さわやかサバイバー

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灼熱カバディ 単行本第20巻感想

twitterに上げた灼熱カバディの感想をまとめたものです。

  

続きから第20巻ネタバレ感想

 

 

第191話

 ああもう、こんなん一気に心を持っていかれてしまう。すごい人がどうすごいか分かるのも才能なんだよ。本気で近づこうとしたからこそ、力の差を実感し離れる決意をした人に外からどうこう言えないけど、少なくともそんな顔で終わらせたくないよ…!

最後のページ読んだ後「ほらぁー…もうーそうなんだよもうー」と倒れこんでうめいてました。直感で動くタイプに見えても考えてない選手なんていないし、何にも惑わされず進んでいるようでも切なさや屈折抱えてるんだよ灼カバの登場人物は…

それなりの期間ファンやってて知ってたつもりでもやられてしまう。どうしてたった1回でこんなに好きにさせちゃうの。

 

グラフの演出、新しいですね!下降するラインだけを見せて軸が何を表すのかを見せない。不安がかきたてられて、あれだろうかこれだろうかと巡らす予想が作品の領域を広げているような感覚。読者の想像力も使って作品作りされてる。

そのグラフもさあ!自信の軸、下降しきったあと上向きになってるじゃん!山田、自分でも分かってんでしょう?そこまで粘れんか…?

「駿」はすばやいという意味の他にすぐれた人であることも表すのだそうです。いいと思ったら世界のトップ選手にすら物怖じせず働きかけるフットワークの軽さはこれまで見た彼の印象通りだったのですが、すぐれているからその先まで見通してしまったんだな…

 

水澄に対する六弦の言葉、王城部長を意識しすぎていたプレーから抜け出した経験からのものだとわかるのが細かいしうれしいですね。不破にも言われてたもんねフフ。

 

佐倉くんと高谷、二人して同じように笑ってるのがカンワイイんだけど(二人とも水澄にやられたもんねえ)佐倉くんが好きなあまり高谷に対してひねくれてしまった私の感情がジタバタしている。私をどうしたいの武蔵野先生ェーッ!今の絵柄での長髪佐倉くんはありがとうございましたァーッ!!

 

第192話

 山田の切ない心情が打ち明けられ、後輩は彼と自分たちの勝利のために闘争心を燃やし…ません!ハイしません!やりづら…とか思ってる。
とはいえ彼なりの強みや、この大会にかける想いがチラホラ見えてる感じで。新しいパターン来たな…!

 

奏和戦がめちゃくちゃ熱かったし、決勝リーグだし、前回のヒキはあれだしで気負って臨んじゃう訳ですよ。したらこれですよ。掛けても掛けてもはしご外され続けるみたいな。いや確かに同じことやっても仕方ないんですけど!笑わしよるわ冬居…

武蔵野先生のバランス感覚すごいですよね。ヴィハーンの実力や山田の心情で正統派の熱い展開もきっちりやってる。その展開の中で浮いてないじゃないですかネタが。いやおじさんは唐突だったな。なんなんだよおじさんってー!

 

先生かアシスタントさんか分からないけど、幼子が絵本読んでるホンワカしたコマにどんだけネタ詰め込むんですか。手酌のクマちゃんやらグラのタンやら。グラのタン(舌)がグラのタンに!?オーブンでブン!?

でもそんな小さいころからお隣さんだったの。フーン?ってことは山田に振り回されながらも一緒になんかやってるのが当然みたいになってんでしょ?んである日突然山田にカバディ辞めること告げられたってわけだ。フーン…
…なんでまたそういうことするんですかあー!!(拝みながら倒れこむ)

これだけ笑わせといて死刑同時宣告みたいな!感情の大波でお前は死ぬみたいな!ちくしょう楽しみだよ!

 

「来ないんかい!!!」ヒーお腹痛い。伊達のこんな全力のツッコミもめずらしいですね。おふざけのノリでつっこむことはあるけど。本気で言ってるのがかえって極上のネタになってるじゃんもう。

「オカルト関係怖いけど人間だったら平気って、試合での容赦のなさがもう想像できてしまう」って以前の感想で書いたんですけど、全然違ってたな…でも怖がるのが力になるって面白い。

 

可能性が低くてもゼロとは言いきれないので佐倉くんの言うことが正しいです!あとかわいいです!ドひいきです!

 

第193話

 体格が恵まれていない分を補うために身に付けた特殊な技、という認識で定着して、それ以上深く考えてなかったカウンター、ここ最近の展開で詳しく説明されるたびに技とそれを習得した王城部長の異様さが増していきますね。まだ先があったんだ…

登場した最初から強烈だし強力だし、見たことないような技だけど、あんな熱意のある人なら習得できちゃうのかもしれない、で思考停止してました。そこに加わる「10年」「習得はほぼ不可能」「攻撃でしか使えない」「プロでも選ばない」えっこれやばいやつでは?(いまさら)

 

合宿で英峰に止められた時から無敵ではないと描かれてはいたんですよね。部長ならきっとその先を行ってくれるだろうと思っていたし、実際すぐ改良していたけど、今回「なぜカウンターなのか」を掘り下げるとともにオーバーホールする、みたいなことになるのかな?試合前に久納コーチと特別練習してたもんね。

こちらの予想を超える速さで登場人物が成長していくのも灼カバの好きなところなんですが、最初から最強レベルだった選手をこれからどう描くのか、楽しみです。

 

王城部長のチャームポイントを知って対戦時の怖さを乗り越えよう作戦、内容でも笑うし、ちゃんと試合で機能してるのも笑ったんだけど、その後の「解像度は低い方が楽しいし」で急に切なくさせてくるのなんなの…!

「みんなは舐めてかかるくらいでいい」ってホラそういう!灼カバの部長、すぐ部員のために自分だけしんどいとこ背負おうとする。優れているから見えてしまう恐ろしさを自分だけが受け止めて部員守ろうとする。外園とかもそうだったじゃん。バカ!好き!

冬居が前回「みんな同じ人間!高校生!」って自分を奮い立たせてたのも山田の指導方針が影響してたのかな。にしてもホワイトボード「王城のすべて」って。親しみやすさアピールの内容といい、これオタクがやる好きなジャンルプレゼンでは?

 

王城部長が相手を近づけない様子を見てる六弦、すっごいうれしそうね?ライバルが強くてうれしい関係、こちらも笑顔になりますよ。いいよね。

  

第194話

 世界MVPがなぜ自国よりレベルの低い日本に?って疑問はありましたが、深刻な理由がありそうで。明るいキャラクターに油断してた…奥武戦、コメディ挟みながらいきなり急所狙ってくること多い!でも山田はヴィハーンの実力信じてるんだな。なにがあるの…

灼カバ、登場人物たちが予想を超える速さで成長することはあっても、その逆ってなかったですよね。過去編を見れば当然それを上回るプレーを期待するし、実際足技が派手だったので弱くなってるなんて思いもしなかったです。

なにがあったのかわからないけど、冒頭のイメージ風景を見るに、王城部長のような道を選ばなかった、あるいは選べなかったことが精神的にも歯止めをかけているんでしょうか。それがプレーにも影響してるとか。

カウンターの話の時に「ちょっと得意」って言ってたから、他の人よりよっぽど彼には適性もあるだろうし、自覚もしてただろうし。

 

今回、期待外れなプレーを見せるヴィハーンに対して王城部長がいらついてる様子を見せてましたが、嫌いじゃないです、こういうの。いろいろ常人とかけ離れてるところが多い王城部長だけど、達観なんてしていない一人の少年、王城正人でもあるところが見えた気がして。

試合前の外園との会話や回想場面でも決して完璧じゃない、いい人なだけではない部分が描かれていましたが、それが人間らしさに繋がってるんですよね。

他の登場人物もみんなステレオタイプから外れる一面があって、驚かされるけど納得できるからより深く好きなってしまいます。
武蔵野先生がどんなふうに登場人物の肉付けしていくのか聞いてみたいな。

 

第195話

 いままで無邪気に信じていられた自分の才能に先が見えないとなれば、どんな人だって行き詰まると思います。対照的に浮かぶのは成功する可能性の少ない技に取り組み続けた王城部長の姿。彼をきっかけにヴィハーンにも変化があるといいのですが…

山田もなー…王城部長は並外れた人だけど、だからといって「自分たちとは違う」と断絶させてしまわないのが灼カバだと思っているので。ここ最近、完璧じゃなかったりいらついたり、人間らしさも描かれているのを見ると余計そう感じます。

才能だけで問題なくやれていた人が壁にぶつかる状況は佐倉くんを思い出します。彼は王城部長に出会って身体の使い方を一から学びなおし、成長に繋げました。練習方針も大人にゆだねていたヴィハーンがこの試合を通して自分から「こうなりたい」を見つけるのかなと思うし、そうなってほしいです。

と同時に、じゅうぶん考えてるし行動にも移してる山田の救済はどうなるんだろうという疑問が。彼の場合は先が見えてしまった(と思っている)がゆえの落胆ですもんね。気持ちだけでは走り切れない現実も描いている灼カバだから、どういう形で道を開いてくれるのか楽しみです。

形は違うけど、二人とも選手としての自分に未来が見えない、というのは共通してるんですよね…

 

はぁぁ~もぉぉ~それにしても絶望のディティールが細かい!具体的に描かれてるから同調しちゃってこちらの胃まで痛い!目を背けていた負担が臨界点に達し、表に出て直視せざるをえなくなった事実が彼をさらに苦しめているのが痛々しいです。

以前読んだ本に、読者に感情を伝えるためにはエピソードを書けとあったんですが、時間経過の場面はまさにそれですよね。前後にわかりやすいモノローグや説明はあるけど、あの場面があるから説得力が段違い。

 

「倒してきた人たちを裏切ってしまう」と苦しむヴィハーンを見ると、対戦した外園から「誇りに思う」と言われた部長の対比になっているようで、これも辛い。
早く彼が自分自身を誇りに思えるようになってほしいですよ…!

 

第196話(前編)

 イヤーッ!しんどいの連鎖!もっと冷静になれば他に取れる方法があったのかもしれないけど、前に進もうと、友達を助けようと精一杯行動した姿を知ったら、とてもそんなこと言えない…!

灼カバは努力や積み重ねを重んじる一方、やみくもでは駄目だとも描いてきたから、きっとまだ足りない部分があるのだと思います。才能任せだったヴィハーンは特に。でも、そうせざるを得なかっただろうと理解できるから「もうなんでもいいから救われんかい!」って思ってしまいますよ…

苦しむヴィハーンを見て、日本に誘った自分の行動が間違っていたのではと、山田まで落ち込んでいくのが辛い。考え抜いた先に未来をあきらめた人に、過去まで否定させないで…!

でも逆に、ヴィハーンが日本に来た意味を見出せたら山田も救われる可能性があるのかな、って思った矢先に…ここで留まっているのもしんどいんですが、不破の話が出た直後にあれは不吉すぎて先を読むのも怖いっていう。

行き先が見えなくなっているヴィハーンに、本来前へ進む足元を守ってくれるはずの靴が傷つけてくるとか、すごくよくできた残酷さで今回も胃が痛い!鬼上級者か先生は…必ず後で希望を与えてくれるだろうけど…

 

第196話(後編)

 よかった…!ほのめかされた最悪の事態は避けられてよかった…とはいえメンタル面でまだ出口の見えない奥武に思わぬ方向から糸口が、というかなんというか。だからそうするためにはどうすればって話でしょ切り出し方ストレートすぎー!

 

更新分読みたいけど、あの続きを知るには気合がいるな、でも気になるし…と覚悟して開いたら、王城部長が即受け止めてくれてて、胸をなでおろしました。前回からずっと詰めてた息をやっと吐けたような。よかった…

落ちてもっと酷い事態になりかねないところを、手を差し伸べて救ってくれたのは体に対してだけではなくて心もですよね。比喩になってるのは体勢もそうで、王城部長が上でヴィハーンが下なのは、この時点での力関係も示しているように見えます。

それが部長にとってやりきれないことであるのは表情から見て取れます。見上げるくらいでいてほしかったんだろうな。いい場面なんだけど、そうなってしまったこと自体が切なくて、後から後から揺さぶられます。

でもヴィハーンが見上げた先、王城部長も王城パパも、光を背負っているのは希望の象徴だと思いたいです。
王城パパ、あごひげちょっとある(自分用メモ)

 

そりゃ「なんでもいいから救われんかい」とは言ったけど!思いっきり外部からだったー!大会の規定的に他校選手がアドバイスするのはいいの?ていうか、そもそも試合中に入っていっていいの?

とか言ってますがね、奥武戦前から描かれてきた世界組の繋がりがこういう形で活かされたか!とニッコニコですよね。仲間であり敵である関係が見せてくれる新しい展開だ。能京に対して敵味方超えた関係が築かれるなら、他のチームだってありえますよね。

「悪いね」とは言ってるけど結局仲間思いの行動でもあるから外園をまったく悪く思えないー!むしろ相手を欺く策士な面がまた見られてうれしい。もう強すぎてどう転んでもナイスガイ…!

 

第197話

 はー好き…!失礼、好きが先行してしまった。六弦の「相手の長所を素直に認め取り入れられる」ところ、外園の「胸中を引き出し核心を見抜ける」ところ、らしさが存分に発揮されて物語が動いていくの、上手いし二人をもっと好きになるし、メロメロですわ。

 

片桐が出て来られなくなった時、六弦もいろいろ調べてたんだ…!今それが出て来るとは思わないじゃん。時間差で無防備なところ狙われたらヤワヤワじゃん。撃ち抜かれるじゃん。背中で引っ張るタイプに見えて仲間のことよく考えてるんですよね。高谷のことも。

六弦が「気にしてもしょうがない」と、気持ちに寄り添う言葉をかける時に、しゃがんで目線を合わせる気遣いもいいな…あと「シャッッ」2個目の「ッ」必要なんだ。フフッ。

 

アドバイスしに来たよ!でも話すのは君たちだ!でツッコませて空気ゆるんだところにスルッと入り込んで核心突くって、あいかわらず人心掌握術がすごいんだわ外園。あのキャラで警戒心抱かせないし、善意でそうしてるのがわかるから、進んで心開きたくなっちゃいますよね。

 

アカデミーからの知らせよりもコートへ行きたがった時の笑顔とは違うのが切ないけど、それでもその原点をヴィハーンが思い出してくれたのがうれしいです。久納コーチのあの表情は王城パパの思い出に向けたものか、ヴィハーンの境遇に向けたものかも気になりますね。両方かな…

動かない手を切り捨てる思い切った選択にも驚きましたが、それで軽くなったかのように、急激な緩急に繋がるのがまた!ドラマと直結した具体的なパワーアップでもう大盛り上がりですが、種明かしにも期待です。


緒方くんのとなりでカメラ持ってるのは奏和戦でメガネさんに撮影の代わり申し出た選手ですよね。こういう細かい繋がりもうれしい。彼、今後も出てくるかな?

 

英峰と星海の対戦、英峰が勝ってるのはうれしいんだけど、あまりにもさらっと触れられてるのが逆転フラグに思えて怖い!悲願があれで終わりじゃないでしょ。今後あらためて試合の様子が描かれるといいな…!

 

第198話(前編)

 実を結ばなかったと思われたアカデミーでの経験が芽吹き始めてる…!そしてサブタイトルの「センスとロジック」結びつくんですかね突破口になるんですかね!既に持っていたものが正しく繋がり新しい世界が見えてくる展開、あーこれ好きなやつですわ!

 

『「グッ」と溜めてから「シャッッ」』のアドバイスが即役立ってる!?ちょっとした笑いどころだと思ってた。六弦ごめん。今後も継続して使うのは難しそうだけど、それを冷静にわかった上で「今はこれでいい」と思えている様子に安堵しました。

完璧に確実に、絶対成功させないといけないという考えにがんじがらめになっていた前半とは違い、改良点のある技でも試していける心の余裕ができましたね。目標にしていた「コートの上で楽しめる選手」の姿を思い出せたからなんだろうな…

 

人のいいところすぐ見つけられる外園、好きにならずにいられないでしょもう。笑顔天使か。六弦さんも喜んであげてよ。あの天才言語ちゃんと通じたんだよ?

 

ヒロの「感覚的なレイドより理解できる」に高谷が自分にはとても無理という感じで驚く場面、大きいコマではないけど、こういうのが土台固めしてくれるんだよなーって感じの、噛みしめたくなるよさがあります。

ヒロはすごく出来た人ではあるけど、高谷のように天才ではないです。それでもいろんなことを見聞きし分析する力に長けていて、そこは高谷に勝るということを高谷の反応で示している。

分析から得られたデータの活用はセンスとは異なる分野の力を発揮する。つまづいたヴィハーンの中にもアカデミーの学びは残っていて、それを活かせばセンスだけだった過去の自分とは違う力を発揮できるきざしをヒロと高谷の会話で見せているんですよね。

視野が狭まっていた前半とは違い、視野を広く保ち、なおかつ集中できている今のヴィハーンがこれから見せてくれるだろう活躍に期待が高まります。
=せっかく来たかと思われた宵越の見せ場がなくなるってことでもあるんですが。んん、がんばれ。

 

第198話(後編)

 事前の作戦に沿った宵越の途中出場が、復活し始めたヴィハーンの刺激になる構成の上手さ、他競技からの転向組と本場の選手という対比も鮮やかで痺れたんですが、「宵越」が長らく夜に沈んでいた彼に名前の通り「朝=ヴィハーン」をもたらすって美しすぎない!?

ヴィハーンの名前の意味を知った時は「きれいな名前だな」ぐらいにしか思わなかったです。それにこれまでは王城部長との関わりのほうが多かったから、まさか宵越が鍵になるとは思わないじゃん?だけどこうなってみればやっぱり納得なんですよ。はースッゲえ…

 

宵越の途中出場は連戦対策だったり、奥武の体格なら温存してもいけるという合理的な判断だから引っかかることないんです。事前の作戦通りの展開で、能京側から「ドラマチックなアプローチがありますよ」って気配は感じさせない。だから私はかえって宵越がやられるのを心配したりしました。

盲点のようになっていた要素がここ一番で効いてくるから衝撃が半端ないんだわあ!他競技からの転向組と本場で一筋の選手という対比も「そう言われれば!」だけど、これも最初から開示されてる情報なんですよね。フェアなのに驚かされる。

 

豊富な経験に裏付けされた守備を思考力と対応力で越えてくる宵越さんかっこいいっす。やられるかもとか言ってごめん。

他競技の技術も使う、なんでも取り入れる、臨機応変に対応するといった宵越のプレースタイルは凝り固まっていた前半までのヴィハーンとは対照的です。だけどこれらが彼の目覚めを後押しするためにはやはり前半の展開が必要だったのだろうと思います。行き詰まっていたままでは宵越のプレーもおそらく混乱のもとにしかならなかったのでは。

新たな刺激を受けて今までとは違う自分が目覚める、とはならず、本来の自分が息を吹き返す展開なのもとても好き。誰かに与えられたもので力を得るのではなく、もともと持っていたものに気付くというのは登場人物を尊重してくれていると感じます。

それは目を輝かせていた頃のよろこびを取り戻してほしいと思っていた私にとってもうれしい復活でした。ただ目の輝きが戻るっつーか、なんか違う光り方してますけど!でもこれも好きー!ゾクゾクしますな!

 

第199話

 また新しい演出が!次元が違うと表すために宗教画のように描く演出はあるけど、多腕の姿が手の復活とリンクしているのがすばらしい。ビジュアル面にストーリー上の理由がちゃんとあるやつ、オタク好きじゃろ?好きです。

異次元の動きで次々と獲物を狩っていく手にそりゃもう驚かされたんですが、ブリッジ体勢でまたヒッて声出ましたよね。思いもよらない避け方というのもあるんですが、足技使ってた前半の動きと共通するものを感じて。ガラッと変わったけど別人になったのではなく、これまでの彼と地続きなんだと。


ド派手な復活劇の最後に山田の小さな表情の変化が入る場面、ここ!こういうの!灼カバのこういうところがたまらんです。他の人以上に見る目を養った山田にケタ違いの才能はどう映っているのか、友人としてうれしく思う気持ちもきっとあるのだろうけど、とあの数コマでいろいろ想像させられます。

しかも「やったな!」とかではなく「おかえり」なんですよ…自陣に戻った選手に掛ける言葉というだけでなく、ヴィハーンが本来あるべき姿に戻ったことに対する「おかえり」なんでしょうね。

これ見よがしに描くのではなく、大きな展開の終わり際にさらっとやっちゃうのが憎い。仕込みはしっかりしてあるから、これだけでも効果は絶大なんですわ。

 

しかしもともとそういう選手だったとはいえ、復活したと思ったら一気にえらいとこまで行っちゃったな…あの宵越が学ぶ気が起きないと言うのはよっぽどですね。

でも他の選手が習得できる気がしない技を身に付けた人は能京にもいますし、やっと待ち望んだ状況になったわけですし、部長の大暴れ期待してますよ…!

 

第200話

 祝200話!灼カバの特徴のひとつは宵越がクレバーな負けず嫌いであるところだと思います。合理的な判断で勝つために逃げ回ることができる。自分と仲間と相手に敬意を払ったその選択を、かっこいいものとして描いてあるのがまたいいんだ。

カーッとなって乗せられることも多いけど、一旦勝負の場に上がれば冷静で鋭いんですよね。根元にあるのは強い気持ちでも、それだけで乗り切ることはない。

勝つために必要なものを見極め、なんでも利用する姿勢は第1話から一貫して描かれてきました。だから素早い対応という「変化」も、「変わらぬ」自分の回避能力で戦うことも両立する。それを1話の中で対比として見せられるから、どちらの面もかっこよさも際立ってくるんだよなあ!

 

しかし宵越の対応の速さは本当にすごい。上になるほど追いかけてくる人間も多い厳しい世界で上位に居続けた理由がよくわかります。こちらの気持ちがまだヴィハーンの復活にある間に、その先、試合の終わりまで考えてる。

そうして試合を見通した宵越の危機感+ヴィハーンの圧倒的な攻撃力、ってところに投下される17分55秒の残り時間の重さ!長え!怖えぇ!余裕があった前半の印象が一気にひっくり返ってしまった。そう来なくちゃ、って展開ではあるけど、やっぱ怖えぇー!

 

宵越の対応についていける山田も頭の回転相当速いですよね。今回、とっさに足を踏ませたのとか、第198話の一人ブロッキングとか、機転がきいて技も多彩。
プレーのひとつひとつはワクワクするし、宵越だって実力を認めているのに、ああーっヴィハーンの復活でさらに諦観の境地に入ろうとしてるー!

いやその顔あきらめきれてないよね?ヴィハーンが復活出来たら日本に呼んだ山田も救われるのかなって思ってたけど、自分にまだやることが残ってるからその顔になるんじゃないの?ともかくあの表情のまま試合終わらせたくないですよ…な、なんとかなれー!

 

第201話(前編)

 灼カバ、感情面のドラマが試合内容と絡み合ってボルテージ上がっていくところが本当に好きで。ヴィハーンの復活で戦い方の幅が広がったことに加え、守備で全滅取る方が有利という状況になってはじめて山田に勝負できる目が出てきたという、この希望の連鎖!

楽しい方がいい、だけでなく、楽しくて勝てる可能性が見えてきたからそれに挑戦できるかもしれない、というのがいいんですよね。これまでの押し返しだって、これ以上点差を広げずに最終的に勝つための選択だったわけですから。

ヴィハーンが復活して圧倒的な力を見せて、じゃあもう山田は押し返しだけやってればいいのか?という読者のモヤモヤも、鮮やかにひっくり返してくれました。

 

ここね、台詞が「必要ないよ」「楽しいのはどっち?」ってあくまで相手に決断をゆだねるような柔らかい言い方なのもいいんですよね。試合の方向を変えてしまうようなすごい力を見せたから、その勢いのままに引っぱっていってもおかしくないと思うんです。

ヴィハーンの性格がもともとそうだというのもあるんだろうけど、彼が迷った末に辿り着いたのが自分自身の心に従うことだったから、他の人に対してもその人自身にどうするかを決めてほしくて、こういう言い方したのかもなって。

これを受けて山田にも変化が起こってほしいのですが…

 

宵越とヴィハーンの台詞もモノローグもなしの攻防すごかったですね!コーナーで追い詰める側と追い詰められる側が一瞬で変わるの、ドキドキしたあ!周囲の様子も驚きの顔を描いても解説は一切なし。絵の力だけで見せる強気な姿勢。伝わるからなあこれが!

 

水澄、順調にQ&Aの考え方を自分のものとしていってますね。たぶん一足飛びには今回の結論は出なかったと思います。ましてや試合の最中で難しいこと考えにくいならなおさら。簡単な問いと答えをポンポン出して段階的に深めていくの、性に合ってたんだな。

今回はかわされてしまいましたが、エラーもQ&Aの精度を上げる助けになると思うので、落ち込まないでトライし続けてほしいな。水澄なら大丈夫だと思いますが。

 

第201話(後編)

 もう一度グラフ出てきた…!選手も観客もいない山田一人のコマ、他の誰もが動いて先に進む中で停止してしまった自分に対する焦りが伝わってきます。そうだよ進まなきゃグラフが上向くところへは行けないんだよ…!

「誰が教えたと思ってやがる」とモノローグにあったように、自分の行動がめぐりめぐって自分を奮い立たせるのがいいんですよね。見切ったはずの自分をさらに押し広げるのは過去の自分。そして仲間を通じて知る自分。

山田が仲間に教えて来なければこのフィードバックはなかったわけで、過去の自分の頑張りも仲間も両方なくてはならなかった。互いが互いを引き上げる関係がまばゆいです。

 

ここで口癖の「面倒」が出てくるのもうれしいじゃないですか。灼カバの個性のさじ加減ホント好き。無理に多用してアピールしなくても、必然的に出てくるような場面で発揮されるからちゃんと印象に残るんですよね。

でもここからどうするつもりなの山田。ヴィハーンを囮に宵越の隙を狙う、基本的な守備からかけ離れた危険度高すぎる位置取りですよね。1点が致命傷と言っていたのに、自分も触られる可能性が高い宵越の目前に立っちゃって。くそーヒキが上手い!