さわやかサバイバー

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灼熱カバディ 単行本第12巻感想

twitterに上げた灼熱カバディの感想をまとめたものです。

  

続きから第12巻ネタバレ感想

 

第107話

 能京に立ちふさがる「壁」ってコートの外が要因なのはほとんどなくて、ほぼ試合相手の努力によるものなんですよね。フェアですがすがしい。だからここまで追い詰めた律心を賞賛したくなるくらいなんだけど…それはそれ!奮起してくれ伊達ーっ!(決めつけ)

最初得体のしれない悪役じみた相手だと感じていた律心を、今では正当な強さを持つチームと指導者として尊敬の念を抱くようになってる。自然とそう思えるようなエピソードを積み上げ、顔の見えるライバルとして立てていく手腕はいつもほれぼれします。

奏和や紅葉といった因縁の相手と当たるだろうからここで負けることはないはず、と頭の隅で思っていても「これどうやって勝つんだ…」と打ちのめされるくらい律心の作戦と強さに説得力があるからもう緊張感続きっぱなし。

同様にスペック高い部長や宵越が活躍できなくなる状況にも説得力あるんだけど…武蔵野先生ホント主人公甘やかさないね!あんなに葛藤しつつがんばった守備出しどころがないって。井浦が指導してた守備の形が活かされないことはない…はずだよね?

 

第108話

 更新されてるなら書かねばなるまいよ!新年一発目の灼カバ感想行きます今年もよろしく!筋肉が裏切らないなら裏切っていたのは俺なのか。仲間の奮起に活を入れられ、ためた鬱屈の分だけ晴らした爽快感は年明けにふさわしいね!(1月1日の更新でした)

大和に向けて発せられた水澄の言葉を伊達は自分を奮い立たせるものとして受け取り、水澄はそれに伊達が応えることを当然と感じている。直接言い合ったわけではないのに呼応しているのが二人の信頼関係の深さを表してますよね。

読者的にはウォォォ!となる熱い展開なのに水澄が「これくらいやってもらわないと」っていう反応のギャップがね。ごめんねえ私たち相棒のお二人のように理解が深くなくてねえ。でも内心テンション上がってるでしょうれしいでしょこれは。

 

冒頭、大和が筋肉量で勝負どころを決めましたが、その点でさらに上回るという逆転もカタルシスありました。

大和は自分で野球の才能に見切りをつけ、早々に次の舞台へ進んだ。仲間集めも指導者選びも自分主導で行う無駄のないスマートな道です。伊達は怪我を理由に辞めたけど才能や性格へのコンプレックスはそのままでした。

慎重すぎて踏ん切りがつけられない性格だったから、ここにきての覚醒に意外性があって功を奏したと言えます。それでももっと早く力を発揮していればこんなピンチにまでならなかったかもしれなくて、ただ単にド根性逆転素晴らしいという話にしてない。

また、大和の合理性と体格が生み出す強さをこれでもか!と描かれているからチープになってないんですよね。大和には大和の強さがあり、伊達には発揮できなかった分ため込んだ強さがあった。双方の強さがぶつかる、いい勝負でした!

 

第109話

 因縁の相手に一矢報いてやったで終わらないんだ!たとえ負けても悔しさが糧になる、と自分の経験を成長につなげた実感があるから、この勝負所を1年生に託すことができる。灼カバいつも私の予想より未来を目指してる。

以前もあったけど失敗してもフォローしてやるから挑戦してこい、って先輩たちが送り出してくれる能京の雰囲気ほんと好き。負けたら終わりの試合だし雪辱を果たした結果を残したいだろうに、できた先輩たちだよ。

 

ここで宵越が出ることにちゃんと戦術的な理由があるのがいいですよね。体格に恵まれ、ほぼオールマイティにこなせる、そして学ぶ能力に秀でた彼だから律心の対策を上回る変化を付けられると判断された。

読者はすでに宵越の強みをじゅうぶん分かっているのに、それでもここまで活躍できなかった理由、ここに来て活かせる理由が納得できてなおかつ驚かされるというのはすごいことですよ。

そしてこれは能京の「合理的な」判断と言えるんですよね。結果のために感情を抑え込んだり何かを切り捨てたりという、短絡的でマイナスイメージの「合理」とは違う。チームみんなが理解したうえで目標に一番近い選択をするということ。

エピソードを重ね、律心の「合理的」な方針のイメージもいまや後者となっています。最初正反対くらい離れていた能京と律心の印象が重なってきた上でのクライマックス、どんな勝負になるのか…昂る!

 

第110話

 守備への意識とかピンポン玉キャッチとか、これまでなかなか芽が出なかった努力が一気に実を結び始めるの、こんなん興奮するわ!

そのうえこれは学ぶことに秀で、再現できるスペックを持ち、土壇場で初めての試みを成功させてしまう宵越の持ち味が複合的に発揮された見せ場でもある。興奮するわ!しかも外園が言うように1回戦の経験も活かされてる。よくこんな集約された展開に持って来たな武蔵野先生!

攻撃成功のとき、焦点を合わせないような視線になっていましたよね。王城部長と出会ってすぐの時、無意識に部長の攻撃方法を真似ていた場面思い出しました。深く集中することで余計なものが頭から追い出され、持てる力がすべて発揮されたということでしょうか。

王城部長の反応が描かれてないもの気になるな。やっぱり悔しがってるのかな。部長の真似ができたのはあれきりだったけど、今回の攻撃を今後に活かすには再現できるよう理屈が分かってないといけないかもしれない。それができたら宵越、一段階上に行くのでは…!

 

第111話

 雪辱を果たし「その先」に繋がる宵越の成長もあり、能京にいい流れのまま迎えたクライマックス。ここに来て決め手が守備となる、つまり因縁の2年生が要になる展開になるのは痺れますね!

指導者同士の因縁も加わったり、王城部長のフィジカルや宵越の守備意識へも話を広げておいて、最後に2年生が鍵となるのは締めるところ締めたなって感じで気持ちがいいし、ここ越えたら再スタートって道標にもなってると思います。

そこに至るまでに伊達の活躍が効いてるのがうれしいじゃないですか。一瞬光っただけではなく有利な状況を引き寄せるくらい効いてる。単にドラマが盛り上がるだけでなく、その成長が戦術に関わってくるのがスポーツものとして花丸なんですよね。イメージ画像がゴリラなのはあまりにもまんまで笑ったけど。ゴリラには近づきたくないよな…

 

灼カバって名前に意味付けされてる漫画で、亜川監督がよくある「阿川」でなく「亜川」なの、「次位の」とか「準ずる」って意味の漢字を当ててわざわざ「日本一の守備」と言われた久納コーチ(しかも下の名前は「栄光を司る」だ)と比較するー?えげつなーい(好き)って思ってたんですけど、回を重ねるごとに下の名前「公継」が存在感増していくのがいいなあって。メインストリームには乗れなかった人間がもがいて獲得したものが指導した選手を通じておおやけに継がれていくんですよ…いい…本人はトップになれなかったという苦さも含んでいるのがいい…

 

第112話

 キャッチの動作、守備連携成功カウント、両者が「1」になる瞬間を重ねた演出、痺れる…!
優れているがゆえに他者と歯車がかみ合わないっていうのはサッカー時代のトラウマだったと思うのでそれを乗り越えたうれしさはいかばかりか。泣けるぜ。

畦道や関といった、同じ1年、カバディ歴もほとんど変わらない選手が先に守備や連携を成功させてたのも、これが単にスペックの問題ではないことを示し、宵越でも、宵越だからこそ簡単に超えられない問題であることを印象付けていました。

部活もので3年生が目標になるパターンは多いと思うんですが、2年生二人を宵越が苦手とする連携のエキスパートにしたことで2年生も大きな目標となったっていう武蔵野テクニシャンの配置が素晴らしい。

一度も成功したことない連携を成功させたあとの信じられないような宵越の表情がこれまで見たことなく胸を突かれました。普段あれだけ自信満々なあいつがあの顔ですよ。お前だよ!お前が!成功させたんだよ!

その後水澄の「一朝一夕じゃないもんな」という言葉を受けて、ようやく実感したかのように喜びを爆発させるのいい反動ですよね。簡単には届かない領域があることを見せつけられた時と同じ言葉で今、自分がそこに近づいたことを認められるって。もう演出キレッキレなんですけど!

 

第113話

 見えすぎるくらい物事がよく見える大和が欲した「一番」
知らなかったからこそ欲したのだと思うけど、仲間と何かを達成する熱さや楽しさも知らなかったから欲していたのかもしれない。これを劇的に描くのではなくて淡々とした回想シーンと個人競技を選ばなかったこと、その直後の「負けませんよ 律心は」というチームを指した大和の台詞や表情で伝えてくるのが素晴らしい。

いつも冷静な大和らしさはブレないんですよね。だからこそほんの少し口の端を上げるだけの表情の変化がガツンと響いてくる。しかもこの表情、歯を食いしばって悔しさをかみ殺しているようにも見えるんだ。

大和にそう思わせたのが、楽しさや情熱は知っているけど結果が出ないうちにすり減らせてしまった立石たちっていうのがいい。お互いに欲していたものを与え合うことができたんだなあ。こんな展開を合理性重視!って言ってたチームで見られるとは思わないじゃん…序盤と今では合理性の意味もだいぶ違って感じてはいるけど。

いつの間にか存在感増していた立石がそうだったように、灼カバはエースに対する副将の描き方もいいんですよね。エースの力に引き寄せられ引っ張られるだけでなく、副将がエースに与えるものも同等以上に多い。

いよいよ試合終了となりそうですが、指導者同士の反応も気になるなー!それぞれ力を見せた相手をしんみり称えるのか遠慮なくぶちまけるのか。

 

第114話

 指導者同士の対話、しんみりよかったな…亜川監督の印象変わった。結局捨てられなかったこだわりのせいで負けた、ではなくあれが亜川監督の「勝ちたい」の源なんだと思います。

亜川監督が指導者として選手を勝たせようとするの、選手としてトップに立てなかった頃の復讐めいたものも感じていたんですが、自分のように踏み台にされる選手がいなくなるように、って、ちょっとここに来てそれは卑怯…

超えられない壁を感じさせるくせに、分け隔てなく接してくる久納ちゃんを憎みきれないところもいい人にじみ出てるじゃないですか…試合では切り捨てられる存在だった亜川監督をいち選手として見てくれてた感じだもんな…

それにしてもパフェでけえ。

 

灼カバメンツ、バチバチに対抗意識燃やしても同じ競技で切磋琢磨する仲間感もしっかり描かれるの好きなんですよね。やっと2回戦以降の舞台に上がってきた能京に嬉しそうな顔が隠せないライバルたち…こっちの顔もにやけるぜ…

あと安堂とランチ食べられなくてシュンとする外園がかわいい。さっき出会ったばかりだぜ?部活を人望で引っ張ってた感じだけど普段からひとなつこいんだなー。無理やり連れてこられたからビタイチ興味ねえみたいな態度だったのに、きっちり火を付けられて帰る安堂もお約束でかわいいぞ!

 

第115話

 サムネイル見て「真剣な作戦会議の回なのかな…」と思ったら違った。仲良く夏休みの宿題片付けて遊ぶ回だった。そんなほんわか回にも選手として過ごせる夏をかみしめる3年生の姿を挟んでくるのは反則だよ泣くよ。負ければ終わりの切なさと紙一重だもん。

こういう集まりに宵越がすっかりなじんでいるのも泣ける…ていうか餌付けされてる…そしてこないだせっかくかっこよく1になったのに0に戻ってやがる。プロになったとしてもセカンドキャリアは大切だから勉強しようぜ。

灼カバは日常回かなと思ってもきっちり競技に絡めてくるんですけど、ガチガチにストイックというわけではなくて世界観壊さないギャグをいい感じで入れてくれるナイス塩梅なんですよね。そこも好き。

アニメ化したら「本編ではほとんど描かれなかった学園生活をおすそわけ!『ほどほど?カバディ』」とかってかわいい絵柄の新人漫画家さんが描くスピンオフ始まるから日常はそれで見せてくれたらいいですよ(皮算用

 

第116話

 おばあさんとの会話、内容もなんですけど心情に合わせて佐倉くんの吹き出しの形が変化しているの細かくて感動。周りの人への感謝が原動力となっているのは優しい佐倉くんらしくて好きだけど、彼自身が燃やす熱情が最後に表れるのたまんない。

好戦的じゃない、優しい人が勝負ごとで強くなりたいって思うきっかけが、成長した姿を見せたい、恩に報いたいという気持ちなの納得できるし、それだけでも上手いと思うんです。そのうち他の誰でもない、その人自身のうちに火が生まれていたことが分かって熱さに繋がっていくのを読んで「あっ超えた」と感じたんですよ。何度も書いてますけど、合宿外周レースの泣きそうな横顔でそれを伝えたっていうのが本当に素晴らしくて。それで佐倉くんのファンにもなりました。

「とてもしっかりしてて強そう」それがおばあさんの中の佐倉くんとイコールで繋がってなくても、見てほしかった姿が届いたと言えるのかもしれない。願いはすべて叶うわけではないけど、やってきたことは決して無意味じゃないと描く苦さと優しさのバランスが好きです。

 

好きでやってる部分も大きいんだろうけどヒロの献身っぷりマジで偉い。それを意識させないキャラクターもすごい。どこまで素でやってんだ。でな?でな?そのありがたさを誰よりも分かっているけどわりとぞんざいにツッコむ佐倉くんがまたいい。気の置けない友達プライスレス…

佐倉くん夏休み前と違くね?って言ってる卓球部の肩に手をまわして「かっこよくなったよな…?」ってささやきたい。

 

第117話

 紅葉対奏和、能京に因縁あるチーム同士の対戦が始まってしまった…正直どっちにも勝ってほしいから困る!六弦は3年だから王城部長と公式で戦える最後の機会だけど、でもそれをいうなら佐倉くんだって部長と公式で戦えるのはこれきりだし…!

初めて姿を見せた奏和の2番がどういう選手なのかも気になります。奏和は頭脳派がいないのがやや弱みと言われてたけどそこを補う人?でもガタイいいからフィジカルで勝負するタイプなのかな。

 

この試合の注目ポイント、二人の天才。高谷は相手を舐めがち、佐倉くんは逆にリスペクトしすぎ、って面はもう描かれてるし、ここであらためて悪癖と指摘されるものではないのかな。あの書き方だと共通した癖っぽいですよね。才能があるぶん、才能に頼りがちってこと?

宵越の反応から見るに合宿以降で佐倉くんさらに成長したってことですよね。あの短期間で。かっこいい…ハァァ試合楽しみだけど決着つくのが今からもう怖い。見たい!見たくない!見るけど!