さわやかサバイバー

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ワールド イズ ダンシング 第2巻感想

少年期の世阿弥を描く漫画、ワールド イズ ダンシング(三原和人 講談社)第2巻の感想です。

 

続きからネタバレ感想

Twitterで上げた各話感想をまとめたものです。

 

第九話 新熊野②

父の舞は従来の猿楽に新しい要素を持ち込んだものだった。この事実でこれまでの行動の印象がガラッと変わる。
自分なりの舞を求める鬼夜叉を見守る態度、大舞台で伝統に則った舞を見せたこと。続く歴史、父の革新、流れを受けてお前はどうしていくのか、と問うている。

 

第十話 新熊野③

まぐわいなのだ!えっなに急に?と思ったら、そこから繁栄や豊作への祈り、常にそれらと共にあった芸能、父が見せた古くからの舞、と繋がっていって、その先端に自分がいることを知っていく流れが感動的。
にしたって、こういう流れになるとは思わないでしょうよ。

 

第十一話 新熊野④

世界を窮屈に感じていた孤独な少年が、舞を通じていまの世界と繋がり、そして歴史の流れとも繋がる。世界が広がった分、己の小ささを感じながらも、いまの自分を精一杯舞う姿は堂々としていてうれしくなるし、この先を期待させる。

 

第十二話 新熊野⑤

いいかげんなやつとして登場しておいて将軍モードでは締めるとこ締めるのずるい。切り替え上手で場の空気が読めるってつまり本心が掴めないってことだ。魅力的だけど怖いし油断できないなこの人。

 

第十三話 三条坊門

自信満々で余裕たっぷりに見えて、将軍としての立場の弱さを克服するために、法ではなく、理屈を超えて人心を惹きつけるものを求めている最中…ってやっぱりずるい。弱さとしたたかさを合わせ持つこの作品の義満が世阿弥とどんな関係を作っていくのか、
想像が広がるなあ…

 

第十四話 まだ

この回の観阿弥カッコよすぎでしょう…古い権威の象徴として父が立ちふさがる作品は数あれど、改革者の先達として息子を送り出す姿に惚れてしまう。我々はまだ未完成、と自分もまだ最前線を走り、変わり続けようとする意欲が最高。

 

第十五話 立つ鳥

小言を言いながらも世話をしてきてくれた十二五郎。無から有が生まれることを寿ぐ芸能の世界に取り込まれたことで、なにもかも無くした彼が生きなおせた過去が語られる。
荒っぽかったけど、旅立ちを迎えた鬼夜叉が自分の家を大切に思える、いいはなむけ。

 

第十六話 自己紹介

一人乗り込んだ新天地。人前でも堂々と舞を通じて自己紹介できるようになった鬼夜叉の成長がたのもしい。新入りにド派手な登場をさせて主が見事と認めるやり方は効果的だけど結局の反発の芽も生みそうで。座の後ろ盾がなくなった状況での独り立ちに期待と不安が。

 

第十七話 鉢木

自己紹介は成功したものの、周囲からやっかみを受け、義満から選別されてる最中の鬼夜叉の立場は不安定。本人がとぼけているからあんまり悲壮感はないけど、選ばれなった未来を思わせる人物の登場が不穏な空気を呼び込む。芸能を手段として使うつもりのパトロン怖い。

 

第十八話 横溢

どこかにその人が力を発揮できる形や場所があるというサツキのエピソードを反転したかのような、不相応な能力しか持たないものは去るべき、という増次郎の考え。
才能で居場所が与えられたり奪われたりするべきなんだろうか。本人が望まないとしても?