られた宵越と若菜の姿。考えてる一瞬の間に近寄られた宵越の追体験をさせられたようで驚きました。かっこいい…

 

第33話

  ホント毎回出し惜しみしないな!今回の焦点はここなんだな、と思うさらに先が描かれるから興奮せずにはいられない。マイナースポーツで、現実を少し拡張したくらいのリアリティで、分かりやすく「その選手の能力はカバディでどう強みなのか」を描けるってすごいよ。その強みを持つに至った経緯もちゃんと描かれるからドラマも盛り上がるんですよね。以前インタビューで第3巻までで大体基本のルールが描けたから、これからはもっと戦い方のバリエーション広げられるみたいなこと武蔵野先生が話されてたけど、早速そういう展開になってて、この先も楽しみ。

今まで描かれてた宵越の圧倒的な反射神経、それを上回る若菜の速度、ときたらそれを攻略するには?でページ数使えるじゃないですか。さくっと攻略して、その根拠は既に描かれてたって展開になって、ああ、あれがここで効いてくるのか!って盛り上がるさらにその先があるんだものなー!どんだけよ。

 

第34話

 強くなるきっかけを見つけた宵越はそれをもう自分一人のものとは考えてないんですよね。自分以外に目を向けられるようになった彼から出た「他人事じゃねーだろ」って言葉が成長感じられて嬉しい。

以前、他人と連携なんて不可能だから勝つためには自分一人が強くなるしかないという考えで結局孤立してしまった宵越が、カバディで仲間と繋がることを知った。「越えていくぞ」は宝の山に例えた様々な才能を自分のものにしていくという以外にも行き詰まった過去を越えていく、というようにも読めます。

 

コピー型のキャラって結局はオリジナルを越える印象なくて、体格の良さという武器があることを示されてもこの時点では佐倉くんをそこまで脅威に感じてなかったんですよね。読み返すとやっぱり宵越は鋭かったんだな。

あとあんなに過酷な減量してんのに他の人に差し入れ持ってきてあげる神畑優しい…いや、頭脳派の彼のことだから餌付けして警戒心ゆるめて情報引き出そうとしてるのでは?(牛乳1本だよ)