さわやかサバイバー

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スーパーマン&ロイス シーズン1感想その2

twitterでつぶやいた第8話~第15話(最終話)までの感想をまとめたものです。

 

以下ネタバレ感想

 

第8話 無力な自分

 私にしたらロイスも超人なみにすごい人なんですが、いままで自分の力でほとんど成し遂げてきたからこそ、どうしようもなかったことを受け入れきれない傷を抱えたままと描いたの、よかったです。

単純に弱さを見せて人間らしさを描くのではなく、すごい人であることはそのままに厚みが増す描き方だったなと。登場人物を尊重して作られていると感じました。
演技もすごくて…今まで見せたことがないロイスなのにロイスでしたね。

前回でストレンジャーが悪い人ではないことはわかったので和解する予測はついていましたが、今回ロイスが傷を受け入れた経験を伝えたことで彼もまたそうできたという連鎖が切ないながらもすばらしかった。

 

ロイスがこういうことで悩んでる時に素直に「いつでも力になるけどいまは僕じゃないんだろ」と言えるクラークが素敵。あんな力を持ってるのに、自分ではどうしようもないことがあるっていうのを受け入れてるんですよね。

 

そうすると余計にカイルの失敗が目についてしまうんだけど、彼にも共感できるので辛い。冷めた見方をすればロイスもクラークも別の所で力をふるえる自分がいるわけじゃないですか。カイルは「お前はそうじゃない」と言い続けられてるような展開ですし。

それでも消防隊員の働きは誇れるものだと思うんですが、彼の中で自分を認める回路がうまく回ってないんだろうな。妻の出世とかで…

単にお山の大将で金持ちの悪だくみに気付かず飛びついてしまう愚かな人ではなく、そうならざるを得ない田舎の貧困と過疎の問題や、彼がかざす古い価値観が彼自身を苦しめている様子も描かれているので、悔いるだけではなく、いい方向に向かってほしいんですよね。

ヒーロードラマの枠でどれだけできるかはわかりませんが、地味でも現実的な再生を見てみたいという希望があります。
このままだとエッジに改造されそうな感じもしますが…

 

第9話 忠実なるサブジェクト

 同じテーマのリフレインや形を変えて描かれる演出が好きなので、「子供を守りたい」という想いが伝わり和解していく場面に心が温かくなった一方、嫌な予感を盛り上げていくリフレインもこれまた上手くてゲェーッとなったりで大変ですわ…

その予想は当たってくれなくてよかったのに…もうサラがかわいそうで。親子間のわだかまりが溶けたことが今回のカイルのドラマなんだな、とホッとしたところに、同時進行していた事実が明かされるのは不意打ち効果が高くて、嫌な展開だけどこれまた上手い。

それどころじゃなかったけど、ジョナサンからもジョーダンが急病だったとか、でも発表会に行こうとしてたとかフォローしてあげてほしいな。このあたり、登場人物の意志による行動がドラマを生むのではなくて、ドラマのために登場人物の感情や意志がふりまわされる感じがあって不憫だったので。

冷凍肉を氷の代わりに傷に当てるの、海外ドラマや映画でよく見るけど、レイン家は豆なのね。

 

エッジの言葉は「クリプトン人そのものではないが、近い存在が増える」ってことかと思ったら、ええーッ!?クリプトン星の生き残り設定を重みを大事にしてほしいので「実は結構いました」とはならないでほしいのですが…ストレンジャーのひねりの効いた設定を生み出した手腕に期待したいところです。

 

第10話 母との再会

 兄弟疑惑、クリプトン人の意識が地球人にインストールされてる問題、クッシング家のすれちがい…何話か引っぱれそうなドラマ1話でまとめてきたー!ある意味贅沢…

真相を知らないで傷ついてるサラがかわいそうだったので彼女の心に平穏が戻ったのが一番よかった…

めちゃくちゃサクサク進むな!?人の意識バーッてやって入れ替わるような単純なもんじゃなくない?クリプトンの科学技術とお母さんそんなすごいの?と、つっこみたくなるところはあったんですが、テンポのよさに乗せられて最後は結局「よかったな~!」で終わった感じです。

これまで下地作りは丁寧に行われてきましたし、それらが一気に動いただけので無理やりではないんですが。
ラナの勇気ある行動、母ラーラの意識との再会場面など、心情が大きく揺さぶられる場面はじっくり描写されてましたし、うん…ペース配分やっぱり巧みですね。

 

エッジとスーパーマンが対峙する場面はともすれば「たまたま運がよかった側の偉そうな説教」に見えかねないところです。そう見える部分がまったくないとは言えませんが、その前にラーラとスーパーマン、ラーラとロイスが語る場面があることで、スーパーマンが一人の人間としても誠実に生きてきたことがわかり、地球に愛情を持つ理由にディティールと説得力が増して、真摯な言葉と感じられました。

 

猶予のない状況だったとはいえ、再会できた母親の意識を消してしまうことにためらいはないのかなと思ったのですが、そのあたりは最後に向かっていた孤独の要塞でもう一山あるということでしょうか。

 

第11話 つかの間の追憶

 うわーっ!そうきたかー!最悪な形でつじつま合っちゃったよー!
これまで丁寧に父親として奮闘する姿を描いて「いやー平行世界はともかく、このスーパーマンは闇堕ちしないでしょー」と思わせておいて、むしろそれが理由となってしまうなんて。

察しのいいかたは予想がついてたかもしれませんが、私毎回ただ楽しく見てるだけなので驚いちゃって…今回それまでの過去回想が幸せでニコニコしながら見ていたのもあって落差がもう…制作者側の意図した通りだろうな、いい視聴者です!

「鳥だ、飛行機だ」や電話ボックスの象徴シーンを「このドラマの」スーパーマンで見られたうれしさとか、第1話のリフレイン(これもコミックスのオマージュらしいですね)にキャッキャしていたというのに。「スーパー視力で失恋」に思わずクスっとしていたというのに。

 

エッジに対抗するために共闘するのかな~と思っていたジョン・ヘンリーの再登場がこんな形になったのが悲しい。
いままで悪役も引き受けて「信頼しきれなかったおじいちゃんが悪かったよ…」的な収まりかたをしたばっかりのサムもいたたまれないでしょ。

 

距離が近づくチャンスが来たと思ったらそれどころじゃない事件が起こるサラとジョーダンがかわいそうで…二人がなにしたってんだ。この山を越えたとしてもパワーというドでかい秘密がまだあるわけで…最終回までに少しでもいいから普通にデートさせてあげてほしい。

 

第12話 たとえ死の谷を歩むとも

  今回事態を動かしたのは超人的な力ではなく、信じる力や誰かを大切に思う心でしたね…それができる人はみなヒーローだと訴えかけるような姿勢が好きです。クッシング家の再生が同時に描かれているのもそういう意味ではないでしょうか。

ロイスがジョン・ヘンリーに真実を打ち明ける場面の音楽がいつもタイトルバックにかかっている曲のアレンジだったのがグッときました。まさに希望の象徴みたいな、光が満ちて安心できるようなあの曲、私好きなんですよ…

ジョン・ヘンリーを説得しに来た誰もがこの世界のスーパーマンの善良さを訴え、考えを変えるよう告げてきたのに対し、最後ジョナサンが彼に寄り添ってくれたのがうれしかったです。

もう対立してるわけではないけど「世界を救うためには倒さなければならない相手」と線引きされたスーパーマンとの間にジョナサンが「二人ともいい父親」という橋を架けてくれたようでした。それが最後のひと押しになったんでしょうね。

誰かのために別の誰かが一方的に犠牲になることをよしとしないのはいいなあ…とはいえ、そのジョナサンの献身に頼ってるところも多いと思うので今後彼が思うように生きられたり、報われたりすることを望みます。

 

誰かのために誰かが犠牲になる、を選んでしまったのがエッジで、そういう方法を選んでいた彼自身が犠牲になってしまったのが悲しい。最後乗っ取られたんですかね…?単に倒して終わり、ではなく彼もその悲しい連鎖から外れる結末になってほしいんですが…

 

第13話 非常手段

 危機が去ればすべてが元通り、とはならず、一部を悪者にする流れは止まらず、やり直そうとする声は届かない。でもスーパーマン&ロイスという題名がついている以上、ジャーナリズムが明らかにしていくべき側面もある問題を描いているのはいいなと思いました。

前回までに比べたら地味できつい回だったけど、そういうところをやってくれるんだなと。しかもロイスがヒーローになるわけじゃないという。

ロイスは個人的な事情にも挟まれて真実を明かせない。でもジャーナリズムが守るべき精神にのっとってそれができる人に託す。ここでこれまでわりと影に隠れてサポート役だったクリッシーにスポットライトが当たるというのも「登場人物おろそかにしないなー!」とうれしかったです。

 

今回はエッジの描写もきつかった…あんなの見たら肩入れしてしまう。言いたいこと言ったら別れの挨拶もせずさっさと消える父親と比べたら、ちゃんと挨拶をして去るスーパーマンのほうが向き合ってくれる可能性があるんじゃない…?思い直さない…?もう完全に乗っ取られてしまったんですかね…

 

あと最終回までにジョナサンにいいことありますように…

 

第14話 エラディケイター

 ジョナサンにエッジ父の精神がインストールされるという展開、最大級にきついけどうまいなあ…!クラーク、ロイスと双子で始まった物語がクラークとエッジの二人の父との関係を巻き込んで広がり、規模の大きな親子の物語として収束するんですね。

ジョン・ヘンリーの「普通の子供らしくしていろ」や、デレク・パウエル母の「あなたは子供を失ったことがないんでしょ」といった周辺の物語が本筋に効いてくるのもうまい。つらい…でも面白い…うめきながら堪能してます。


ジョン・ヘンリーのジョナサンへの言い方は厳しかったけど、あれ普通の子供でいる幸せを享受できるうちはさせてあげたい、ってやさしさの裏返しのような気もしますね。

ジョン・ヘンリーといえばロイス助けるところカッコよかったですねー!私は「叶わなかった願いが形を変えて叶う」という展開に弱いので、彼のアースで起こった悲劇をここではくい止められたことにグッと来てしまいました。

 

スモールビルを心安らげる故郷のままにせず田舎ならではの過疎や行き詰まり問題を抱えていると描くところ、現代の物語だと感じられて好きな部分なんですが、これは現実でも解決が難しいのでどう答えを出すのか気になります。

フィクションとして理想が形になる希望を見せてくれるところと現実的な部分のバランスが好きなので、そんな最終回見られるといいなと思います。

 

ジョナサンにいいことがあってほしいと思っていたけど、あれ素直によろこんでいいのかな?サラの判断はそれなりに信用できると思うので、ティーガンまだ警戒してしまいますよ…

 

第15話(最終話) クリプトン最後の息子たち

 ジョナサンもエッジもスモールビルの現状も「想いの力でなんとかなりました」な決着で、ちょっと大味だったなあと正直感じたんですが、みんなにやさしい終わりかただったのはこの作品らしくて、最初から最後まであたたかい気持ちになれるよいドラマでした。

特に最後の最後…!この世界の妹と会ってみるとは言っていたけど、ジョン・ヘンリーだけが家族と引き離されっぱなしなんだな、と切なく思っていたので本当によかった…と思ったんですけどBGMからするとこれきっかけでトラブル起こるの…?

家族についてエッジはどうなの?ってところは、スーパーマンが兄弟呼びしてたのがエッジが本当に求めていたものへの第一歩という気がします。悪役だけど作品によっては孤独なまま死んでもおかしくない立場だったので、生き残って希望の兆しを見せてくれたのがうれしかったです。

 

スモールビルはねえ!とんでもないことが起こったのでうやむやになりました、これを機会にリセットしました、ではない答えが見たかったな…カイルが復職できた理由もわからなかったし。

ドラマで描くには地味で難しいかもしれませんが、田舎の嫌な方面のあるある描写は上手かったし独特でよかったので今後のシリーズでもっと深く描かれたらいいのになと思います。

 

ジョーダンはサラに秘密を打ち明けるのか、とか、ジョナサンはスモールビルで自己実現のきっかけを掴めるのか、とか、思春期ならではの面白くなりそうな種がまだまだ残っているので、スーパーマン&ロイス、今後のシーズンもテレビで見られたらうれしいです!